◎ここ数週間の高温と乾燥が炎の勢いを後押ししている。
2022年8月11日/フランス、南西部ボルドーの郊外、消防飛行機(ロイター通信)

フランス政府は11日、南西部ボルドー郊外で延焼を続ける山火事が「怪物」のような勢いで燃え広がり、付近の住民約1万人が避難を余儀なくされたと発表した。

消防当局によると、この2日間の燃焼面積は74㎢に達し、炎が住宅地に接近しつつあるため、消防士1000人以上を投入して消火に当たっているという。

人的被害は今のところ報告されていない。AFP通信などによると、民家数戸が全焼し、ボルドー近郊の住民約1万人が避難を命じられた。

現場で消火活動を率いているアリオーネ(Gregory Allione)氏はRTLラジオのインタビューで、「まるで鬼のような、怪物のような勢いで燃えている」と語った。

ここ数週間の高温と乾燥が炎の勢いを後押ししている。

消防当局によると、ドイツの消防士65人が現地入りし、ポーランドやルーマニアなどの部隊もまもなく到着する予定だという。

マクロン(Emmanuel Macron)大統領は11日、同盟国に謝意を示し、「欧州の結束は固い」とツイートした。

フランスは消防ヘリ9機を南西部地域に集め、ギリシャとスウェーデンから消防飛行機を調達した。

先月同じ地域で発生した山火事は140㎢を焼き尽くし収束したものの、高温と乾燥の影響で鎮火せず、2日前に勢いを取り戻した。

アフリカ大陸から西欧に流れ込む熱波は記録的な高温と干ばつを引き起こし、フランス以外の国でも大規模火災が相次いでいる。

ポルトガルやスペインでは熱中症とみられる症状で1000人以上が死亡した。

ポルトガル中部の山岳地帯で発生した山火事の燃焼面積は100㎢を超え、今も延焼し続けている。報道によると、この地域には消防士約1500人が派遣されている。

スペインの山火事はピークを超えたが、それでも一部地域で消火活動が続いている。

英国環境局は高温警報を発令し、今後4日間の一部地域の最高気温が37度に達する可能性があると警告した。スーツをこよなく愛する英国紳士は暑さに弱くクーラーがある世帯も少ないため、政府は個人と企業に警戒を呼びかけている。

フランスの消防当局はボルドーの火災が予想以上に激しく延焼したため、部隊の再派遣を余儀なくされた。

地上部隊は風下で距離を保ちながら水をまき、必要に応じて樹木を伐採している。消防ヘリ・飛行機は水と消火剤を投下する。

しかし、当局によると、炎の勢いはまったく衰えず、むしろ加速しているように見えるという。

AFP通信は警察筋の話を引用し、「炎の勢いは予想以上に早く、数百メートル先の民家をあっという間に飲み込み、逃げ遅れた住民が消防に救助された」と報じている。負傷者はいなかった。

南西部ジロンド県のブラン・ベリエの住民約2000人は10日に全員避難したため、町はゴーストタウンの様相を呈している。

ボルヌ(Elisabeth Borne)首相とダルマナン(Gerald Darmanin)内相は11日、被害の規模を確認するため被災地入りした。

地球温暖化は山火事の原因となる高温・乾燥のリスクを高め続けている。

主要国は7年前のCOP21で地球の気温上昇を産業革命以前の平均気温のプラス2度以下、可能であれば1.5度以下に抑えることに合意した。

昨年のCOP26の共同宣言では、気温上昇を産業革命以前の平均気温のプラス1.5度以内に抑えるという「努力目標」を世界の共通目標として明記した。

しかし、国連によると、産業革命以来、地球の平均気温はすでに1.1度上昇しており、世界が温室効果ガスの排出量を大幅に削減しない限り、気温の上昇は続くという。

2022年8月11日/フランス、南西部ボルドーの郊外(Getty Images/EPA通信)
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