暑すぎる・・・

8月12日、ロンドンの中心市街地は過去60年間の記録を更新する暑さになった。温度計は6日連続で34℃以上を記録、街と人とアイスが溶けた

バケーションで涼しい田舎町や海岸に”逃亡”している幸運な方たちは、少し涼しいところで穏やかに過ごしているかもしれない。しかし、休みが終われば、皆、都市部に戻ってくる。そして、都市部は暑いのである。

EUによると、欧州の全人口の約75%が都市部で生活しているという。

西ヨーロッパの人々は、8月のうだるような暑さにウンザリしている。人間が地球のサウナ化を進めていることは間違いないと思う(トランプ大統領は違うと主張している)が、いずれにせよ、2020年の熱波も尋常ではない。

気温が猛烈に上昇する夏、都市部の生活をより快適にするためにはどうすればよいのだろうか。

都市部は「ヒートアイランド現象」の影響で周囲より暑くなる。

ロンドン市庁舎によると、アイスも溶ける首都ロンドンの気温は周辺地域より最高10℃ほど高くなる可能性があるとのこと。

アスファルト、植生の減少、エアコンの室外機、水が地面に吸収されず排水路から排出されるなど、都市の気温をジリジリ引き上げる要因は様々である。

欧州の都市は、気温上昇の要因を軽減し、市民とアイスを溶かさないための努力を続けている。

欧州、コロナと熱波

緑化

真昼間、木の下に座っている人がいる。なぜか?涼しいからだ。

私たちは木陰(日陰)が身体と地面を涼しく保ってくれると理解している。

樹木は私たちに日陰を提供し、さらに太陽光線と大気中の二酸化炭素から酸素まで作ってくれる。しかし、それが担う役目は他にもたくさんあり、私たちの生活を支えているのだ。

樹木は地面から水分を吸収する。そして、蒸発散と呼ばれるプロセスによって、必要としない水分を葉の下側の小さな穴から水蒸気として排出する。

このプロセスを行うためには太陽光線が必要不可欠、「樹木の発汗」は木本体を冷たく保ち、さらに周囲の気温も下げる。

ヒートアイランド現象の著しいバルセロナでは、緑化への取り組みの一環として、植栽と樹木の世話にかなりの予算を投じている。

カタルーニャの都市部も同様。今も樹木エリア(森、林、公園など)を積極的に増やしている。

カタルーニ当局は、樹木エリアの割合を総面積の30%まで高め、気候変動に対応する「樹木マスタープラン」を策定した。

都市内に樹木を配置すると、野生生物の生息地および生物多様性が増加する。また、騒音公害の低減、地表水の流出防止など、環境上のメリットは非常に多い。

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街路と屋根の緑化

空気を冷やすのは、樹木だけではない。

樹木を植える余地のない小さなスペースを活用すべく、一部の都市では小規模植栽が増加。当局は住民にも植栽を奨励している

パリ当局は、「庭を作りたい」「屋根やガレージに緑を増やしたい」という申請を受ければ、ほぼ100%許可するという。

さらに、「公共エリアや歩道の空スペースに植生したい」という申請を受ければ、無茶をしない限り嬉々として受け付け、承認する。

パリやロンドンでは、住宅の屋根や壁に緑のカーテンを配置する人が増えている。

住宅の屋根、デッキ、壁などの構造物に設置された植物は、太陽光線を吸収し、蒸発散によって空気を冷やす。

ロンドン市庁舎のレポート(2017年)によると、ロンドン市街地の住宅には、1軒あたり1.5㎡の緑のカーテンが設置されていたという。

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涼める場所

ウィーンは夏のクールスポットとして、「クールストリート」なるエリア(通り)を配置した。

この通りは都市部の近くに配置され、車での進入および駐車は禁止されている。

人々は身体を冷やすクールスポットを「屋外リビングルーム」として使用できる。なお、通行料は一切かからない。

通りには座席エリア、噴水が設置され、冷たい水を霧状に噴霧する散水装置は子供だけでなく、溶けそうな暑さから身を守りたいカップルや老夫婦などにも好評だという。

ウィーン当局は、日陰を提供する緑化エリアの少ない地域に配置し、多くの方に利用してほしいとコメントしている。

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都市建築の変更

一部の地域では、水を使った革新的な方法で街の通りを涼しくしている。

南フランス、ニースでは、補装方法を抜本的に見直した。世界中で利用され始めている多孔質の舗装材(従来のアスファルトより割高)は、水を吸収し、その後蒸発、舗装路本体を冷やしてくれる。

ギリシャ第2の都市、テッサロニキでは、屋外の公共広場などにウォータージェット、スプリンクラー、水のカーテン、ファンを設置した。

通常の建物は植物や水とは異なり、太陽光線を反射せず吸収する素材で造られている。さらに、アチアチ状態の建物本体を冷やすためにはかなりの時間が必要であり、夜間の気温上昇につながってしまう。

建物の太陽光線吸収量を減らす最も簡単な方法は、薄い色の素材を利用することである。南ヨーロッパでは、古くから建物の屋根と壁は「白」が一般的だった。

さらに効果を高めたいのであれば、太陽光反射率の高い材料や塗料を使えばよい。

インドのプロジェクトチームの調査によると、「クールリーフ」は室内温度を少なくとも2℃低下させる可能性があるという。ただし、材料や塗料、その他諸条件によって効果はまちまちなので、興味のある方、家を建てる予定の方は、建築関係の専門家に聞いてほしい。

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情報提供

高齢者や幼児は、熱波の影響を最も受けやすい

2003年8月の激しい熱波により、ヨーロッパ全土で数万人が死亡。特に被害のひどかったフランスでは、15,000人近くが熱中症などで命を落としている。

フランス政府は、記録的な熱波がもたらした悲劇を受け、それに対処する様々な措置を講じた。結果、昨年の記録的な猛暑(同国の最高気温を更新:46℃)による死者数は、2003年の10分の1以下にまで低減されたのである。

しかし、記録的な暑さだったとはいえ、1カ月ほどで1,500人近くが死亡した事実を政府は重く受け止めている。

パリ当局は、街の中で涼しいスポットを検察できるアプリを開発し、利用を促している。また、ロッテルダムやアテネ当局も同様のアプリを運用、熱中症防止に役立てている。

スマートフォンアプリは、涼を提供する重要なツールになりつつあるようだ。

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