◎NY州のキャシー・ホークル州知事は非常事態を宣言したうえで、市民に外出を控えるよう強く呼びかけた。
2021年9月1日/ニューヨーク市のブロンクス区、各地で道路が冠水した(Getty Images/AP通信)

9月1日、南部地域に大雨と強風被害をもたらした「ハリケーンアイダ」の残骸(熱帯低気圧)が北東部地域に流れ込み、記録的な大雨に見舞われたニューヨーク州は非常事態を宣言した。

NY市のビル・デブラシオ市長は声明で、「NYは歴史的な大雨に直面し、道路は水没し、危険な状態に陥っている」と述べ、市民に不要不急の外出を控えるよう呼びかけた。

NY市のブロンクス区では広い範囲で道路が冠水し、地下鉄には雨水が大量に流れ込んだ。

NY州の南に位置するニュージャージー州も非常事態を宣言し、これまでに少なくとも1人の死亡を確認したと発表した。

ABCニュースによると、ニュージャージー州ハドソン郡カーニーにある郵便局の屋根が崩落し、建屋内にいた複数名が巻き込まれたという。負傷者の数はまだ明らかにされていない。

国立気象局は、ニューヨーク市のセントラルパーク周辺の1時間雨量が80mmに達したと発表した。ニュージャージー州ウッドベリーハイツの近くでは午後6時30分頃に非常に大きな竜巻が発生し、周辺の施設を破壊したと伝えられている。

NY市警は冠水した道路から離れるよう市民に促し、消防署は電話対応に追われた。また州当局によると、市内の地下鉄駅はほぼ全て閉鎖され、NY州とニュージャージー州発の電車と飛行機は軒並み運休を決めたという。

NY州のキャシー・ホークル州知事は非常事態を宣言したうえで、市民に外出を控えるよう強く呼びかけた。

ハリケーンアイダはカテゴリー4の勢力で29日に南部に上陸し、ルイジアナ州やミシシッピ州に大雨と強風被害をもたらした。

<ハリケーンのカテゴリー>
カテゴリー1:秒速 33~44(m/s)
カテゴリー2:秒速 43~49(m/s)
カテゴリー3:秒速 50~58(m/s)
カテゴリー4:秒速 58~70(m/s)※アイダ
カテゴリー5:秒速 70~(m/s)※カトリーナ

AP通信によると、9月1日午後の時点で確認された死亡者はルイジアナ州で少なくとも6人、ミシシッピ州で4人、メリーランド州で1人に増加したという。

しかし、多くの住民が2005年8月に南部に上陸したハリケーンカトリーナ(カテゴリー5)の教訓を活かして早めに避難を終えていたおかげで、人的被害は最小限に抑えられた。カトリーナの死亡者は1,800人以上、被害総額は1,000億ドル以上(11兆円)にのぼった。

ルイジアナ州ニューオーリンズでは少なくとも数千戸が浸水被害に遭い、約2,600人が避難所にとどまっていると伝えられている。同州のジョン・ベル・エドワーズ州知事は1日の声明で、「復旧に向けた作業は始まっている」と述べた。

ホワイトハウスによると、ジョー・バイデン大統領は3日にルイジアナ州の被害状況を確認する予定だという。

一方、民間企業やシンクタンクはハリケーンアイダの被害調査を開始しており、被害総額は500億ドル(約5.5兆円)を超える可能性があると見積もられた。

ニューオーリンズに電力を供給しているEntergy社によると、1日に東部の約11,000世帯と企業の停電が復旧したという。

しかし、ルイジアナ州の公共サービス委員会によると、1日午後の時点でまだ約100万世帯と多くの企業が停電しており、60万世帯以上で断水が続いているという。隣のミシシッピ州の停電世帯数は30,000世帯以上と伝えられている。

一方、ニューヨーク市のクイーンズ区で開催されていた全米オープンテニス会場も大雨に直面し、コートの一部が浸水したため、試合を一時中断した。

全米の電力供給を監視しているpoweroutage.usによると、1日午後の時点の停電世帯数はペンシルベニア州で約11万世帯、ニュージャージー州で約8万世帯、ニューヨーク州で約3万世帯だった。

2021年9月1日/ニューヨーク市のブロンクス区(Getty Images/AFP通信)
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