◎レバノンの政治はイスラム過激派組織ヒズボラに支配されている。
2021年8月4日/レバノン、首都ベイルート、1年前の爆発事故で被災した穀物貯蔵用施設を眺める男性(Hussein Malla/AP通信)

8月4日、レバノンの国民は1年前にベイルート港で発生した爆発事故の犠牲者を称え、祈りを捧げた。

一方、追悼式典会場の数ブロック先では抗議者たちが治安部隊に火炎瓶と石を投げつけ、議会周辺では暴動が発生した。抗議者たちは上級高官の免責を解除するという要求が却下され、事故の詳細調査が妨害されたことにあらためて憤慨した。

治安部隊は抗議者に放水砲と催涙ガス弾を浴びせた。

レバノンは爆発事故以来、前例のない経済危機と財政崩壊に直面し、市民の生活は破綻し、ハイパーインフレは加速し、銀行預金は紙屑になった。

レバノンの政治はイスラム過激派組織ヒズボラに支配されている。

ベイルート港の倉庫に放置されていた硝酸アンモニウム約2,750トンは2020年8月4日に爆発した。公式記録によると、少なくとも214人が死亡し、6,000人以上が負傷し、約30万人が住居を失い、レバノンで最も魅力的な都市は壊滅的な被害を受けた。

爆発は歴史上最大の非核爆発のひとつだった。爆心地周辺の建物は崩壊もしくは半壊し、200km先のキプロスにも爆発の衝撃は伝わり、国民を動揺させた。

上級高官は2014年に港に運び込まれた硝酸アンモニウムが他の可燃性物質と一緒に放置されていたことを認識していたが、その責任を港の一部の責任者に負わせた。

硝酸アンモニウムの保管が承認された詳細な経緯はいまだに分かっていない。また内部告発や調査の中で、一部の関係当局が物質の危険性について繰り返し警告していたことが明らかになったが、警告が無視された理由は不明。

ベイルート港の周辺には記念式典に合わせて数千人が集まり、レバノンを破産させた腐敗と管理ミスを非難するスローガンが唱えられた。「政府は出ていけ!」

抗議に参加した建築家のサラ・ジャーファー氏はAP通信の取材に対し、「支配階級の殺人を黙認することはできない」と語った。「政府の殺人に多くの国民が怒っていることを諸外国に知ってほしい...」

ジャーファー氏は爆発で自宅を失い、今もボロボロの施設に身を寄せている。

政府機関や大使館は半旗を掲げ、コロナワクチン接種センターも「建国記念日と宣言された日」を記念し、1日限定で閉鎖され、医療従事者たちも祈りに参加した。

あるビルに設置された横断幕には、「国民は殺人国家の人質」と書かれていた。別のビルのポスターは「政府は終わり、新しいレバノンが始まる」と呼びかけた。

レバノン軍は4日午後の声明で、記念式典に武器を持ち込もうとした多くの市民を逮捕したと述べた。

ベイルート東部の地区では、レバノン共産党の支持者と右翼キリスト教レバノン軍団の支持者が衝突し、数人が投石攻撃で負傷したと伝えられている。

港の近くに集まった抗議者たちは議会に移動し、石と火炎瓶を投げ、治安部隊と衝突した。

人権NGOのヒューマン・ライツ・ウォッチは3日、爆発の調査を妨害するレバノン政府を非難し、国際社会に圧力をかけるよう呼びかけた。

ヒューマン・ライツ・ウォッチは声明で、「司法の独立性の欠如、政府高官に対する免責、および国内調査における一連の欠陥により、国民は正義を追及することができない」と述べた。

爆発は劇的な通貨危機とハイパーインフレを引き起こし、貧困ライン以下で生活する国民は人口の50%以上に急増した。国際社会は政府の腐敗と管理ミスが正されていないとして、財政支援を却下している。

一方、レバノンのかつての植民地支配国であるフランスと国連が4日に共済した国際会議は、人道支援を提供するために3億7,000万ドル(約400億円)を調達した。この資金は政府を介さず、直接国民の支援に充てられる。

2021年8月4日/レバノン、首都ベイルート、ベイルート港の爆発事故で亡くなった人々を追悼する式典(Hussein Malla/AP通信)
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