◎主要メディアによると、少なくとも3,000~4,000人がポーランドとベラルーシの国境に設置されたフェンス沿いで寝泊まりしているという。
2021年11月9日/ベラルーシとポーランドの国境付近に閉じ込められた移民希望者たち(Leonid Shcheglov/BelTA/AP通信)

11月9日、欧州委員会は非人道的な「人身売買業者」のように移民希望者をポーランドの国境付近に押しやったベラルーシのアレクサンドル・ルカシェンコ大統領を非難した。

主要メディアによると、少なくとも3,000~4,000人がポーランドとベラルーシの国境に設置されたフェンス沿いで寝泊まりしているという。

欧州委員会のピーター・スタノ報道官は記者団に、「ベラルーシ政府の後援を受ける移民希望者たちは国境で行き詰まり、EUへの不法入国を余儀なくされている」と述べた。

ポーランド、リトアニア、ラトビアはここ数カ月、ベラルーシからの入国を試みる移民希望者の急増に悩まされてきた。移民の多くは中東、アフリカ、アジア出身で、シリアとアフガニスタン難民も含まれる。

ルカシェンコ大統領は昨年8月の大統領選以来、多くのベラルーシ亡命者を受け入れたポーランドとリトアニアを敵視しており、移民を大量に送り込み、混乱を引き起こそうとしている。EUはルカシェンコ大統領の試みをハイブリッド戦争と呼んだ。

ある移民希望者はAP通信に、「ベラルーシ当局に携帯電話を押収され、隣国へ向かうよう命じられた」と述べた。国境付近の気温は日中でも零度を下回り、凍死者も複数確認されている。

イラク出身の男性は英BBCニュースに、「戻ることも進むこともできない」と語った。「ポーランドは入国を許可しません。ベラルーシは戻ってくるなと言いました。ここには水も食べ物もありません。子供、女性、老人はお腹を空かせています」

ポーランド政府は国境沿いに設置したかみそりワイヤーフェンスの破壊が相次いだことを受け、兵士12,000人を現地に追加配備し警備を強化した。フェンスの破壊は300カ所以上におよんだと伝えられている。

ポーランド国家安全保障部門の責任者であるスタニスラフ・ザリン氏は9日、「移民はベラルーシ軍の指揮下に置かれている」と述べた。ピョートル・ワルジク副外相も8日の記者会見で、「ベラルーシは発砲と死傷者を伴う重大事件を引き起こす可能性がある」と警告していた。

一方、ベラルーシの国営メディアによると、ルカシェンコ大統領は「ロシアを巻き込む軍事衝突は避けたい」とインタビューで述べたという。

ベラルーシの国防省は9日の声明でNATO、EU、ポーランドの主張を根拠のないものと非難し、ポーランド政府は国境沿いの戦力を増強し、協定に違反したと述べた。NATO、EU、米国は移民希望者の大量流入はルカシェンコ大統領の指示によるものと述べている。

ロシア外務省は同盟国ベラルーシの責任ある行動を称賛し、状況を注意深く見守っているとけん制した。

リトアニアは9日深夜に国境沿いを対象とする非常事態宣言を発効し、対象地域への移動を制限した。リトアニアは昨年のベラルーシ大統領選に立候補した野党指導者のスヴャトラーナ・ツィハノウスカヤ氏の亡命先である。

一方、人権活動家たちは移民希望者がベラルーシとEUの政治ゲームに利用されていると懸念を表明した。ポーランド政府は拘束した一部の移民希望者をベラルーシに押し返し、国際法に違反したと非難されている。

主要メディアによると、欧州委員会はベラルーシに対する制裁の拡大を検討しているという。EUは今年5月に発生した民間旅客機強制着陸事件後、ベラルーシの国営航空会社をEU圏内から締め出した。

2021年7月13日/ロシア、サンクトペテルブルクの政府施設、ウラジーミル・プーチン大統領とベラルーシのアレクサンドル・ルカシェンコ大統領(Sputnik/Kremlin/Pool/AP通信)
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