MI6、サウジアラビアおよび西側諜報機関を仲介した元将校の家族が誘拐された

サウジアラビアの元将校「サード・アル・ジャブリ氏」は、西側諸国に対するアルカイダの爆破計画をMI6などと協力し阻止したことで知られる。

同氏は、2000年代にアルカイダのテロ攻撃を阻止したと広く認知されているモハメッド・ビン・ナイエフ王子の側近のひとりだった。また同氏は、「ファイブ・アイズ(UKUSA協定)」と呼ばれるアメリカ、イギリス、オーストラリア、カナダ、ニュージーランドの諜報機関とサウジアラビアを結びつける重要な役割も担っていた。

2010年、同氏と共に働いた西側の諜報員は、「ファイブ・アイズとサウジアラビアの諜報機関は、アルカイダによる爆破計画を察知し、数百人の命を救った」と述べた。

イエメンで活動していたアルカイダのメンバーたちは、プリンターのインクトナーカートリッジ内に強力な爆弾を隠し、シカゴ行きの貨物便で密輸、空中で爆破する計画を立てた。

サウジアラビアの諜報機関は、アルカイダに所属する情報提供者を確保していた。情報提供者から爆破計画の情報がもたらされ、インクトナーカートリッジのシリアル番号等の詳細情報がMI6に伝達された。

その後、イギリスのテロ対策チームが、イースト・ミッドランズ空港に駐機中だった飛行機内から爆弾を発見、解体された。英国の元情報館はBBCの取材に対し、「もし爆弾がアルカイダの計画通りシカゴ上空で爆破されていたら、数百人が命を落としていただろう」と述べた。

西側の諜報機関に務めていた元当局者は、「サード・アル・ジャブリはサウジアラビアのテロ対策の取り組みを一変させた。彼はそれまでは粗野で適当だった当局のデータベースシステムを改修した。現代の科学捜査、無駄のないデータ解析、彼が今の当局の礎を作った。アル・ジャブリは私の知る中で最も賢い男のひとりだった」と述べた。

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ムハンマド・ビン・サルマーン

エジンバラ大学で人工知能の博士号を取得した同氏は、内閣大臣に就任し、同時に内務省で大将の地位も得た。しかし、2015年に同氏を取り巻く環境は一変する。アブドラ国王が亡くなり、彼の異母兄弟の「サルマーン・ビン・アブドゥルアズィーズ」が新国王の座についた。

新国王は息子の「ムハンマド・ビン・サルマーン」を国防大臣に任命する。政治経験の浅いサルマーン国防大臣はイエメンの内戦に介入すべく、自国の軍隊を動員。アル・ジャブリ氏は、出口の見えない戦争に介入してはならない、と考えていた。

サウジアラビアは5年経った今でもイエメンの内戦に振り回され、数十億ドル規模の予算を投入し続けるしかない状況に追いやられた。残念ながら、サルマーン国防大臣のイエメン介入指計画は、万人が間違いと認める愚策だった。

2017年、サルマーン国防大臣は次の王位継承者であるモハメッド・ビン・ナイエフ王子を追放、自身が新王子(皇太子)となり、次の国王の座を盤石にした。

王位を奪われたナイエフ王子は逮捕され、全資産を没収。彼のもとで働いた人々は地位をはく奪された。これに伴いアル・ジャブリ氏はカナダに亡命した。

サウジアラビアの諜報機関を変えた英雄の子供(サウジアラビア在住)は”敵”の手に落ちた。アル・ジャブリ氏の長男、ハリド氏によると、「オマールとサラは3月16日の夜明けに誘拐された。複数台の車から現れた約50人の州警備員は二人をベッドから連れ出し、どこかに走り去った」と述べた。

二人を誘拐した州警備員たちはアル・ジャブリ氏の家族宅を捜索、メモリーカードを奪ったという。ハリド氏は「オマールとサラが逮捕される道理はなく、”起訴される”といった情報も一切ない。亡命生活を送っている父は私に、”二人が生きているか死んでいるかは誰にも分からない”と言った」と述べた。

二人が誘拐された理由は今も分かっていない。しかしハリド氏は、カナダに亡命した父、アル・ジャブリ氏を逮捕するためのエサ、交渉の道具として二人が拉致されたと信じている。

BBCはサウジアラビア当局に対し、アル・ジャブリ氏の家族が誘拐された事件に関するコメントを求めたが、返答はなかった。

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