◎スウェーデンのコーラン焼却デモは同国のNATO加盟手続きに重くのしかかっている。
2023年6月28日/スウェーデン、首都ストックホルム中心部のモスク前、イスラム教の聖典コーランの写し(Getty Images/AFP通信)

国連人権理事会は11日、スウェーデンをはじめとする一部の欧州諸国でイスラム教の聖典コーランを燃やすデモが相次いでいることに深刻な懸念を表明し、宗教、移民、LGBTQ+(性的少数者)を含む全ての権利を尊重するよう呼びかけた。

ターク(Volker Turk)高等弁務官は理事会の中でコーラン焼却を「文明間にくさびを打ち込むことを目的とした作られたショー」と呼び、暴力を助長する憎悪と差別を非難した。

スウェーデンのコーラン焼却デモは同国のNATO加盟手続きに重くのしかかっている。

理事会のイスラム諸国がコーラン焼却デモを非難する一方、表現の自由を肯定する西側諸国はデモへの批判がさらなる暴力、差別、敵意を煽る可能性があると警告した。

サウジアラビアの外相は理事会に宛てたビデオ声明の中で、「表現の自由は文明間の衝突ではなく、平和的共存を広める倫理的価値観に基づいたものであるべきだ」と強調した。

ターク氏は一連のコーラン焼却デモについて、「軽蔑を表現し、怒りを煽り、人々の間にくさびを打ち込み、考え方の違いを憎しみや暴力に変容させるために作られたショーのように見える」と断じた。

またターク氏は「宗教や政府の問題にとどまらず、人々はすべての他者に敬意を示さなければならない」とし、「暴力、差別、敵意の扇動となる憎悪の提唱はすべての国家で禁止されるべきだ」と主張した。

ターク氏は「あらゆる種類のヘイトスピーチが増加傾向にある」と述べ、各国に注意を促した。

「女性を差別し、イスラム教徒の女性を罵倒し、障害者を嘲笑し、移民や特定の民族の人々は犯罪に手を染めやすいという誤った主張を拡散し、LGBTQ+の人々を中傷する、こうしたあらゆるヘイトスピーチはある種の人々は人間として尊重されるに値しないという誤った考え方から生じているという点で、類似しています...」

パキスタンとパレスチナは「差別、敵意、暴力の扇動となる宗教的憎悪の行為や擁護を防止し、追及する」ための措置を講じるよう各国に求める決議案の提出を主導した。

米政府はこの決議案が表現の自由という基本的権利を踏みにじる可能性があるとの懸念から、支持しない表明している。

決議案の採決は12日午前に行われる予定である。

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