ストリーミングまたはビデオオンデマンドサービス限定映画が2021年のアカデミー賞にノミネートされる

映画芸術科学アカデミー(団体)の定めるルールでは、ロサンゼルスの映画館で少なくとも1週間上映された作品のみ、アカデミー賞候補にノミネートできると定められている。しかし、コロナウイルス危機に伴い、ロサンゼルスだけではなく、全米、世界中の映画館が閉鎖を余儀なくされている状態でこのルールを適用すると、2021年のノミネート作品は激減する可能性がある。

同団体は「一時的な例外措置が必要になる」と説明し、ストリーミングまたはビデオオンデマンドサービス「限定映画(デジタル映画)」のアカデミー賞ノミネートを認めると述べた。

近年、同団体はNetflixやAmazonなどのデジタル作品のアカデミー賞ノミネートを認めているが、既に述べた通り、「1週間上映された作品」に限られている。

2月以降、映画観で公開予定だった作品の多くが延期される中にあっても、デジタル限定映画は順調に配信を開始、ダウンロード数を伸ばしている。同団体のデヴィッド・ルービン会長とドーン・ハドソンCEOは、「我々は映画がもたらす魔法・素晴らしさを体験するうえで、映画館が最も重要、優れた役割を担っていると確認している。しかし、ロックダウンおよびパンデミックの影響下にあっては、オスカーへの参加資格を一時的に変更すべきであろう」と述べた。

ただし、映画館での興業が再開次第、今回の「免除措置」は終了するという。

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オスカーとコロナウイルス

世界中の映画監督、関係者が新作映画のリリースを目指し、作品制作に明け暮れている。しかし、映画館が平常通りに営業していなければ、彼らの作品が大衆の目に触れることはない(できない)。

公開日を延期するにあたり、オスカーを狙う関係者たちは、次年(2022年)のノミネートに標準を合わせ始めているようだ。たとえば、リン=マニュエル・ミランダの大ヒットブロードウェイミュージカルを映画化した「イン・ザ・ハイツ(原題:IN THE HEIGHTS)」は、2020年6月から2021年6月に公開日を延期した。

クリストファー・ノーラン監督の「テネット(原題:TENET)」や、スティーブン・スピルバーグ監督の「ウエスト・サイド物語(原題:WEST SIDE STORY)」も公開日を大きく延期するのではないかと噂されている。全米の映画館が従来の姿を取り戻すにはかなりの時間がかかると予想されており、他のアカデミー賞候補作品も同じような処置をとる可能性が高い

コロナウイルスの感染拡大が終息せねば、2021年のアカデミー賞候補作品は激減し、開催する意義を問われかねない。たとえデジタル限定作品がノミネートできるようになったとしても、皆の待ち望む素晴らしい映画が劇場公開されず、2021年2月の授賞式に参加できねば、ファンの関心を集めることも当然できないだろう。

コロナウイルスに負けじと、映画業界では新たな動きが出始めている。ユニバーサル・ピクチャーズは、一部のタイトルのオンデマンドリリース日を繰り上げた

その他の主要スタジオも同じような動きを見せつつある。また、一部の関係者は劇場公開作品をデジタル限定にしてはどうか、と提案しているようだが、かなり難しい決断になるだろう。

「ワイルド・スピード ジェットブレイク(原題:F9  The Fast Saga)」、「007 ノー・タイム・トゥ・ダイ(原題:No Time to Die)」、「ブラック・ウィドウ(原題:Black Widow)」などのブロックバスター作品は、「映画館で公開されれば」10億ドル規模の興収をもたらす。しかし、デジタル限定公開となると話は別だ。

現在の危機が起こる以前、スタジオは映画が公開されてから約90日後にオンデマンドリリースを開始していた。ユニバーサル・ピクチャーズの「透明人間(原題:The Invisible Man)」は、リリース開始までの期間を大幅に短縮した作品のひとつである。

また、「ミリタリー・ワイブス(原題:Military Wives)」、ミス・ワールドの舞台裏を描いた「Misbehavior」なども同様。通常よりも早くオンデマンドリリースし、自宅で作品を楽しめるようになった。

映画芸術科学アカデミーは、デジタル作品に対応するルール変更だけでなく、二つのサウンドアワードをひとつのカテゴリーに統合することも合わせて発表した。

第93回アカデミー賞は、2021年2月28日にロサンゼルスのドルビー・シアターで開催される。

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