◎汚職で告発されたロシアの富裕層はロンドン市内に15億ポンド(約2,300億円)相当の不動産を所有している。
2022年3月7日/イギリス、ロンドンの首相官邸、左からカナダのトルドー首相、ジョンソン首相、オランダのルッテ首相(Getty Images/AP通信)

3月7日、英BBCニュースなどによると、庶民院は対ロシア制裁を強化し、イギリスからロシアの不正資金を根絶することを目的とする法案を7日中に可決する予定だという。

ボリス・ジョンソン首相は7日、「イギリスはプーチン大統領とつながりのある個人や企業に対する取り締まりを追求する」と述べた。

ジョンソン首相はカナダのトルドー首相とオランダのルッテ首相を招き、対ロシア制裁などについて協議した。

ジョンソン首相は、「7日に成立する新法は経済制裁を回避しようとする個人や企業のベールをはがす」と述べた。

しかし、野党議員と批評家はジョンソン首相の保守党は自分たちが生み出した問題にようやく気付き、大急ぎで解決を試みていると批判している。

保守党は長年にわたってイギリスの不動産、銀行、企業にロシアの不正な資金が流れ込むのを許し、「ロンドンを汚れた現金のコインランドリーにしてきた(マネーロンダリング)」と批判されている。

イギリスはロシアの銀行や企業の多くに制裁を科しており、ジョンソン首相によると、2.5億ポンド(約380億円)以上のロシア資産に影響を与えたという。しかし、これはロシアが保有するイギリス資産のほんの一握りに過ぎず、EUや米国よりはるかに少ない。

野党はジョンソン首相を批判し、尻を叩いた。その結果、ジョンソン首相は経済犯罪法の導入を決めたのである。

新法はイギリスに資産を持つ海外企業に真の所有者を明らかにするよう求めるもので、マネーロンダリングやペーパーカンパニーを利用して企業や不動産を購入することを防ぐと期待されている。

保守党が示した草案は企業に18ヶ月の猶予を与えていたが、野党労働党は猶予期間を「出国許可カード」と呼び、ジョンソン首相に削除を命じた。

また野党は、イタリアがロシアの富豪から1億4300万ユーロ(約180億円)のスーパーヨットや別荘を押収したように、イギリスもオリガルヒの資産を速やかに押収するようジョンソン首相に命じている。

新法は米国、EU、カナダなどの同盟国から制裁を受けた個人や企業を叩くだろう。

2010年から政権を担っている保守党は、イギリスを世界の超富裕層のより良い投資先にしたと自負している。超富裕層の多くはロンドンに豪邸を所有し、子供たちをイングランドの私立学校に通わせ、PRコンサルタントや弁護士を雇って彼らの評判を高めている。

国際非政府組織トランスペアレンシー・インターナショナルによると、汚職で告発されたロシアの富裕層はロンドン市内に15億ポンド(約2,300億円)相当の不動産を所有しているという。

また政府が公表した2020年のレポートによると、議会の情報・安全保障委員会は、「1990年代以降、イギリスはロシアの資金を歓迎し、個人や企業の富の出所に問題があったとしてもほとんど質問しなかった」と述べている。

また同委員会は、「プーチン大統領と非常に近い関係にある多くのロシア人がイギリスの経済・社交界にうまく溶け込み、受け入れられた」と報告している。

政府の活動を監視している団体によると、ジョンソン首相の保守党は2019年以来、ロシアとつながりのある個人や企業から200万ポンド(約3億円)の献金を受けたという。同党は、「法に触れる献金者から寄付は受けていない」と述べている。

野党はジョンソン首相が2020年にロシア出身でイギリスの新聞社2社を経営するエフゲニー・レベデフ氏に貴族の称号と貴族院(上院)の席を与えたことも批判している。

レベデフ氏の父はKGBの元エージェントであり、サンデー・タイムズ紙によると、イギリスの情報機関は貴族院の席を与えることに懸念を表明したという。

すべての貴族院候補は任命委員会によって審査される。ジョンソン首相はレベデフ氏の審査に介入したという疑惑を否定している。

マネーロンダリングの専門家で、新著「Butler to the World」でイギリスと世界の富の関係を探っているオリバー・ブラフ氏はAP通信の取材に対し、「新法には複数の抜け穴があり、汚れたお金を締め出すことはできない」と指摘した。「イギリスは何十年もの間、金の出所を確認するより、オリガルヒから得られる手数料を優先してきました...」

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