◎アントノフスキー橋(全長1.4km)はロシアが2014年に併合したクリミア半島からヘルソン州に物資を供給していたとみられる。
2022年7月27日/ウクライナ、東部ハルキウ州郊外、ウクライナ軍の砲撃(Evgeniy Maloletka/AP通信)

ウクライナ軍は27日、米国が供与した高軌道ロケット砲システム「ハイマース」で南部ヘルソン州のロシア軍主要補給路を破壊したと発表した。

声明によると、ハイマースはドニプロ川に架かる「アントノフスキー橋(Antonovsky Bridge)」を破壊し、ロシア兵51人を殺害したという。

アントノフスキー橋(全長1.4km)はロシアが2014年に併合したクリミア半島からヘルソン州に物資を供給していたとみられる。この橋が通行不能になれば、南部のロシア軍補給路は大きく引き伸ばされることになる。

ヘルソン州の親ロシア指導者はアントノフスキー橋が26日遅くに攻撃を受けたと報告している。橋は崩壊を免れたが、路面に大きな穴が開き、車両の通行は困難になったという。

ウクライナ軍は先週この橋を攻撃し車両の通行を遮ったと報告していたが、26日の攻撃までトラックは物資を輸送していたとみられる。

ウクライナ大統領府はSNSに、「占領者はドニプロ川を泳いで渡る方法を考えるべきだ」と投稿し、ヘルソン州から撤退するよう要求した。また大統領府はアントノフスキー橋への再攻撃もあり得ると示唆した。

ゼレンスキー(Volodymyr Zelensky)大統領も27日のビデオ演説でアントノフスキー橋への攻撃に言及し、「ウクライナ軍はできる限りのことをしている」とした。

ゼレンスキー氏はアントノフスキー橋を遮断すれば、南部地域を占領したロシア軍の補給路を断つことができるとしたうえで、領土を取り戻した暁には橋を再建すると約束した。

ロシア軍は完全制圧を目指す東部ドネツク州以外の地域へもミサイル攻撃や空爆を仕掛けている。ウクライナ公共放送によると、東部ヘルソン州への攻撃が特に激しく、主に住宅地が被害を受けているという。

一方、ウクライナ産穀物の輸出を再開する取り組みは今のところ順調に進んでいるようだ。

ウクライナ政府は27日、南部オデーサ、チョルノモルスク、ピウデンニーの3港で輸出再開に向けた作業を再開したと報告した。

ロシアとウクライナは世界を代表する穀物輸出国だが、戦争の影響でウクライナの収穫高は減少し、南部の港に2000万トン以上の穀物が滞留している。

米シンクタンク「戦争研究所」によると、ロシア軍の大部分は東部ドネツク州近郊で戦っているとみられ、ウクライナの激しい抵抗に直面しながらもゆっくり前進しているという。

戦争研究所のアナリストは今週公表したデータで、「ロシア軍はドネツク州バフムートのいくつかの地域を占領したが、少なくとも秋までは大きな戦果を上げられず、戦闘は膠着状態に陥る」という見方を示した。

2022年7月26日/ウクライナ、東部ハルキウ州の住宅地(Andrii Marienko/AP通信)
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