◎COP26は温室効果ガスの純排出ゼロと地球の気温上昇を産業革命以前の平均気温プラス1.5℃に維持することを主な目標としている。
2021年11月9日/スコットランド、グラスゴーCOP26国連気候サミット、米下院民主党員(Alastair Grant/AP通信)

11月9日、米民主党のナンシー・ペロシ下院議長率いるリベラルチームがスコットランドのグラスゴーCOP26国連気候サミットに出席し、ジョー・バイデン大統領と世界に熱烈なメッセージを送った。

代表団のひとりで最もリベラルな気候活動家であるアレクサンドリア・オカシオ=コルテス下院議員はサミットのグループ演説で、「米国は行動で示さなければならない」と警告した。

コルテス議員は6人の女性議員で構成される「スクワッド」と呼ばれるメンバーのひとりで、左派と有色人種から圧倒的な支持を集めている。

コルテス議員はサミットの参加者と世界の気候活動家に、「米国は国際的な信用と信頼を取り戻すために行動しなければならない」と述べた。

バイデン大統領は就任初日にパリ協定復帰を決め、政権公約の柱である気候変動との戦いを開始した。しかし、下院民主党が可決した3.5兆ドル(約390兆円)の通称ヒューマンインフラ法案に組み込まれた気候変動対策費約5,550億ドル(約63兆円)は上院で削除され、気候変動に対処する他の政策も今のところほとんど機能していない。

コルテス議員は「温室効果ガスの排出量を削減しなさい」と世界に呼びかけた。「簡単なことです。化石燃料を排除しなさい...」

一方、バイデン大統領とリベラルチームの中を取りまとめているペロシ下院議長はドナルド・トランプ前大統領の気候変動に関する否定的な意見を却下し、共和党を却下し、「アメリカは帰ってきた」というバイデン大統領のスローガンを繰り返した。他の民主党員も「アメリカは帰ってきた」と連呼した。

しかし、下院民主党のリベラル過ぎる戦略は上院民主党の中道右派に却下され、3.5兆ドルのヒューマンインフラ法案はほぼ半分に削られた。法案の採決日は未定。

がんじがらめ状態のペロシ下院議長は9日の記者会見で「アメリカは帰ってきた」と述べたが、バイデン大統領の気候変動に関する取り組みは「未来形」で自慢せざるを得なかった。「米国は最も野心的な気候法案(ヒューマンインフラ法案)と共に進むでしょう...」

またペロシ下院議長はバイデン政権のメタンガス排出を削減する動きは、100カ国以上が参加するメタン排出に関する誓約を後押ししたと語った。この誓約に拘束力はない。

天然ガス施設、油田、農場、埋め立て地などから排出されるメタンガスの排出削減はバイデン大統領が推進している気候変動対策のひとつであり、議会での承認は必要ないが、将来の政権に覆される可能性がある。

一方、コルテス議員は、バイデン大統領が気候変動対策に関する共和党との交渉に全力で取り組んでいることを認めたうえで、「米国は草の根の支持者(気候活動家)、労働者、気候変動の影響を最も強く受けている人々に利益をもたらし、雇用を創出しなければならない」と強調した。「帰ってきただけでは足りません。米国は行動で示さなければなりません」

またコルテス議員は、化石燃料の使用禁止を呼びかけている活動家たちに「押しまくれ!」と熱烈なメッセージを送った。「もっと押しなさい!押して!」

2021年11月9日/スコットランド、グラスゴーCOP26国連気候サミット、米民主党のアレクサンドリア・オカシオ・コルテス下院議員(Alastair Grant/AP通信)

COP26 これまでの主な合意事項(11月9日時点)

・世界の森林の約85%を占める100ヵ国以上の指導者たちが2030年までに森林破壊を止めることに合意。どのように監視するかは不明。

・2030年までにメタンの排出量を現在の70%に削減する。(100ヵ国以上が合意)主要な排出国である中国、ロシア、インドは拒否。

・ポーランド、ベトナム、チリなどを含む40カ国以上が石炭からの移行に合意。中国、インド、米国、オーストラリア、日本、その他の石炭に依存している国は拒否。

・約450の金融機関が再生可能エネルギーなどのクリーンテクノロジーを支援し、化石燃料産業への融資を抑えることに合意。

COP26は温室効果ガスの純排出ゼロと地球の気温上昇を産業革命以前の平均気温プラス1.5℃に維持することを主な目標としている。

<COP26の主要原則
・温室効果ガス純排出ゼロに向けた持続可能な復興の推進

・野心的で実行可能な気候変動対策(ロードマップ)の策定

・情報共有によるトランジションの促進

・温室効果ガス純排出ゼロ達成に向けた各産業ごとの脱炭素化とイノベーションの加速

・官民による投資促進

・人々を中心とするトランジションの支援

・新たなエネルギーシステムにおけるエネルギー安全保障の確立

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