◎レバノン政府とイスラム過激派組織ヒズボラの支配下に置かれている議会は国の経済政策などで意見が折り合わず、対立している。
2021年12月19日/レバノン、ベイルートの国際空港、アブダラ・ブハビブ外相(右)と国連のアントニオ・グテーレス事務総長(Hassan Ammar/AP通信)

12月19日、国連のアントニオ・グテーレス事務総長は危機の真っただ中にあるレバノンを訪問し、厳しい生活を余儀なくされている市民への支援を推進すると約束した。

レバノン政府とイスラム過激派組織ヒズボラの支配下に置かれている議会は国の経済政策などで意見が折り合わず、対立している。グテーレス事務総長は当事者に問題を解決するよう強く促すと期待されている。

政府と議会の対立は昨年8月に発生したベイルート港の爆発事故の調査にも悪影響を与えると懸念されている。中東を代表する観光地のひとつは爆発で荒廃し、少なくとも216人が死亡、数千人が負傷し、30万人以上が住居を失った。

爆発事故の調査はヒズボラの圧力で停滞しており、事故から1年以上経過したにもかかわらず、誰一人責任を問われていない。

グテーレス事務総長は17日の声明で爆発事故の犠牲者に敬意を表し、危機を克服するために指導者と会談し、解決に向けた取り組みを推進すると述べた。現地メディアによると、グテーレス事務総長はミシェル・アウン大統領とも会談する予定だという。

グテーレス事務総長は声明の中でレバノンの指導者に市民を最優先するよう促し、「説明責任と透明性」を追求し、汚職を根絶する改革を実行に移すよう求めた。「私はレバノンと世界を連帯させます。厳しい環境下で生活する全ての市民、シリアの難民、爆発事故で大切な人を失った遺族のために連帯してください...」

レバノンは過去150年で世界最悪のひとつと見なされている経済危機の真っただ中にあり、貧困率は人口の75%を超え、通貨は暴落し、ハイパーインフレは国民の預金を紙屑に変え、失業率を前例のないレベルに押し上げた。

現在、危機の影響で燃料や医薬品などの基本的な物資は圧倒的に不足し、銀行預金の引き出しと送金も厳しく制限されている。現地メディアなどによると、国営電力会社は燃料価格高騰などの影響で機能不全に陥り、首都ベイルートですら1日18~20時間は停電しているという。

国はヒズボラ主導の汚職と管理ミスに対する抜本的な解決策を見いだせずにいる。国際通貨基金(IMF)を含む世界の主要なドナーはレバノンへの人道支援を拡大すると決めたが、議会を含む全ての当事者が改革に合意しない限り、資金は提供されない予定である。

グテーレス事務総長は声明の中で、来春の議会選挙がより良い未来を築くカギになると述べた。ヒズボラと政府は選挙の日程でも意見が分かれている。

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