アカデミー賞の中で最も注目される「作品賞(Academy Award for best motion picture of the year)」の選考基準が見直され、2024年から新たな基準で選考を行うと発表した。

過去数年にわたって会員資格を多様化させてきた映画芸術科学アカデミーは、賞そのものの在り方に注目、見直しを行っている。

9月8日、科学アカデミーは、”Academy Aperture 2025イニシアチブ”の一環として、現在の作品賞選考基準を見直し、新ルールを導入すると発表した。

これにより、2024年からは、「導入された4つの基準のうち2つを満たす」映画が最優秀作品を争うことになる。

映画編集者として活躍するクレイトン・デイビス氏は、「今日、アカデミー賞はハリウッドに多様性を重視するよう要請した。私たちは何十年もの間、フィルム内の表現について話し合ってきた。映画が必要とするものは変化している」と述べた。

作品賞以外のカテゴリについては、これまで通り現在の資格要件を満たす必要がある。また、特別カテゴリに分類される映画(アニメーション、長編、ドキュメンタリー、国際など)も、作品賞を狙うためには今回の新ルールをクリアしなければならない。

多様性を反映した最も良い例は、第92回アカデミー賞作品賞と国際長編映画賞を制した「パラサイト」である。

2024年(第96回)の作品賞を狙う映画は、2022年(第94回)と2023年(第95回)のアカデミーインクルージョン基準の機密フォームに必要事項を記載し、科学アカデミーに提出しなければならない。

なお、コロナウイルスの影響で2021年2月28日から”4月25日”への延期が決まった2020年(93回)アカデミー賞の選考基準に変更はない。

映画芸術科学アカデミーのデビッド・ルービン会長とドーン・ハドソンCEOはプレスリリースの中で、「アカデミー賞の選定基準は世界の多様性を反映し、門戸を広げなければならない。これは映画制作に関わる全ての関係者、視聴者にも言えることだ」と述べた。

プレスリリース抜粋:
「科学アカデミーは映画の世界でも多様性を実現するために、重要な役割を果たすと約束する」

「今回発表した作品賞の新ルールが、映画業界に変化をもたらす重要な触媒になると信じている」

新しい基準については以下の通りである。

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基準A:画面表示、テーマ、説明

基準Aを達成するには、次のルールのうち、最低1つを満たす必要がある。

A1:主役または共演者

主演俳優または重要な役割を果たす俳優の「少なくとも1人」が、以下の人種、民族グループであること。

・アジア人
・ヒスパニック/ラテン系
・黒人/アフリカ系アメリカ人
・先住民族/ネイティブアメリカン/アラスカ先住民族
・中東/北アフリカ人
・ハワイ先住民族または他の太平洋諸島人
・その他の人種または民族
※これらを一括して「人種または民族グループ」と呼ぶ

A2:一般キャスト

二次的役割およびそれ以上のマイナーな役で出演する俳優の「最低30%」は、以下の人種、グループの2つを満たすこと。

・女性
・人種または民族のグループ
・LGBTQ+
・認知障害または身体障碍のある人/聴覚障碍者または難聴者

A3:ストーリー/主題

映画の主なストーリー、テーマ、または物語を、以下の人種、グループに関連するものとする。

・女性
・人種または民族のグループ
・LGBTQ+
・認知障害または身体障碍のある人/聴覚障碍者または難聴者

第92回作品賞、パラサイト

基準B:クリエイティブリーダーシップおよびプロジェクトチーム

基準Bを達成するには、次のルールのうち、最低1つを満たす必要がある。

B1:クリエイティブリーダーシップと部門長

キャスティングディレクター、シネマトグラファー、コンポーザー、コスチュームデザイナー、ディレクター、エディター、ヘアスタイリスト、メイクアップアーティスト、プロデューサー、プロダクションデザイナー、セットデコレーター、サウンド、VFXスーパーバイザー、ライターを以下の人種、グループから選定する。

・女性
・人種または民族のグループ
・LGBTQ+
・認知障害または身体障碍のある人/聴覚障碍者または難聴者

また、上記の担当の「少なくとも1人」は、以下の人種、民族グループであること。

・アジア人
・ヒスパニック/ラテン系
・黒人/アフリカ系アメリカ人
・先住民族/ネイティブアメリカン/アラスカ先住民族
・中東/北アフリカ人
・ハワイ先住民族または他の太平洋諸島人
・その他の人種または民族

B2:その他の制作スタッフ

少なくとも6人」の制作スタッフ(技術職含む、ただしプロダクションアシスタントは除く)を、人種または民族のグループから選定する。

これからの役職には、ファーストAD、照明技術者、スクリプターなどが含まれる。ただし、これらに限定されず、他の役職でもよい。

B3:チームの構成

映画の全制作関係者の「最低30%」は、以下の人種、民族グループであること。

・女性
・人種または民族のグループ
・LGBTQ+
・認知障害または身体障碍のある人/聴覚障碍者または難聴者

第92回主演男優賞、ホアキン・フェニックス

基準C:業界へのアクセスと機会

基準Cを達成するには、次のルールのうち、両方を満たす必要がある。

C1:有給の見習いとインターンシップの機会

映画の配給会社またはファイナンス会社は、以下の人種、民族グループの実習生またはインターンシップを雇うこと。

・女性
・人種または民族のグループ
・LGBTQ+
・認知障害または身体障碍のある人/聴覚障碍者または難聴者

ミニメジャーまたは独立したスタジオは、以下の部門の「少なくとも1つ」に上記の人種、民族グループから2人以上の実習生またはインターンシップを雇うこと。

部門:
生産/開発、物理的生産、ポストプロダクション、音楽、VFX、買収、ビジネス、流通、マーケティング、宣伝

C2:トレーニングの機会とスキル開発(スタッフ)

映画の制作、配給、資金調達会社は、以下の人種、民族グループの人々に、実力を向上させるトレーニングおよびスキル開発の作業機会を提供すること。

・女性
・人種または民族のグループ
・LGBTQ+
・認知障害または身体障碍のある人/聴覚障碍者または難聴者

第92回主演女優賞、レネー・ゼルウィガー

基準D:オーディエンス開発

基準Dを達成するには、次のルールを満たす必要がある。

マーケティング、宣伝、および流通における代理

スタジオまたは映画会社のマーケティング、宣伝、流通チームに以下の人種、民族グループの社内幹部が複数名いること。

・女性
・人種または民族のグループ
  -アジア人
  -ヒスパニック/ラテン系
  -黒人/アフリカ系アメリカ人
  -先住民族/ネイティブアメリカン/アラスカ先住民族
  -中東/北アフリカ人
  -ハワイ先住民族または他の太平洋諸島人
  -その他の人種または民族
・LGBTQ+
・認知障害または身体障碍のある人/聴覚障碍者または難聴者

第92回助演男優賞、ブラッド・ピット

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