人種差別を助長するスキントーンフィルター

アジアの出会い系サイト「shaadi.com」は、ユーザーからのプレッシャーを受け、スキントーンフィルター機能を削除した。なお、同サイトは本気で結婚したい人が利用するものであり、「パートナー候補を簡単に検索できる」とユーザーの評価も上々だという。

アメリカ合衆国ダラス出身のヘタル・ラクハニー氏は、このオプションに反対するオンライン請願を行ったひとりである。

彼女は「肌の色の調整およびフィルター機能は間違いである」と訴えたユーザーと話し、その考えに同意したという。shaadi.comのマーケティングディレクターによると、このオプションは個人の趣向に合わせて調整できるだけの機能であり、肌の色もしくは人種をごまかすために作ったものではない、と述べた。

ユーザーは同サイトに写真を登録する際、「肌の色合い」オプションによって、スキンの明るさを”必ず”選択しなければならず、これが反人種差別的であると反感を買ったようだ。

なお、ユーザーは選択した肌のトーンでパートナー候補を検索できる。すなわち、黒めの肌を除外することも可能。しかしshaadi.comは、肌のトーンを選んで検索することは不可能と反論している(実際できるのだが)。

メーガン・ナグパル氏も同サイトを利用し、インド出身もしくはインドに由来のあるパートナーを探していた。

ナグパル氏は、人種差別的なスキントーンフィルターの削除を求める署名活動を開始。同時にshaadi.comへ異議申し立ての電子メールを送った。

彼女は、同社の代表から連絡を受け、その回答に愕然としたという。「shaadi.comは、肌の色を調整すること、そして、肌の色(人種)を検索対象に含めることは、ユーザーの親にとって必要不可欠な要素であると言った」

ナグパル氏のやりとりを聞いたラクハニー氏はBBCの取材に対し、「企業は社会的責任を全うしなければならない。肌の色がパートナー探しに必要不可欠と言うのであれば、すなわち、”ニガー(黒人)は対象外だから、ホワイトを選びたい”という人種差別的行為を認めることになる」と憤った。

ラクハニー氏は、ナグパル氏とのやりとり直後に行動を開始、14時間で1,500件を超える署名を得たという。彼女は、「私はオプションが廃止されたうえで、shaadi.comを利用するつもりだった。私の考えに賛同する人がたくさんいたことを嬉しく思う」と述べた。

請願書の提出を受け、shaadi.comはスキントーンフィルターおよびオプション自体をサイトから削除した。ナグパル氏は、「我々は行動し、人種差別を助長するオプションは削除された。肌の色や人種で人を選ぶ、という誤った考えは世界中に蔓延している。今回は南アジア共同体の中での出来事だったが、私は世界レベルでこの考えを共有したいと考えている。私は修士号も学士号も持っている。肌の色や人種で人を選ぶなどバカげているし、意味のないことだ」と語った。

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肌の色

南アジアの”色彩主義”は、ジョージ・フロイド氏の死による反人種差別抗議運動の過熱によって注目を集めることになった。

インド出身のナグパル氏は、「ボリウッドのスターたちは、肌を白く見せるフェアネスクリームを支持しながら、black lives matterを応援している。自分の肌を白く見せたいと願いつつ、黒人を支援する。こんなおかしな話はない」と述べた。

南アジアの文化の中には、肌を美しく、かつ白く見せるという考えが富裕層の女性を中心に定着している。日本や韓国であれば、肌にファンデーションをタップリ塗布し、蝋人形と見間違えるほどの白さが一般的なメイクになった。

アジア人が肌の色に劣等感を抱いていることは事実である。そして、同じ境遇にいる黒人は、アジア人を特別な目で見ている。第二次世界大戦時、アフリカに住む人々は、超大国アメリカと戦った日本人に羨望のまなざしを向けた。

ナグパル氏は、南アジアのコミュニティに根付く問題を指摘する。その傾向は高齢者になるほど高く、肌の色に対する偏見や劣等感は拭えないという。

ラクハニー氏は、世界中で活躍する国際的な企業が、人種差別撲滅の最前線に立ち、戦うべきと考えている。「人間は何かしらの偏見を持っている。shaadi.comのように、人種差別的な取り組みを実施すれば、人はその考えに染まってしまう。肌の色や人種でパートナーを選ぶという考えが浸透した結果、フロイド氏のような犠牲者が出た」と述べた。

shaadi.comのマーケティングディレクターはBBCアジアンネットワークの取材に対し、「愛はあらゆる形や色合いからもたらされると信じている。私たちはインドを代表する出会い系会社になった。今後は、インド社会に蔓延る女性差別問題の解決にも尽力していきたい」とコメントした。

同サイトで結婚相手を見つけた女性は、肌の色を理由に出会いを拒否されたり、酷い扱いを受けたことがあるという。しかし、人生の伴侶となる男性を見つけた。

彼女はBBCアジアンネットワークの取材に対し、「夫(男性)は肌の色を質問事項に入れていた。私は肌の色を隠すなどあり得ないと考え、正直に小麦色と答えた。この時選択を誤っていれば、私たちはどうなっていたか分からない」と述べた。

また彼女は、「義母は私の肌の色を見て落胆し、最後まで結婚に反対した。色白でハンサムな息子に、なぜ浅黒い女が寄ってきたのか、と疑問に思ったのかもしれない。肌の色を変えることはできない。人種差別反対と叫ぶ人でも、無意識のうちに偏見を持ち、自分や家族が私のような境遇にいると、つい肌の色に意識を向けてしまう」と嘆いた。

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