支援ゼロのロックダウンは人道危機を招く

 23日、インドのナレンドラ・モディ首相は、コロナウイルスの感染拡大を遅らせるために、全土の完全封鎖を発表した。

 13億人が暮らすインド。貧困層と呼ばれる1.5億人以上の人々が路上で物を売り、生活費を稼いでいる。また「非公式」の移民労働者数百万人が、インド国内で収入を得ている。

 政府が全土の完全封鎖を強行した結果、貧困層と移民労働者は生き延びるための手段/仕事を失ったが、警察の監視の目を逃れ、路上販売を継続する者たちは後を絶たない。しかし、大半の者は自宅で待機せざるを得ず、政府の援助を待っている状態だ。

 非公式の労働者たちは、全土が封鎖されたことで大混乱に陥った。何百万人もの人々が列をなし、一斉に徒歩で移動を開始。労働者たちは非公式に入国しているため、政府からの援助を受けることはできない。何百万人もの人々が炎天下の道路を歩き、道で寝泊まりし、母国を目指している

 パンデミックを防ぐための完全封鎖は、人道的な危機に変わりつつある。道で寝泊まりし国境を目指す労働者たちの多くが飢え、乾き、命を落とすのではないかと懸念されている。

 デリーからマディヤ プラデーシュ州まで300kmのトレッキングを敢行していた労働者の男性(39歳)は、胸の痛みと疲労を訴え死亡した。また、62歳の男性は、グジャラート州の病院から徒歩で自宅に戻る際に死亡。4人の移民は国境付近でトラックにはねられ死亡した。

 人道的な危機が発生したことで、州政府は交通手段、避難所、食料の手配を実施した。しかし、移送用バスが手配されるという情報が流れた結果、デリーのバスターミナルには何十万人もの人々が押し寄せた

 デリーのアルビンド・ケジリワル首相は、「集団で移動すれば、コロナウイルス感染拡大につながる。いかなる理由があろうと、首都に滞在すること」と、非公式の労働者たちに要請を出した。また、これに伴い、首都に568か所の食品流通センターを開設すると合わせて発表した。

 同日、モディ首相は「貧しい者たちに苦難と困難をもたらした」と公式に謝罪、「コロナウイルスに勝つためには、厳しい措置が必要であった」と付け加えた。

 完全封鎖の問題点を考慮せぬまま措置に踏み切ったインド政府は、貧しい人々やホームレスに致命的な被害を与え、困難で予測不可能な課題に直面した。完全封鎖がもたらす経済的損失、国民一人一人にもたらす影響を想定し、かつ、注意深く監視しなければ、パンデミックを防止したとしても、多くの命が失われることになりかねない

 26日、インド政府は封鎖の影響を受けた人々のために、220億ドル(約2.4兆円)の緊急対策支援を発表した。

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