◎一部の共和党員はホワイトハウスの対応を「恥」と呼び、「ベトナムの敗走を彷彿とさせる」と嘲笑した。
2021年8月15日/アフガニスタン、首都カブールの米国大使館撤退作戦を支援する米兵(LPhot Ben Shread/米国防省/Crown Copyright/AP通信)

8月15日、ジョー・バイデン大統領と政府高官は驚異的なスピードでアフガニスタンを占領したタリバンの電撃戦に驚いた。

タリバンの侵攻はアメリカの予想をはるかに上回り、バイデン大統領に就任以来最大の試練をもたらした。一部の共和党員はホワイトハウスの対応を「恥」と呼び、「ベトナムの敗走を彷彿とさせる」と嘲笑した。

バイデン大統領は4月の演説で、2001年の9.11同時多発テロ後に勃発したアフガニスタン戦争にウンザリしていると述べ、「タリバンはアフガン軍に勝てない」と主張し、米軍の完全撤退を強く支持した。

しかし、政府の主要高官は15日、アフガン軍の崩壊のスピードは予想を完全に上回り、不意を突かれたと認めた。

アントニー・ブリンケン国務長官はCNNニュースのインタビューの中で、「アフガン軍は国を守ることができず、私たちが予想していたよりも早く敗北した」と述べた。

バイデン大統領はアフガニスタン問題を終息させ、コロナウイルス対策、インフラの整備、投票権の保護などの国内問題に焦点を当てたいと思っていたが、米軍撤退は完全に裏目に出た。

AP通信によると、バイデン大統領は15日もメリーランド州のキャンプ・デービッドにとどまり、アフガニスタンに関する報告を安全保障チームから受けたという。

一方、国防総省と国務省は15日の共同声明で、「カブールのハミド・カルザイ国際空港を確保するための協議は完了しており、民間および軍用機の離着陸の安全は確保できている」と述べた。バイデン大統領は大使館スタッフや関係職員を退避させるために米兵約6,000人を現地に派遣している。

AP通信の取材に応じた政府高官によると、バイデン大統領は18日までキャンプ・デービッドにとどまる予定だが、演説を行うことが決まった場合、ホワイトハウスに戻る可能性が高いという。

バイデン大統領はアフガニスタン戦争に関与した4人目の合衆国大統領であり、後継者に戦争を引き継ぐことはないと約束し、「アフガニスタンの治安は米軍撤退後も維持されるだろう」と述べ、7月8日には「タリバンがすべてを制圧する可能性は非常に低い」と主張していた。

米主要メディアは、「バイデン大統領はアフガン軍の敗走、米軍撤退の決定プロセスや問題点、アメリカの責任を含む難しい問題を説明しなければならない」と報じた。

バイデン大統領は先週、「アフガン軍は自国を守るために強く行動できる」と希望を表明していた。しかし、行政当局はバイデン大統領に「アフガン軍は崩壊した」と警告し、大使館の要員を含むスタッフの避難作戦を加速させるために、米兵約6,000人が首都カブールに派遣された。

バラク・オバマ元大統領とドナルド・トランプ前大統領もアフガニスタン戦争からの撤退を切望していたが、最終的には軍指導部からの抵抗やその他の政治的懸念に直面し、計画を見直した。一方、バイデン大統領は信念を貫き、8月31日の撤退期限延長を拒否した。

7月下旬にABCニュースとイプソスが行った世論調査によると、回答者の55%がアフガニスタンからの撤退を強く支持したという。

ほとんどの共和党員も米軍撤退に関してはほとんど反対しなかった。トランプ前大統領は昨年2月にタリバンと結んだ合意文書の中で、2021年5月までに米軍を撤退させると約束したが、バイデン大統領は1月の就任時に期限を延長していた。

しかし、一部の共和党員はバイデン大統領の撤退戦略に対する批判を強めており、15日に公開された米兵を乗せたヘリコプター内の写真は「屈辱のベトナム敗走を思い出させる」と述べた。

ミッチ・マコーネル上院少数党首は首都カブールの避難作戦について、「超大国の慌てふためく姿を見て恥ずかしくなった」と述べた。

2021年8月15日/アフガニスタン、首都カブールの政府庁舎近く、タリバンの国旗を掲げる戦闘員たち(Zabi Karimi/AP通信)

制服組トップのマーク・ミリー統合参謀本部議長は15日に行われた会議の中で上院に、「諜報当局はタリバンを含むテロリストグループに関する評価を見直すと期待されている」と語った。

AP通信によると、諜報当局は現在、アフガニスタンの進化する脅威(アルカイダのようなジハード組織の誕生など)に関する新しいタイムラインの作成に取り組んでいるという。

少なくとも現時点で避難作戦以外の新たな動きは発表されていない。国防省と国務省はカブールの空港にいるアメリカ人や関係者の安全を維持できると述べたが、空港に行けない人や大多数のアフガニスタン国民の運命は定かではない。

バイデン政権の戦略を支持した上院外交委員会のクリス・マーフィー上院議員はAP通信に、「タリバンのスピードは驚異的だった」と述べ、「米軍が撤退した場合、アフガニスタンはタリバンに占領されると長い間信じられていた」と語った。

バイデン大統領は10年以上の間、アフガニスタン戦争はアメリカにとっての「煉獄(れんごく)」であると主張してきた。副大統領時代には当時のオバマ大統領のアフガン要員の3万人増員に個人的に反対した。

バイデン大統領は7月の演説の中であらためて撤退を支持し、「明確な目でアフガニスタンの情勢を見て、撤退を決断した」と述べた。「アフガニスタンの大使館屋上からスタッフが救出されるような事態には陥りません。タリバンがアフガニスタン全土を支配する可能性はほとんどありません...」

2021年8月15日/アフガニスタン、首都カブールの大統領官邸、タリバンの戦闘員(Zabi Karimi/AP通信)

アフガニスタン戦争の基本情報

・アメリカ主導の連合軍は2001年10月にアルカイダやタリバンを含むジハード組織を追放した。その中には9.11同時多発テロの首謀者であるウサーマ・ビン・ラーディンも含まれていた。

・アメリカはアフガニスタン政府と軍に800億ドル(約9兆円)以上投資し、武器と兵力の強化を支援した。

・2020年2月、アメリカのドナルド・トランプ前大統領はタリバンとの歴史的な和平合意に達した。

・タリバンはアメリカとの取引の中でアフガニスタン政府と和平に向けた協議を推進すると約束したが、交渉は破綻した。

・タリバンやイスラム国(ISIS)を含むジハード組織は連合軍への攻撃を再開し、戦争は20年たった今も続いている。

2021年7月8日/ワシントンD.C.ホワイトハウスのイーストルーム、ジョー・バイデン大統領(AP写真/エヴァン・ヴッチ)
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