◎ラファとその周辺の避難所には約150万人が身を寄せている。
エジプトとパレスチナ・ガザ地区を結ぶラファ検問所(ロイター通信)

イスラエルのネタニヤフ(Benjamin Netanyahu)首相は9日、イスラム組織ハマスへの攻撃拡大に先立ち、パレスチナ・ガザ地区南部のラファから市民を避難させるよう軍に命じた。

国連によると、ラファとその周辺の避難所には約150万人が身を寄せている。

米政府はイスラエルに対し、「ラファへの攻撃は大惨事を招く」と警告。国連とEUも懸念を表明した。

国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)はこの避難命令を「不可能」と呼び、イスラエル軍に攻撃を控えるよう促した。

イスラエル首相府によると、ネタニヤフ氏は軍と治安当局の幹部に対し、ラファの避難計画とハマス大隊壊滅のための複合作戦を内閣に提出するよう命じたという。

ネタニヤフ氏は幹部に対し、「ラファに潜伏するハマスの4個大隊を残したまま戦争の目的を達成することは不可能だ。テロリストがそこに潜伏していることを考えると、市民の避難を急ぐこともまた急務である」と述べた。

ネタニヤフ氏は今週初め、ハマスが提示した停戦案を拒否し、ラファへの攻撃準備を進めるよう軍に命じた。

カタールの衛星テレビ局アルジャジーラによると、ハマスの交渉担当はエジプトの首都カイロを離れ、両者の協議は現在、保留されているという。

ラファに退避した市民のほとんどがテントで生活している。

EUのボレル(Josep Borrell)外交安全保障上級代表はX(旧ツイッター)に声明を投稿。「イスラエル軍がラファを攻撃するという報道は憂慮すべきものだ。それは、すでに悲惨な人道的状況と耐え難い民間人の犠牲を悪化させる破滅的な結果をもたらすだろう」と書き込んだ。

グテレス(António Guterres)国連事務総長も今週、ラファで「人道上の悪夢」が続き、日を追うごとに悪化していると警告した。

グテレス氏の報道官は9日、「国連はラファに逃れた人々の運命を非常に心配している」とSNSに投稿した。

UNRWAのラザリニ(Philippe Lazzarini)事務局長は9日の記者会見で、「ラファで不安とパニックが高まっている」と述べた。

ラザリニ氏はエルサレムの記者団に対し、「恐ろしい事態になる。ラファで大規模な軍事作戦が行われれば、取り返しのつかない大惨事になる」と語った。

ガザの保健当局によると、イスラエル軍による9日の空爆でラファの市民8人を含む15人が死亡したという。パレスチナ側の死者は2万8000人近くに達し、今も増え続けている。

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