◎タリバンのザビフラ・ムジャヒド報道官は17日、初めて公の場に姿を現し、アフガニスタンの将来について語った。
2021年8月16日/アフガニスタン、首都カブールの空港、離陸を待つ人々(Getty Images/AFP通信)

8月17日、アフガニスタンを征服したタリバンは、女性の権利を尊重し、女性の権利と戦った人々を許し、アフガニスタンはテロリストの避難所にならないと宣言し、西側諸国の権力者を安心させるとアッラーに誓ったように見えた。

タリバンのブリッツはアフガニスタン全土を稲妻の速さで攻撃し、特にここ数日の勢いはすさまじく、アメリカとNATOから1兆ドル近い支援を受けたアフガン軍はほとんど戦うことなく降伏し、世界を絶句させた。タリバンが政権を奪取したのは2001年10月以来約20年ぶり。

アシュラフ・ガニー大統領は隣国タジキスタンもしくはウズベキスタンに逃亡したと伝えられているが、正確な居場所は不明。

タリバンのザビフラ・ムジャヒド報道官は17日、初めて公の場に姿を現し、アフガニスタンの将来について語った。

ムジャヒド報道官はイスラム法の規範の範囲内で女性の権利を尊重すると約束した。また、新政府は女性の働く権利を保証し、女児は学校で勉強できるだろうと述べた。

イスラム国家の女性の扱いは国や地域によって大きく異なり、農村部ほど保守的になる傾向が強いと考えられている。近隣のパキスタンを含む一部のイスラム諸国では女性首相も誕生したが、超保守的なサウジアラビアは最近ようやく女性の運転を許可したばかりである。

ムジャヒド報道官は、「タリバンは9.11以前のように他国を攻撃するテロリストの基地にはならないだろう」と述べた。この約束は2020年2月に結ばれたトランプ前大統領とタリバンの和平合意に含まれている。

またムジャヒド報道官は、「タリバンはアメリカと西側の支援を受けたアフガニスタン人に完全な恩赦を提供した」と繰り返し主張し、「西側を助けた者たちは許されるだろう」と約束した。

さらに、民間メディアは報道の自由を保障されるが、ジャーナリストは「国の価値観に反して働くべきではない」と述べ、タリバンの気に障るジャーナリストは何かしらの制裁や嫌がらせに直面する可能性があると示唆した。

2021年8月17日/アフガニスタン、首都カブールの政府庁舎、タリバンのザビフラ・ムジャヒド報道官(ラーマット・ガル/AP通信)

首都カブールの住民はタリバンが通りをパトロールしているにもかかわらず、落ち着きを保っている。しかし、一連の電撃戦の間に各地の刑務所に収容されていたイスラム国(ISIS)を含むジハード勢力の戦闘員は釈放され、国軍の武器庫は空になり、タリバンは火力を大幅に増強させ、一部の過激派勢力はアフガニスタン・イスラム首長国の体制に戻る時が来たとSNSに投稿した。

ロイター通信などによると、カブールの住民は「武装したグループが前政権や治安部隊と協力していた個人を探すために戸別訪問している」と主張したが、グループがタリバンなのか過激派を装った犯罪者なのかは分かっていない。

ザビフラ・ムジャヒド報道官は、「タリバンは法と秩序を回復するために政権を取り戻した」と述べ、前政権を非難した。

一方、アメリカのジェイク・サリバン国家安全保障問題担当補佐官は、女性の権利に関するタリバンの言葉を簡単に受けいれることはないと述べ、今後の動向を注意深く見守ると強調した。「アメリカは検証します。アメリカを含む国際社会はタリバンの動向を注意深く監視するでしょう」

タリバンは1996年の政権奪取以降に直面した孤立を避けるために節度ある行動を取ると期待されているが、多くの国民がイスラム法に基づく男性主導の権威体制に戻ると信じ、カブールの空港に押し寄せ、米軍に助けを求めた。

EUは政治情勢が明らかになるまで開発援助を停止し、人道援助の強化を検討すると述べた。

EUの外交政策責任者であるジョセップ・ボレル氏はタリバンに対し、「現在割り当てられている約12億ユーロ(1,540億円)の開発援助を得るためには、国連安保理決議と人権を尊重しなければならない」と警告した。

イギリスのドミニク・ラーブ外相は、「人道援助は提供するかもしれないが、額は縮小されるだろう」と述べた。

ジョー・バイデン大統領はタリバンの政権奪取を非難し、アメリカ史上最長の戦争から撤退するという自分の決定を擁護した。NATOのイェンス・ストルテンバーグ事務局長も、アフガニスタン軍に対する訓練の努力が水泡に帰したことは遺憾と述べたが、それ以外についてはバイデン大統領と同じ主張を繰り返した。

バイデン大統領は演説の終盤、手でバインダーを叩き、撤退は正しいと主張し、その後マリーンワンに飛び乗り、大統領の隠れ家であるキャンプ・デービッドに撤退した。バイデン大統領は振り返らなかった。

2021年8月16日/ワシントンD.C.ホワイトハウスのイーストルーム、ジョー・バイデン大統領(Getty Images/AFP通信)

アフガニスタン戦争の基本情報

・1996年~2001年、タリバンは国内の全ての女性にブルカ(目の部分だけを開けるイスラム教のヴェール)の着用を強制し、女性の教育を10歳未満に限定し、即決処刑を含む残忍な刑罰を推進した。

・アメリカ主導の連合軍は2001年10月にアルカイダやタリバンを含むジハード組織を追放した。その中には9.11同時多発テロの首謀者であるウサーマ・ビン・ラーディンも含まれていた。

・アメリカはアフガニスタン政府と軍に800億ドル(約9兆円)以上投資し、武器と兵力の強化を支援した。

・2020年2月、アメリカのドナルド・トランプ前大統領はタリバンとの歴史的な和平合意に達した。

・タリバンはアメリカとの取引の中でアフガニスタン政府と和平に向けた協議を推進すると約束したが、交渉は破綻した。

・タリバンやイスラム国(ISIS)を含むジハード組織は連合軍への攻撃を再開し、戦争は20年たった今も続いている。

2021年8月16日/ワシントンD.C.ホワイトハウスのイーストルーム、ジョー・バイデン大統領(エヴァン・ヴッチ/AP通信)
スポンサーリンク