◎イスラエルとパレスチナではここ数週間、暴力事件が相次いでいる。
2022年5月11日/ヨルダン川西岸地区、取材中に死亡したアルジャジーラ記者の写真(Mohamad Torokman/AP通信)

イスラエル軍は11日、ヨルダン川西岸でアルジャジーラのジャーナリストが射殺された事件について、イスラエル兵が故意に撃ったという報道を否定した。

占領下のヨルダン川西岸で活動していたシリーン・アブ・アクレ(Shireen Abu Aqleh)氏は、ジェニンの難民キャンプに対するイスラエル軍の急襲作戦を取材中に撃たれ、死亡した。

アクレ氏は20年以上にわたったヨルダン川西岸地区を取材し、住民から慕われていたと伝えられている。

軍当局は声明で、イスラエル兵がアクレ氏を故意に撃ったというアルジャジーラの報道を否定し、現時点で発砲者は分からないと説明した。

軍は当初、アクレ氏は武装パレスチナ人に殺害された可能性があると指摘したうえで、同氏が撃たれた時に軍兵士が現地に配備されていたことを認めていた。

軍は難民キャンプの路地でパレスチナ人が発砲している映像を公開し、「この映像が武装パレスチナ人が当時、この地域で発砲していたという兵士の報告を立証している」とした。

イスラエルのベネット(Naftali Bennett)首相もイスラエル兵に向かって発砲したとされる武装パレスチナ人が映っている映像をツイートした。

ベネット首相は、「武装勢力はイスラエル軍に被害を与えることはできず、代わりにジャーナリストを撃ったと考えられる」と主張した。

またベネット首相は、「現在手元にある情報によると、武装パレスチナ人が銃を乱射しジャーナリストの不幸な死を招いた可能性が高い」とした。

しかし、イスラエルの人権団体(B'Tselem)はこの主張を独自に調査し、イスラエル軍のシナリオに疑問を投げかける映像を11日に公開した。

この人権団体はイスラエル軍が公開した武装パレスチナ人が銃を乱射した場所と、アクレ氏が銃撃を受けた場所を特定したと報告している。

団体によると、2つの地点は約300メートル離れており、壁や建物で隔てられているという。

団体の広報担当はツイートの中で、「イスラエル軍が公開した映像の武装パレスチナ人の銃弾がアクレ氏に当たったという主張はあり得ない」と述べた。「2地点は300m離れており、その間には壁や住宅があります...」

イスラエルのガンツ(Benny Gantz)国防相は11日、「我々がこの数時間で行った予備調査では、ジャーナリストに対する銃撃はなかったとされているが、調査は継続中である」と声明を発表した。

EUと米国のグリーンフィールド(Linda Thomas-Greenfield)国連特使はイスラエル政府に独立した透明性のある調査を行うよう要求した。

パレスチナ自治政府は「アクレ氏は処刑された」とイスラエル軍を非難した。

イスラエルとパレスチナではここ数週間、暴力事件が相次いでいる。

イスラエルは1967年の第三次中東戦争でガザ地区、シナイ半島、ヨルダン川西岸地区、ゴラン高原、そしてアルアクサ・モスクを含む東エルサレムを占領した。それ以来、ガザ地区とヨルダン川西岸地区に追いやられた数百万人のパレスチナ人はみじめな生活を送っている。

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