◎レバノンは近代史上最悪と呼ばれている経済危機の真っただ中にあり、貧困率は人口の90%近くに達し、通貨は暴落し、ハイパーインフレは国民の預金を紙屑に変え、失業率を前例のないレベルに押し上げた。
2021年12月28日/レバノン、首都ベイルートの政府庁舎、ナジブ・ミカティ首相(Dalati Nohra/レバノン政府広報室/AP通信)

12月28日、レバノンのナジブ・ミカティ首相は国際通貨基金(IMF)との新たな取引に向けた協議は来年2月末までに完了する見込みと明らかにした。

ミカティ首相は声明の中で、1月中旬に予定されているIMFとの会談に先立ち、「宿題に取り組んでいる」と語った。

現地メディアによると、IMFの代表団は1月中旬にレバノンを訪問し、その後2月上旬までに再びレバノン当局と協議を行い、新たな融資の詳細を発表する予定だという。

レバノンは近代史上最悪と呼ばれている経済危機の真っただ中にあり、貧困率は人口の90%近くに達し、通貨は暴落し、ハイパーインフレは国民の預金を紙屑に変え、失業率を前例のないレベルに押し上げた。

IMFを含む主要な貸し手はレバノンの経済危機を「意図的な不況」と呼び、レバノンを牛耳るイスラム過激派組織ヒズボラやその他のエリートと呼ばれる高官の汚職、腐敗、管理ミスが危機を招いたと非難している。

一方、アルジャジーラなどによると、スイスやフランスなどからマネーロンダリングと横領の疑いをかけられているレバノン中央銀行のリアド・サラメ総裁は職にとどまる予定だという。

ミカティ首相は9月の就任演説で、「戦争中(経済危機中)に将校を変えるつもりはない」と述べていた。

レバノンの財政の守護者と呼ばれていたサラメ氏は、経済崩壊が始まった2019年以来、多くの批判を集めてきた。しかし、ヒズボラを含む国の支配階級はサラメ氏を擁護し、辞職すべきという野党勢力の主張を却下した。

政府とIMFの合意を公式に成立させるためには、議会の承認を得る必要がある。レバノンとIMFの代表団は昨年にも協議を行ったが、意見の隔たりを埋めることはできなかった

ミシェル・アウン大統領は28日、2カ月以上閣議を招集していない政府に苦言を呈し、経済危機を解決するためには政府一丸となって問題に取り組まなければならないと強調した。

ミカティ政権のタカ派とハト派は、昨年8月のベイルート港爆発事故の調査で真っ向から対立している。タカ派(ヒズボラ派)はヒズボラの統治にメスを入れようとしている首席調査官の解任を求めているが、ハト派は公平かつ公正な調査を継続すべきと主張している。

ヒズボラの指導者は首席調査官のタレク・ビータール判事の解任を控訴裁判所に要求したが、裁判所は今月7日にこの要求を却下し、調査の継続を認めた。

タカ派のミカティ首相は記者団に対し、爆発事故の調査に関する国民の懸念を理解しているが、調査は憲法に基づき行われるべきであると述べた。「司法は政治から距離を置くべきです...」

ベイルート港の倉庫に不適切に保管されていた硝酸アンモニウムは2020年8月4日に爆発し、消防士や子供を含む少なくとも214人が死亡、6,000人以上が負傷し、約30万人が住居を失った。

事故から1年以上経過したにもかかわらず、硝酸アンモニウムの保管が許可された理由や爆発に至った経緯などはほとんど不明のままであり、ヒズボラは事故の責任を一部の港湾担当者に押し付けた。

2020年8月5日/レバノン、首都ベイルートの港(AP通信/Hussein Malla)
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