◎ガソリンタンクが爆発した原因は明らかにされていないが、当局によるとタンクの周辺に集まっていた民間人を含む27人が死亡し、少なくとも79人が負傷したという。
2021年8月15日/レバノン北部の村トゥレイユ、爆発したガソリンタンクを調査する当局者たち(ロイター通信)

レバノンの現地メディアによると、8月15日に北部の村トゥレイユで発生したガソリンタンクの爆発事故に多くの市民が憤慨し、次期首相の自宅を襲撃したという。

暴徒化した抗議者たちはナジブ・ミカティ次期首相の辞任を要求し、自宅に石を投げ、治安当局と衝突した。

ミカティ次期首相は国民と悲しみを共有すると表明したが、いかなる理由があろうと暴力は許されないと述べた。

レバノン軍はシリアとの国境の村トゥレイユの倉庫に保管されていたガソリン約60,000リットルを押収し、15日午前から地域の住民への提供を開始し、その後、爆発事故が発生したと伝えられている。

AFP通信は、「警察はガソリンを買い占めた黒人マーケターを逮捕した」と報じた。

爆発事故の原因は明らかにされていないが、当局によるとタンクの周辺に集まっていた民間人を含む27人が死亡し、少なくとも79人が負傷したという。

レバノンは現在、国民の預金を紙屑に変えたハイパーインフレと深刻な燃料不足に悩まされており、電力は1日数時間しか供給されていない。国民はレバノン政府を支配するイスラム過激派組織ヒズボラの怠慢と管理不備を非難し、昨年8月に発生したベイルート港の爆発を含む進行中の危機を「人災」と呼んだ。

AP通信によると、現在レバノン国内でガソリンを入手することは困難だが、闇市場では高値で取引されているという。

腕と脚に火傷を負い病院に搬送された兄弟を見舞ったマルワ・アル・シェイク氏はAFP通信に、「多くの住民がタンク周辺に集まっていました」と述べた。「住民たちは皆、プラスチック容器を持っていました...」

シェイク氏によると、事故の目撃者たちは「誰かがライターで火をつけた」「誰かが銃を発砲した」「タンクの近くで煙草を吸っている男がいた」などと主張していたという。シェイク氏はAFP通信に、「混乱と不注意が爆発を引き起こしたと信じています」と語った。

現職のハッサン・ディアブ暫定首相は昨年、ベイルート港の爆発事故の責任を取り辞任したが、ヒズボラは新政府を承認せず、ディアブ首相は次の選挙まで暫定政権を運営するよう命じられた。

ディアブ暫定首相は16日の声明で爆発を「大惨事」と呼び、国民に犠牲者を追悼するよう呼びかけた。

レバノンの中央銀行は先週、政府の怠慢で外貨準備が大幅に減少したため、燃料製品に対する補助金を終了すると突然発表した。ミシェル・アウン大統領とディアブ暫定首相はこの決定を非難し、ガソリン価格に影響は出ないと主張したが、ガソリンスタンドのタンクは枯渇し、価格は急騰した。

治安当局はガソリンの買い占めを非難し、14日からガソリンを大量に保管している個人や組織の取り締まりを開始した。

フォーブス紙によると、ヒズボラと連携しているナジブ・ミカティ次期首相はレバノンで最も裕福な政治家のひとりであり、2021年の個人資産は約25億ドル(2,700億円)だったという。

ミカティ次期首相は住宅ローンや国営電気通信事業に関連する汚職事件で起訴されているが、先月26日、議会投票で次期首相に選ばれ、アウン大統領に組閣を命じられた。

2021年8月15日/レバノン北部の村トゥレイユ、ガソリンタンクの爆発現場近く(Getty Images/AFP通信)
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