◎アミニさんの死と道徳警察に対する抗議はイランから世界に広がり、イラン指導部に強烈な圧力をかけている。
イランの道徳警察に抗議するデモ(Getty Images/AFP通信)

イランで活動している人権団体は26日、クルド人居住区で治安部隊が銃を乱射したと報告した。

複数の人権団体、活動家、目撃者によると、治安部隊は西部クルディスタン州サッゲズのデモ隊に向かって発砲したという。

サッゲズはテヘランで治安部隊に殴り殺されたクルド人女性のアミニ(Mahsa Amini)さんの出身地である。

26日はアミニさんが亡くなってから40日目にあたる。死後40日はイランおよびイスラム教の伝統で大切な追悼の日とされ、この日に合わせて全土で抗議デモが行われた。

ソーシャルメディアで拡散した動画などによると、クルド人数千人がアミニさんの墓の近くでデモを行い、道徳警察に抗議したという。

治安部隊はこのデモ隊に催涙ガス弾と実弾を撃ち込んだとみられる。

アミニさんは先月13日、テヘランを訪問中にヒジャブを適切に着用しなかったという理由で道徳警察に殴られ、パトカーに頭を叩きつけられ、車内で暴行を受け、昏睡状態に陥り、3日後に死亡した。

SNSで共有された動画にはアミニさんが暴行を受ける様子が映っていたが、イラン指導部を暴行を否定し、この事件を「不幸な事故」と呼んだ。

当局はクルディスタン州サッゲズとその他の地域に治安部隊を配備し、追悼の日のデモを妨害した。

ツイッターの動画には数千人の弔問客が治安部隊に封鎖されたエリアを迂回してアミニさんの墓まで行進するところが映っていた。

デモ隊は「女性・生命・自由」「独裁者に死を」「裏切り者を倒せ」「クルディスタンはファシストの墓場になる」などと叫びながら行進した。

アミニさんの家族が式に出席したかどうかは明らかになっていない。

AP通信はアミニさんの家族に近い関係者の話を引用し、「道徳警察はアミニさんの父親に式を行わないよう圧力をかけた」と報じている。

ノルウェーに本部を置くクルド系の人権団体ヘンガウ(Hengaw)はツイッターに、「デモ隊が行進していたところ、突然治安部隊の襲撃を受けた」と投稿している。

ロイター通信は目撃者の証言を引用し、「治安部隊は墓地に集まった弔問客に発砲し、数十人を逮捕した」と報じている。

国営イラン通信(IRNA)はこの発砲事件について、「アミニさんの追悼式に出席していた一部の弔問客がサッゲズ郊外で治安部隊と衝突した」と報じた。

一方、人権団体ヘンガウはクルディスタン州の他の都市でも抗議デモが行われたと報告した。ヘンガウによると、他の都市でも銃撃が報告されたという。

アミニさんの死と道徳警察に対する抗議はイランから世界に広がり、イラン指導部に強烈な圧力をかけている。

一部の専門家は1979年のイスラム革命に匹敵する「混乱」に発展する可能性があると指摘している。一部地域では武装勢力が治安部隊に攻撃を仕掛けたと伝えられているが、詳細は分かっていない。

イランの女性たちはヒジャブの着用強制に抗議し、ヒジャブを焼き捨て、公の場で髪を切り、最高指導者のハメネイ(Ali Khamenei)師に中指を突き立てた。

ノルウェーに拠点を置く人権団体イラン・ヒューマン・ライツ(IHR)によると、治安部隊の攻撃でこれまでに少なくとも234人が殺害され、数千人が負傷したという。234人のうち29人は未成年と報告されている。

多くのSNSユーザーがアミニさんを追悼する集会やデモがイラン全土で行われていることを示す写真や動画を共有した。

首都テヘランで撮影された映像には、治安部隊が女子校内で抗議していた生徒に催涙ガスを使用するところが映っていた。

テヘランのデモに参加した女性はSNSに、「撃ち殺されるかもしれないが、絶対にやめない」と投稿している。「次の世代のためにやります。私たちは普通の生活を送りたいだけです」

イランの道徳警察に抗議するデモ(Getty-Images/AFP通信)
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