◎ニュージーランドが排出している温室効果ガスのほぼ半分が農業部門から排出されている。
ニュージーランド政府は9日、温室効果ガスの発生源のひとつである羊と牛の「げっぷ」に課税する計画を発表した。
法制化されれば、NZLは世界で初めて農家からげっぷ税を徴収する国になる。
政府のホームページによると、同国の人口は約500万人、国内で飼育されている牛の頭数は約1000万頭、ヒツジは約2600万頭。
同国が排出している温室効果ガスのほぼ半分が農業部門から排出されている。
NZLの環境活動家は政府の排出削減目標に農業部門が含まれていなかったことを批判していた。
ショー(James Shaw)気候変動相は9日、「大気中に放出されるメタンの量を削減する必要があることは間違いなく、農業に対する新たな取引制度はそれを達成する上で重要な役割を果たすだろう」と記者団に語った。
政府は2025年までの法制化を目指しており、実現すれば農家はげっぷに税金を払うことになる。
また、農家に対する奨励金制度や、植林と排出枠を取引する制度なども盛り込まれる予定。
NGO「Federated Farmers of New Zealand」の責任者であるホガード(Andrew Hoggard)氏は英BBCニュースのインタビューの中で、政府の方針におおむね賛成すると述べた。
この組織はNZL最大の農業NGOで会員数は1万3000人超(2021年時点)。
ホガード氏はNZLの農業を保護する取り組みを進めることが重要と強調した。「多くの関係者が政府の方針におおむね賛成していますが、農家に不利に働く取り組みも含まれるでしょう」
ホガード氏は、「計画は起草段階であり、最終合意には達していない」とした。
環境省によると、この制度で集められた税金は農業部門の研究開発などに投資されるという。
財務省は先月、気候変動対策に29億NZドル(約2500億円)を割り当てると約束した。この予算は温室効果ガスの排出権取引システムによって賄われる予定。
メタンは二酸化炭素に次いで2番目に排出量の多い温室効果ガスである。また最も強力な温室効果ガスのひとつで、同量の二酸化炭素の20~70倍の温室効果をもたらすとされる。
米国とEUは昨年11月のグラスゴーCOP26国連気候サミットで「2030年までにメタンの排出を30%削減する」ことに合意した。またNZLを含む100カ国以上が協定に署名している。
メタンは全体の約40%が自然界から排出されているが、牛、羊、農業、ゴミの埋め立てを含む人間の活動の中から排出される割合も徐々に増えている。
最大の発生源が天然ガスの生産・輸送・使用によるもので、2008年以降に急増した。一部の専門家は米国のシェールガス開発が影響していると考えている。
2019年には大気中のメタンガス量が記録的なレベルに達し、産業革命前の約2.5倍となった。
科学者たちはメタンの威力に懸念を表明している。それは100年間で二酸化炭素の28~34倍の温室効果をもたらすとされる。