◎ヨーロッパ諸国はアレクサンドル・ルカシェンコ大統領の暴挙を「国家テロ」と非難し、一部の政治家はNATOの介入を求めた。
2021年5月23日/リトアニア、首都ビリニュスの空港、ラマン・プロタセビッチ氏の到着を待つ関係者(ロイター通信)

現地メディアによると、ベラルーシのアレクサンドル・ルカシェンコ大統領はギリシャからリトアニアに向けて飛行していた飛行機を首都ミンストの空港に強制着陸させ、搭乗客の反対派ジャーナリストを逮捕したという。

ベラルーシ空軍副司令官のアンドレイ・グルツェビッチ氏は5月23日、「領空内に入ったFR4978便はミンスクの空港に着陸することを選択した」と述べたが、便の所有者である英ライアンエアーは「ベラルーシの航空交通管制にミンスクに迂回するよう命じられた」と反論した。

リトアニアのギタナス・ナウセダ大統領も、飛行機はミンスクに着陸することを余儀なくされたと主張し、「ルカシェンコは反対派のジャーナリストを逮捕するために、領空に入った他国の飛行機を狙い撃ちにした」と非難した。

ベラルーシ内務省は声明で、機内にいたジャーナリストのラマン・プロタセビッチ氏を逮捕したと発表した。プロタセビッチ氏はNextaメディアネットワークの共同創設者として知られている。ベラルーシ政府は昨年、Nextaを過激派組織に指定した。

ベラルーシのメディアは、「ルカシェンコ大統領は領空内に入ったFR4978便には爆弾が仕掛けられていると主張し、強制着陸を命じたが、爆発物は発見されなかった」と報じた。

ヨーロッパ諸国はルカシェンコ大統領の暴挙を「国家テロ」と非難し、一部の政治家はNATOの介入を求めた。

ヨーロッパ最後の独裁者と呼ばれているルカシェンコ大統領は、昨年8月の大統領選挙で有効票の90%以上を獲得し圧倒的勝利を収めたと主張したが、西側諸国はこの主張を却下した。対立候補として選挙に臨んだ野党指導者のスヴャトラーナ・ツィハノウスカヤ氏は逮捕される可能性があったため、リトアニアに亡命している。

現地メディアによると、飛行機はベラルーシで約5時間待機し、その後リトアニアへの飛行を許可されたという。

2021年4月26日/ベラルーシ、都市ブラギンで開催されたチェルノブイリ事故35周年イベント、アレクサンドル・ルカシェンコ大統領(Sergei Sheleg/BelTA/Pool/AP通信)

英ライアンエアーは声明の中で、「ベラルーシの航空交通管制にFR4978便内でセキュリティ上の脅威が確認されたため、ミンスクの空港に向かうよう指示された」と述べた。

この事件を最初に報じたNextaは、FR4978便に搭乗していた乗客のコメントを引用した。「ベラルーシに着陸することを知ったプロタセビッチ氏は、私はここで処刑されると言いました...」

ベラルーシの国営通信社ベルタは、「ルカシェンコ大統領はFR4978便をミンスクの空港に着陸させるよう個人的に命令したうえで、MiG-29戦闘機を派遣し、目的地に誘導した」と報じた。

ベラルーシの米国大使、ジュリー・フィッシャー氏は、「忌まわしい行為」とツイートし、ルカシェンコ大統領を非難した。

リトアニア、ラトビア、ギリシャ、ドイツ、フランス、イギリス、ポーランドなどの政府高官もルカシェンコ大統領を厳しく非難した。

北大西洋条約機構(NATO)のイェンス・ストルテンバーグ事務総長は声明で、「深刻な問題」と述べた。

国連の国際民間航空機関(ICAO)は、ベラルーシ政府の対応は空域と航空機の安全に関する規則を定めた「シカゴ条約」に違反した可能性があると懸念を表明した。

現地メディアによると、ベラルーシからポーランドに亡命していたプロタセビッチ氏は最長15年の懲役刑を科される可能性があるという。

ベラルーシ政府は23日、「飛行機はベラルーシの領空で爆弾の脅威にさらされたが、その後の調査で爆発物は発見されなかった」と述べた。フライトトラッカーによると、FR4978便はコースを変更した時点でリトアニアの国境から約10km離れていたという。

野党指導者のツィハノウスカヤ氏は、ICAOに調査を開始するよう求めた。「ルカシェンコは戦闘機を使って飛行機をハイジャックし、ジャーナリストのプロタセビッチ氏を拘束しました。ベラルーシの領空に入った飛行機は撃墜されるかルカシェンコのプライベート空港に着陸するかを選択しなければなりません」

欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は、「ライアンエアーの強制着陸を容認することはできない」とツイートした。

ルカシェンコ大統領の背後にはロシアのウラジーミル・プーチン大統領が控えている。

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