◎タリバンは14日に公開した動画の中で、カンダハールの主要ラジオ局を占領したと発表した。
2021年8月13日/アフガニスタン、首都カブールの国内避難民キャンプ(Getty Images/AFP通信)

アフガニスタンの現地メディアによると、電撃作戦で政府軍を圧倒的しているタリバンは14日、第二の都市カンダハールのラジオ局を押収したという。

タリバンはここ数週間で北部、西部、南部の多くの州都を占領した。政府は首都カブール、東部の重要拠点、北部の重要拠点のひとつであるバルフ州の州都マザーリシャリーフを保持しているが、タリバンの勢いに押されており、首都以外の地域は数週間以内に陥落する可能性が高いと伝えられている。

アメリカはアフガニスタン政府と軍に800億ドル(約9兆円)以上投資し、武器と兵力の強化を支援した。しかし、米軍とNATO軍の完全撤退発表以来、タリバンは全国各地で猛威を振るい、内戦の悪化は避けられないという懸念を引き起こしている。

タリバンは13日、首都カブールから80kmしか離れていないロガール州の州都プリアラムをあっさり占領した。

国連のアントニオ・グテーレス事務総長はアフガニスタンの情勢について、「制御不能であり、子供を含む民間人数十万人が壊滅的な危機に瀕している」と警告した。国連の報告によると、過去1カ月の民間人の犠牲者は1,000人を超えたという。

現地メディアによると、少なくとも25万人以上が国内避難民になり、その多くが首都カブールの難民キャンプに逃げ込んだという。国民はタリバンの政権奪取を恐れている。

1990年代、タリバンは国内の全ての女性にブルカ(目の部分だけを開けるイスラム教のヴェール)の着用を強制し、女性の教育を10歳未満に限定し、即決処刑を含む残忍な刑罰を推進した。

しかし、アメリカ主導の連合軍は2001年10月、アフガン侵攻でタリバンを含むジハード組織を国外に追放した。この中には9.11同時多発テロの首謀者であるアルカイダのウサーマ・ビン・ラーディンも含まれていた。

米国大使館のスタッフの避難を支援するために派遣された米兵3,000人の一部は13日に現地入りしたと伝えられている。AP通信によると、残りの兵士は15日までに到着する予定だが、ジョー・バイデン大統領が設定した撤退期限の8月31日を守れるかどうかは不透明な情勢だという。

一方、タリバンは14日に公開した動画の中で、カンダハールの主要ラジオ局を占領したと発表した。タリバンは、「ラジオ局は国内のニュース、政治、コーランの朗読を放送する」と述べた。地元メディアによると、ラジオ局は音楽を流さなくなったという。ラジオ局のスタッフの安否は明らかにされていない。

タリバンは1990年代、カンダハールでボイス・オブ・シャリアと呼ばれるラジオ局(音楽禁止)を管理していたが、2001年の敗北以降は移動ラジオ局のみ運営していた。

イギリス政府は大使館のスタッフの避難を支援するために兵士600人を首都カブールに派遣し、NATO軍撤退完了以降の大使館スタッフは最小限に抑えると発表した。ドイツも同様の方針。

デンマークとノルウェーは大使館の閉鎖に向けた準備を進めている。

ドナルド・トランプ前大統領は昨年2月末にタリバンとの歴史的な和平合意に達し、ジョー・バイデン大統領は今年4月、9.11同時多発テロから20年の節目を迎える9月11日までにアフガンの駐留米軍2,500人を完全撤退させると発表した。

しかし、タリバンとアフガニスタン政府の和平交渉は完全に行き詰まり、協議は戦闘に発展した。タリバンは州都、国境検問所、その他の重要なインフラを占領し、首都カブールの目の前に迫っている。

2021年8月12日/アフガニスタン、カンダハール州の州都カンダハール(Sidiqullah Khan/AP通信)

アフガニスタン戦争の基本情報

・アメリカ主導の連合軍は2001年10月にアルカイダやタリバンを含むジハード組織を追放した。その中には9.11同時多発テロの首謀者であるウサーマ・ビン・ラーディンも含まれていた。

・タリバンやイスラム国(ISIS)を含むジハード組織は連合軍への攻撃を再開し、戦争は20年たった今も続いている。

・アフガニスタン軍は連合軍の支援を受けて兵力を増強したが、タリバンの攻撃を抑えることはできなかった。

・アメリカは2020年2月にタリバンと取引した。

・タリバンはアメリカとの取引の中でアフガニスタン政府と和平に向けた協議を推進すると約束したが、交渉は破綻した。

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