ナゴルノ・カラバフについて知っておくべきこと

・約4,400平方キロメートルの山岳地帯

・キリスト教のアルメニア人とイスラム教徒のトルコ人が生活していた

ソビエト連邦時代、ナゴルノ・カラバフはアゼルバイジャンの自治区に加えられた

・公式にはアゼルバイジャンの領土と認められているが、人口の大部分はアルメニア人で構成されている

・現在、ナゴルノ・カラバフは分離主義勢力(自称当局)に占領されている

自称当局は、アルメニアを含む全ての国連加盟国に認められていない

・1988年から1994年の紛争で約3万人が死亡、推定100万人が避難を余儀なくされた

・1994年の停戦合意後も膠着状態は続いていた

・アルメニアは分離主義勢力(自称当局)を認めていない

・アゼルバイジャンは「分離主義勢力=アルメニア軍」と認識している

・トルコはアゼルバイジャンを支援している

・ロシアはアルメニアに軍事基地を持っている

2020年10月8日 Getty Images/ナゴルノ・カラバフ、シュシャ市、砲撃を受けた救世主大聖堂の内部

シュシャ市の歴史遺産が砲撃を受ける

10月8日、アルメニア政府は、アゼルバイジャン軍がナゴルノ・カラバフの歴史遺産「救世主大聖堂」に砲撃を加えたと非難した。

シュシャ市を代表する歴史遺産のひとつ、救世主大聖堂は砲撃を受け、内部と外部の両方がひどく損傷。関係者による調査が続いている。

9月27日に最初の戦闘が勃発して以来、これまでに300人以上が死亡、数万人の市民が避難を余儀なくされている。

一連の紛争悪化を受け、アメリカ、ロシア、フランスの国際監視団は暴力の応酬を終わらせるべく、行動を開始した。

8日、国際監視団はジュネーブでアゼルバイジャン外相と会談。アルメニアの外相とは、12日にモスクワで会談の場が設けられる予定である。

ナゴルノ・カラバフは公式にはアゼルバイジャンの領土だが、アルメニア人の生活エリアになっている。同地をめぐる紛争は停戦合意(1994年)以来最悪の状態にあり、両国は暴力と非難を繰り返している。

ナゴルノ・カラバフの最新情報

地元メディアによると、アルメニア使徒教会の象徴的な建物として知られる救世主大聖堂の被害はかなり深刻だという。

ジャーナリストのポール・ロンズヘーマー氏が撮影した動画では、屋根の一部が崩壊、瓦礫が散乱し、会衆席はボロボロの状態になっていることが確認できる。また、石灰岩の壁に衝撃が加わり、内部はほこりだらけだった。

地元住民のシメオン氏はAP通信の取材に対し、次のように述べた。

シメオン氏:
大聖堂に軍隊は配備されておらず、戦略的な拠点でもない。なぜ教会を狙ったのか・・・」

「救世主大聖堂はアルメニア人にとって非常に重要な建物だ。この裁きは神が下すだろう」

アルメニア国防総省の広報担当、アーツラン・ホブハニスヤン氏は記者団に対し、「”敵”のアゼルバイジャン軍が大聖堂を標的にした」とコメントした。

またホブハニスヤン氏は、8日付で同国の国家安全保障局の長を解任したと発表したが、理由は明らかにしなかった。

一方、アゼルバイジャン政府は、ナゴルノ・カラバフの都市、ギャンジャとゴランボイがアルメニア軍に砲撃を受け、民間人ひとりの死亡が確認されたと述べた。

Getty Images/アゼルバイジャン国民の主張、ナゴルノ・カラバフをめぐる紛争

関係各国の反応

7日、両国と国境を接するイランは、「攻撃を控えなければ戦争に発展する可能性がある」と警告した。

イランのハサン・ロウハーニー大統領は記者団に対し、「平和は私たちの生活の基盤であり、平和的な方法で地域の安定を回復したいと思っている」と述べた。

ハサン・ロウハーニー大統領:
イラン領土(国境付近の村)に砲弾が着弾したと報告を受けている。流れ弾やミサイルがイラン国内に到達することは容認できない」

ロシアのウラジミール・プーチン大統領は、戦闘の終結を求め、救世主大聖堂の破壊を「悲劇」と表現した。

ウラジミール・プーチン大統領:
「私たちは非常に心配している。この紛争が近いうちに終わることを願っている」

「国民は死にかけている。そして両国に大きな被害が出ている。報復攻撃は今すぐ停止すべきだ」

ロシアはアルメニアと軍事同盟を結んでおり、同国内に軍事基地を保有している。しかし、アゼルバイジャン政府とも密接な関係を構築しているため、クレムリンの動向に注目が集まっている。

Getty Images/アルメニア国民の主張、ナゴルノ・カラバフをめぐる紛争

なぜ報復はエスカレートしたのか?

アルメニアとアゼルバイジャンは、1988年から1994年の間にナゴルノ・カラバフをめぐる紛争で衝突、最終的には停戦を宣言した。しかし、両国は和解せず、25年以上緊張状態を維持してきた

そして9月27日、両国は200人以上の死者を出した2016年の衝突以来となる戦闘と報復攻撃を繰り返し、事態を急速に悪化させた。

人権オンブズマンのアルタク・ベグラリアン氏はBBCニュースの取材に対し、「これまでの衝突でナゴルノ・カラバフの住民の半数(約70,000人)が避難した」と語った。

ナゴルノ・カラバフの主要都市ステパナケルトは、数日間砲撃を受けた。住民は地下に避難し、電力供給は現在もほぼ停止しているという。

両国の主張は独立した第三者によって検証されておらず、戦闘終結の見通しは立っていない。

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