◎ネタニヤフ氏は昨年の議会選で勝利し、イスラエル史上最も右寄りな政権を発足させた。
2023年1月7日/イスラエル、首都テルアビブ、ネタニヤフ政権の政策に抗議するデモ(Tsafrir Abayov/AP通信)

イスラエルのネタニヤフ(Benjamin Netanyahu)首相は29日、バイデン(Joe Biden)米大統領が物議を醸している司法制度改革から手を引くよう要請されたことに不満と怒りを表明した。

バイデン氏は記者団に対し、「その道を進むことはできない」と述べた。

ネタニヤフ氏はその後、「イスラエルは主権国家であり、大切な友人を含む海外の圧力ではなく、己の判断で決定を下す」とツイートした。

ネタニヤフ氏は汚職容疑で公判中にもかかわらず、司法制度の見直しを政策の柱に掲げ、リベラル派で構成される最高裁の判決を覆す権限を連邦議会に付与したいと考えている。

改革法案が成立すれば、議会は過半数の賛成で最高裁の判決を覆すことができるようになる。

しかし、ネタニヤフ氏は改革に反対する抗議デモが数十万人規模に達したことを受け、法案の審議を一時停止すると発表。市民と野党の圧力に屈した。

ネタニヤフ氏は昨年の議会選で勝利し、イスラエル史上最も右寄りな政権を発足させた。

人権団体と活動家たちはネタニヤフ氏の計画が三権分立を破壊し、司法の独立を木っ端みじんに打ち砕き、民主主義を崩壊させると非難している。

しかし、ネタニヤフ氏、超国家主義政党「ユダヤの家」を率いるベン・グヴィル(Itamar Ben Gvir)治安相、超国家主義政党「宗教シオニズム」のスモトリッチ(Betzalel Smotrich)財務相を含む政府高官らは裁判所が選挙で選出された議員以上の「過度な権限」を与えられていると批判し、「有権者は与党の政策を支持・投票した」と主張している。

アナリストは改革を「独裁法」、野党は「クーデター」と呼んでいる。

ネタニヤフ氏は今週、改革中止を訴えたガラント(Yoav Galant)国防相を解任。デモ隊はこれに激怒し、26日と27日に10万人規模のデモを決行。主要労組はゼネストを呼びかけている。

ネタニヤフ氏は結局、圧力に屈し、対話の時間を確保するため、次の国会まで改革の審議を停止すると発表した。

地元メディアによると、与党・リクードらの政権幹部は28日遅くにヘルツォグ(Isaac Herzog)大統領と会談したという。ヘルツォグ氏は今月、ネタニヤフ氏に妥協案を提示していた。

報道によると、ヘルツォグ氏は野党の代表とも会談したという。

一方、バイデン氏は28日にノースカロライナ州を訪問した際、記者とのやり取りの中でネタニヤフ氏に改革を断念するよう迫った。

バイデン氏は記者団に対し、「イスラエルの支持者と同様、私もこの問題を非常に心配しており、彼らがその道に進むことを懸念している」と語った。

またバイデン氏は「ネタニヤフ首相が妥協点を見出すために行動すると期待しているが、現時点でその兆候はみられない」という見方を示した。

ネタニヤフ氏はこの発言に怒って反論し、ツイッターにこう書き込んだ。「イスラエルは主権国家であり、国民の意思によって意思決定を行うことができ、親友を含む海外の影響は一切受けません」

またネタニヤフ氏は「私たちは三権分立の適切なバランスを取り戻すことで民主主義を強化する」と主張し、幅広い合意を得たうえで改革を実現するために努力していると語った。

ガンツ(Benny Gantz)前国防相は29日、こうツイートした。「バイデン氏がイスラエル政府に緊急のモーニングコールを送った」

「最も親しい友人であり、最も重要な同盟国である米国との関係が損なわれることは国家安全保障に深刻な影響を与える、戦略的打撃である」

2022年11月2日/イスラエル、エルサレム、ネタニヤフ元首相とサラ夫人(Tsafrir Abayov/AP通信)
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