◎ニュージーランドが排出する温室効果ガスのほぼ半分が農業部門から排出されている。
牛(Pexels/Pixabay)

ニュージーランド政府は11日、気候変動対策の一環として、家畜がげっぷやオシッコをすることで発生する温室効果ガスに課税すると提案した。

政府のホームページによると、同国の人口は約500万人、国内で飼育されている牛の頭数は約1000万頭、ヒツジは約2600万頭。同国が排出する温室効果ガスのほぼ半分が農業部門から排出されている。

政府は「げっぷやオシッコへの課税は世界初の試みであり、農家は地球にやさしい製品をより多く販売することでその費用を回収できるはずだ」と主張した。

しかし、多くの農家がげっぷオシッコ税に不満を表明している。

フェデレイティド・ファーマーズ(Federated Farmers)はSNSに、「この計画はNZの小さな町の農家を引き裂く」と投稿した。

フェデレイティド・ファーマーズのホガード(Andrew Hoggard)会長は公式ウェブサイトに声明を投稿。「我々農家は2年以上にわたって、食料生産を減らさない温室効果ガス削減計画について政府と協力しようとしてきた」と述べた。

「我々の計画は農家が農業を続けられるようにすることです。しかし、政府の提案が採用されれば、農家は農場を売ることになるでしょう」

保守的な野党議員もこの計画に不満を表明している。

農業はNZ経済の要石である。その中でも乳製品は最大の輸出品であり、中国を含む多くの国がNZ牛のミルクを購入している。

NZは今年6月にげっぷ税計画を公表し、世界を驚かせた。政府は2025年までの法制化を目指している。

また財務省は5月、気候変動対策に29億NZドルを割り当てると約束した。この予算は温室効果ガスの排出権取引システムによって賄われる予定だ。

牛のげっぷに含まれるメタンは二酸化炭素に次いで2番目に排出量の多い温室効果ガスである。それは最も強力な温室効果ガスのひとつであり、同量の二酸化炭素の20~70倍の温室効果をもたらすとされる。

NZの農家はエサ代や燃料代の高騰に不満を表明し、政府に支援を拡充するよう求めている。

オランダの農家は政府の温室効果ガス削減計画を非難し、干し草で道路を封鎖したり、交通量の多い高速道路をトラクターで走ったりして抗議している。

アーダーン政権は2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにすると公約している。その計画の一部には家畜のメタンガスを2030年までに10%、2050年までに最大47%削減するという公約が含まれている。

政府の計画案では農家は2025年からげっぷ税を支払うことになっているが、詳細はまだ公表されていない。

アーダーン(Jacinda Ardern)首相は11日、農家が支払う税金はすべて、新技術、研究、農家への奨励金などに充てられると述べた。

オコナー(Damien O'Connor)農業相は「げっぷ税がNZと農家に転機をもたらす」と語った。「農家は干ばつや洪水など気候変動の影響を受けています。排出量の削減を率先して行うことは、環境にも経済にも良いことです」

リベラル派の労働党は2003年にも家畜から排出されるメタンガスに課税すると提案している。しかし、当時の農家はこの案に猛反対し、政敵はこの案を「おなら税」と揶揄。労働党は計画を断念した。

最新の世論調査によると、アーダーン氏率いる労働党の支持率は低迷しており、最大野党の国民党に遅れをとっている。

アーダーン政権がNZでかなりの政治的影響力を持つ農家とこの提案で合意を見いだせなければ、次の議会選で厳しい現実に直面するかもしれない。次の議会選は2024年1月までに行われる。

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