未曽有の危機に立ち向かう航空業界

世界中でコロナウイルスに伴うロックダウンの段階的緩和もしくは解除が進む今、航空業界に再び注目が集まっている。

大切な顧客を奪われた航空会社は、搭乗率10%未満の旅客機を飛行させたり、貨物専用機に切り替えるなどの対策を講じ、収益を確保すべく奮闘を続けている。

航空業界にITサービスを提供するアマデウス社のベンジャミン・キャニー氏はBBCの取材に対し、「私たちは、航空会社が飛行機と顧客を空に戻したいと考えていることを理解している」と述べた。

ロックダウンが解除され、海外旅行および国内旅行が可能になった時、人々の一部は移動を開始する。ただし、ウイルスが発生する以前の状態に”すぐ”戻ることはまずない、と考えた方がよい。コロナウイルスを消し去る最強のワクチンが開発される可能性もなくはないが・・・

世界中でロックダウンの段階的な緩和が進んでいることは確かであり、それに伴い飛行機を利用した大移動もいずれ許可されるだろう。しかし、社会的距離の確保が必須とされる条件下での飛行は、航空会社に厳しい現実を突きつける。

航空会社の設定する航空券価格は、過去の売り上げ実績、他社の動向、燃料価格、人件費など、いくつもの条件を複雑な計算式にあてはめ算出する。そして最も重視すべきは、顧客に価格面で満足してもらい、かつ、収益を確保することである。

今後、海外旅行を希望する顧客は間違いなく減少するだろう。それでも顧客がいる限り、航空会社は飛行機を飛ばし一定の収益を上げることが一応できる。

航空会社およびパイロットは乗客に安全なフライトを保障しなければならない。これは至極当然のことであり、世界中の航空会社が安全最優先を徹底し、飛行機を飛ばしてきた。しかし、これからは安全最優先プラス”コロナ対策”に力を入れなければ乗客の安全を保障したことにはならない。

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チケット価格上昇

密閉された機内で乗客をコロナウイルスから守ることができなければ、クラスターが発生し、世間から責め立てられ、営業自粛に追い込まれるかもしれない。最悪の場合、他国にウイルスが拡散され、第二波発生の手助けをすることになりかねない。

現時点において乗客をウイルスから守る、感染リスクを抑えるためには、社会的距離を確保するしかない。すなわち、以前のように満席の状態でフライトすることはできないのだ。

搭乗率が低くなると、航空会社の儲けも当然減る。儲けが減ると従業員に給与を払えず、ローンも返済できない。その状態が継続すれば、会社の存続すらままならない。しかし、従業員をリストラすれば、仕事のノウハウは失われ、業績回復への道はさらに遠のく。まさに崖っぷち、進むも地獄、退くも地獄の状態である。

搭乗率の低いフライトで収益を確保するには、チケット価格を引き上げつつ、コストを低減させるしかない。闇雲に価格を上昇させれば顧客が逃げてしまうので、航空会社も生き残りをかけた努力を継続するだろう。

航空会社はコロナウイルスの並外れた力に立ち向かわなければならない。何十年もかけて築き上げてきたチケット価格の方程式、他社との協調やバランス感覚は崩壊し、全く別の算出ルーツが出現する可能性も否定できないが、今のところそれは誰にも分からない。

カザフスタンの国営航空会社エア・アスタナのピーター・フォスターCEOはBBCの取材に対し、「最近再開された国内線限定のフライトでは、一定の需要を確保できている。ビジネスや学生旅行は、レジャー旅行よりかなり早く回復すると信じている」と述べた。

国際航空運送協会(IATA)は、一部のビジネス旅行者は飛行機で移動しなければならず、また、多くの人々が友人や親戚の元に足を運びたいと考えているが、それでもフライト需要は低迷すると予想している。航空会社にとってのプラス要素は、燃料価格が低くなっていることだろう。石油業界の供給過多問題はご存じの通りである。

航空業界の先行きは不透明かつ不確実である。世界で第二波、第三波が発生すれば、息の根を止められてしまうかもしれない。しかし、新しいフライトモデルが奇跡的に確立されれば、収益を上げ生き延びるチャンスもあるだろう。

【航空会社の望むシナリオ】
①コロナウイルスを消し去る最強のワクチンが誕生する。
②社会的距離を確保できる新しいフライトモデルの確立。
③画期的なコスト削減方法。搭乗率が低くても、収益を上げることができればOK。
④燃料価格のさらなる低下。
⑤政府による際限のない公的資金投入。

【航空会社および我々の望まないシナリオ】
①第二波、第三波、第四波・・・・
②海外旅行および国内旅行の自粛が当たり前になる。
③利益を度外視し、低価格の空の旅を提供する航空会社の出現。

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