欧州各国はロックダウンを段階的かつ慎重に緩和中

4月中旬以降、パンデミックの収束に伴い、欧州各国はロックダウンを段階的に解除し始めた。企業は活動を再開し、多くの子供が学校に戻り、国内における移動制限も解除されている。なお、国境は7月1日解除を目指し、調整中である。

コロナウイルス/ロックダウンの緩和を進める欧州各国
WHOガイドライン見直し/感染予防対策としてマスク着用を推奨
イギリスとコロナウイルス/死を招いた3月のスポーツイベント
コロナウイルスとエアバス社/苦境に立たされる飛行機メーカー

ドイツ

ドイツは4月に小規模小売店の営業を再開した。5月初旬にはロックダウンの段階的な緩和が発表された。ただしメルケル首相は、少しでもコロナウイルス感染拡大の兆候が見られれば、”緊急ブレーキ”をかけると強調している。

●外務大臣のハイコ・マース氏は、6月15日に一部の国との国境間移動制限を緩和すると発表。国境封鎖の全面解除は8月末以降の予定。
●ブンデスリーガ、5月16日からリーグ再開。ただし、2019-2020年シーズンは全試合無観客試合。
●バーや映画館を含むあらゆる店舗が営業を再開。マスク着用と社会的距離の確保を徹底
●学校や幼稚園の再開は、16州が各地域の情勢を鑑み行う。
●フェスティバルなどの大きな公共イベントは、8月末まで禁止。

イタリア

イタリア政府は3月7日にロックダウンを開始。最初は北部ロンバルディア地方のみだったが、その後全土に拡大された。5月初めにいくつかの制限を緩和、国内間の長距離移動許可、親族訪問が許可された。6月3日には各地域間の移動制限を全て解除した。

●バーとレストランは5月18日から再開。これに伴い、テーブル間の距離を確保、プラスチック製のシールドを設けるなどの感染予防対策が講じられている。
●美容院、小売店、美術館、図書館、教会、スポーツチームの集団トレーニングも5月18日から再開。
●葬儀出席者は最大15名まで。
学校は9月1日まで閉鎖を継続
●ジムとスイミングプールは5月25日にほとんどの地域で再開。ただし、社会的距離の厳格な規則が適用されている。なお、最も感染が深刻だった北部ロンバルディア地方は依然閉鎖されたまま。
●5月30日からいくつかの観光地(ピサの斜塔など)が営業を再開。
●セリエAは6月20日から2019-2020年シーズンを再開。全試合無観客で行われる予定。

フランス

3月17日からロックダウンを開始。これに伴い、外出する際には”外出許可証”を提出、携行する必要があった。5月11日から規制の段階的な緩和を始め、6月2日にフェーズ2へ移行した。

●ほとんどの地域がグリーンゾーン(感染が落ち着いている状態)と判定されている。なお、首都パリは、先日レッド(危険)からオレンジ(要注意)に移行した。
●バーとレストランはグリーンゾーンでのみ営業可能。ただし、屋外飲食であればオレンジゾーンでも許可される。
●グリーンゾーンの小学校と保育園が5月11日、5月18日には11歳~15歳のカレッジが再開。教室の人数は最大15名、小学校の年長クラスおよびカレッジではマスク着用が義務付けられた。なお、15歳~18歳の学校(リセ)は6月2日のフェーズ2以降に伴い、グリーンゾーンでのみ再開された。
●10人未満の集会を許可。
●映画館は6月22日再開の予定。

デンマーク

欧州で最初にロックダウンを発表。4月中旬から規制の段階的な緩和を開始した。なお、緩和措置を4段階に分け、各地域ごとの感染状況を鑑み適用することとしている。

●4月14日に小学校と高齢者デイケアセンターが再開。5月18日からは12歳~16歳の授業が再開された。
●美容院、美容サロン、マッサージサロン、その他の健康サービス関連業は4月20日から再開。
プロスポーツは全て無観客開催を条件に活動を開始。スーパーリーガは5月28日から2019-2020シーズンを再開させた。
●5月11日から大型ショッピングセンターが営業再開。
●フェーズ3移行に伴い、50人以下の集会が許可。
●ジムとスイミングプールもフェーズ3移行に伴い再開。ただし、社会的距離のルールを順守しなければならない。
●5月18日にカフェとレストラン、5月21日には映画館、劇場、美術館、アートギャラリーが再開。
●国境は閉鎖されたまま。6月15日からノルウェー、アイスランド、ドイツ間のみ解除する予定

バルト三国

リトアニア、ラトビア、エストニアは欧州で最初に国境の閉鎖を一部解除。5月15日以降、市民と居住者は3か国間を移動できるようになった。ただし、過去2週間以内にバルト三国以外への渡航履歴がなく、コロナウイルスに感染していない、もしくは感染者に濃厚接触していないことが条件。

●他国から三国を訪れた場合は、14日間の”自己隔離”を求められる。
●エストニアは6月1日からドイツ、フランス、オーストリア間のみ、検疫を不要とした。
●6月中旬、三国はポーランドとの国境閉鎖を完全に解除した。

ベルギー

ベルギーは介護施設で多数の死者が出た。5月から段階的なロックダウンの緩和を開始。

●5月10日から最大4名のグループ訪問を許可。6月8日には10名に拡大された。
公共交通機関利用時のマスク着用を義務化
●5月11日から小売店等の営業が再開。ただし、厳格な社会的距離の確保を求められる。
●学校は5月18日から授業を再開。各教室の人数は最大10名。
●美術館、美容院、市場、美術館、動物園は5月18日から再開。これに伴い政府は、"150万人の社会的距離のルール”を設定した。
●カフェ、レストラン、スポーツクラブは6月8日から再開。映画館、カジノ、コンサートイベントは7月1日から再開される予定である。
●スポーツや文化に関する公共イベントは6月30日まで禁止。

オランダ

オランダは隣国ベルギーよりはるかに厳しいロックダウンを開始。規制緩和は5段階に分けて実施中である。

●5月11日から図書館、美容院、ネイルバー、サロン、マッサージなどが営業再開。
●6月1日からバーとレストランが営業再開。また1.5mの社会的距離を確保できる場合に限り、最大30名の集会も許可された。
公共交通機関利用時のマスク着用を義務化(13歳以上対象)
●中等学校は6月2日から授業を再開。
●キャンプやホリデーパークは7月1日から再開予定。同日、劇場、映画館、レストランは社会的距離を確保したうえで、最大100名まで収容可能になる。
●イベント、コンサート、スポーツ、性風俗店、サウナなどは9月再開を目指し協議中。

オーストリア

オーストリアは欧州で最初にロックダウンを緩和した国のひとつ。4月中旬に小規模小売店の営業を許可した。国境の一部も開放されている。ただし、イタリアへの渡航開始は6月16日から。

●公園、小売店などは4月14日から営業再開。
●大型小売店、ショッピングセンター、美容院などは5月上旬に営業を再開。
●テニス、ゴルフ、陸上競技など、社会的距離を確保できる屋外スポーツは再開を許可された。
●5月初旬に最大10名の集会が許可。
●レストランやカフェは5月中旬から営業再開。5月末からジム、屋外プール、ホテル、一部の映画館がオープン。結婚式も出席者100名以下を条件に許可。
●5月初旬、最終学年の生徒が授業に戻った。これにより、学校は全て再開された。

スペイン

5月4日にロックダウンの緩和計画を発表、ほとんどの地域がフェーズ2に移行した。ただし、マドリード、バルセロナ、その他の一部地域は依然高い感染状況下にあるため、フェーズ1を継続中。緊急事態宣言は6月21日に終了予定

社会的距離を確保できない場合のマスク着用をルール化。違反者には罰金が課される。
●学校は5月26日から一部地域で部分的に再開。全解除は9月以降の予定。
●バーや飲食店は5月11日から営業再開。ただし、屋外席限定。6月10日から屋内での営業も許可されるが、厳格な社会的距離の確保が求められる。
●映画館、劇場、美術館は5月26日から再開されたが、収容人数を30%に抑える必要あり
●ラ・リーガは6月11日から再開予定。
●7月1日以降、海外からの渡航者(観光客含む)に対して行われていた2週間の検疫措置を撤廃。

アイルランド

アイルランドはイギリスより厳しいロックダウンを実施。規制を4段階に分類し、5月18日からフェーズ1に移行した。

●6月8日からフェーズ2に移行。社会的距離の確保を条件に、全ての小売店が営業を開始した。
●フェーズ2移行に伴い、自宅から20km圏内への移動が許可。フェーズ1では5km圏内だった。
学校は9月まで閉鎖
●アイルランドに入国した者は、14日間の自己隔離期間を求められる。なお、6月8日から条件を緩和する予定。
●6月29日からコロナウイルス対策などに従事する必須労働者(医者、医療関係者など)限定で、保育園が再開予定。
●集会は最大6名、葬儀は最大25名、アウトドアスポーツは最大15名、いずれも社会的距離の確保を必須とする。
●フェーズ3は6月29日から、フェーズ4は7月20日から開始予定。

スイス

スイスは約4週間ロックダウンを継続。4月27日から段階的な緩和を開始した。

●園芸用品センター、美容院、一部の小売店は4月27日から営業を許可された。
●学校、図書館、美術館、レストラン、バー、カフェ、食料品店以外の店舗は、社会的距離のルールを守ったうえで、5月11日から営業を再開。
公共交通機関利用時のマスク着用を奨励
●5月30日から、最大30人までの集会が許可された。
●山岳鉄道、ケーブルカー、サマーキャンプ、映画館、劇場は6月6日から解禁。最大300人までの集会および公共イベントも開催可能になった。

ポルトガル

ポルトガルは他の欧州各国に比べ、感染者数と死者数が少なかった。政府は3段階のロックダウンを計画を策定した。

●一部の小売店、美容院、自動車販売店、書店は5月4日から営業を再開した。
●レストラン、美術館、カフェは、社会的距離のルールを順守したうえで、5月18日から営業再開。
●5月18日から幼稚園と一部の中等学校が授業を再開。
●小学校と幼稚園は6月初めに再開。
●大型ショッピングセンター、映画館、劇場、ビーチは6月初めに再開。

ギリシャ

ギリシャは2月26日に最初の感染者を確認。その後、ロックダウンに移行した。4月28日から規制の段階的な緩和を実施中。

●教会は5月4日から個人の祈りのために開放された。
●学校は最終学年のみ5月11日から再開。6月1日から小学校と幼稚園が全て再開された。
小売店は業種を問わず、全て営業再開
●カフェとレストランは、社会的距離のルールを順守のうえで5月25日に再開。
●ビーチは5月4日に再開。ギリシャの観光シーズンは6月15日に始まる予定。今年も例年通り、期間限定ホテルをオープンする。
7月1日から外国人入国者に課していた入国時の検疫ルール(2週間の自己隔離)を解除する予定。

ロシア

全土に発令されていたロックダウンは、5月12日から段階的に緩和中。企業も仕事に戻ることを許可された。しかし、24時間当たりの新規感染者数は依然として高い。

●ロックダウンの緩和に伴い、建設業が最初に仕事への復帰を許可された。
●大規模なイベント(公共、スポーツ、ライブなど)は禁止。
●首都モスクワは6月1日までロックダウンを維持。その後、定期的な散歩、公園、一部の仕事の再開が許可された。
●首都モスクワの移動制限は6月9日に解除。博物館と図書館が6月16日に再開する予定。
ショップと”モスクワの公共交通機関”利用時の手袋とマスク着用が義務化。違反すれば罰金。
●学校は閉鎖されたまま。再開時期は未定である。

ポーランド

ポーランドの感染者数は他の西ヨーロッパ諸国に比べ低い。最近の感染症例は、シレジア南部地域の炭鉱で発生したものがほとんどである。4月20日からロックダウンの段階的な緩和を開始した。

●ホテル、小売店、ショッピングセンター、美術館、ギャラリーが5月4日から営業を再開。
●コロナウイルスワクチンが開発されるまで、公共エリアでのマスク着用を義務化
●レストラン、カフェ、美容院は5月18日から営業を再開。
●小学校が5月25日に再開。
●エクストラクラサ(ポーランド1部リーグ)は6月19日から再開。サポーター観戦も許可されるが、収容率は最大25%まで
●6月13日から近隣諸国との国境封鎖を解除する予定。

スウェーデン

スウェーデンはロックダウンを実施していない。しかし、国民のほとんどが政府の助言に従い、自発的に社会的距離を確保し、自宅待機およびテレワークを実施した。

レストラン、バー、学校、企業は閉鎖されず。ただし、50人以上の集会は禁止された。
●デンマークとノルウェーは近隣諸国との国境封鎖解除に同意したが、スウェーデンは除外された。
●累計死者数は4,000人超。北欧では突出して多い。

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