◎主要国は7年前のCOP21で地球の気温上昇を産業革命以前の平均気温のプラス2℃以下、可能であれば1.5℃以下に抑えることに合意した。
2022年3月29日/ドイツ、ベルリンの外務省で開催されたベルリン・エネルギー移行フォーラム(Michael Kappeler/ドイツ通信社)

国際再生可能エネルギー機関(IRENA)は29日、化石燃料が引き起こす地球温暖化を食い止めるために、世界は2030年まで毎年5兆7,000億ドル(約700兆円)の民間資金および公的資金を投入して抜本的な対策と行動を取る必要がある警告した。

IRENAは29日に公表したレポートの中で、「エネルギー効率の改善、輸送と暖房システムの電化、自然エネルギーで作られた水素の利用拡大、炭素排出を回収する努力とともに、太陽光発電と風力発電を大幅に増やす必要がある」と述べている。

科学者によると、世界はパリ協定の目標を達成するために、2030年の終わりまでに温室効果ガスの排出量を1990年比で45%削減する必要があるという。

しかし、最近のデータによると、再生可能エネルギーの急速な増加にもかかわらず、エネルギー需要と化石燃料の消費量が増加した影響で、排出量はむしろ増えている。

IRENAのラ・カメラ事務局長は、「エネルギー転換が軌道に乗っているとは言い難く、今後数年間で抜本的な対策を講じない限り、温室効果ガスの削減目標を達成することは難しい」と警告している。

主要国は7年前のCOP21で地球の気温上昇を産業革命以前の平均気温のプラス2℃以下、可能であれば1.5℃以下に抑えることに合意した。

ラ・カメラ事務局長は29日にベルリンで開催されたエネルギーフォーラムの中で、「エネルギー生産と消費の方法を劇的に変えなければ、1.5℃どころか2℃の達成も危うい」と警告した。

石油資源の豊富なアブダビに本拠を置くIRENAは報告書の中で、「井戸の掘削、パイプラインの敷設、石炭火力発電所の建設といった化石燃料拡張事業の予算7,000億ドル(約85兆円)を再エネに振り分けるべきだ」と述べている。

国連のグテーレス事務総長も、昨年過去最高水準に達した石炭火力発電への民間投資をやめるよう訴えている。

エネルギー価格の高騰やロシア・ウクライナ戦争による供給不足が懸念される中、米国や中国などの主要国は国内の化石燃料生産を強化している。

グテーレス事務総長は各国政府に化石燃料からの転換を遅らせてはならないと訴えた。「進行中の危機は再生可能エネルギーへの移行を遅らせるのではなく、加速させなければならないことを示しています...」

この呼びかけは湾岸諸国に波紋のように広がった。

主要産油国のサウジアラビアとUAE(アラブ首長国連邦)のエネルギー大臣、およびOPEC(石油輸出国機構)の事務総長は今週、ドバイで開かれたフォーラムの中で、「化石燃料はエネルギー転換の一部であり、石油と天然ガスに対する何千億ドルもの投資がまだ必要である」と主張した。

湾岸諸国はネットゼロを達成すると約束する一方、自国の原油は他国で採掘されたものより炭素集約度(一定のエネルギーを利用することでどのくらいのCO2が排出されるか)が低く、生産を縮小する計画はないと主張している。

OPECは今後数十年の間に、主にアジア地域の人口が増加することで、より多くの原油が必要になると予想している。

2045年までにカーボンニュートラルを達成すると誓い、新たな政策を発表したドイツでさえ、エネルギー需要を満たすために石炭の採掘を続けている。電力大手RWEは今週、ドイツ西部のリュッツェラート村にある農場を近隣の褐炭(かったん)炭鉱の拡張に伴いブルドーザーでつぶすという裁判に勝利した。

しかし、環境シンクタンクEmberが今週公表した報告書によると、太陽光発電と風力発電の建設は大きく伸びているという。このふたつは2021年に世界で発電された総電力の10%を初めて上回り、世界の上位5カ国を含む少なくとも50カ国が10%を超えた。

昨年初めて太陽光と風力の割合が10%を超えた国は中国、日本、ベトナムなどの7カ国。

中国は世界に類を見ない速度で太陽光と風力発電を建設しているが、エネルギー需要を満たすために石炭火力や原発の建設も拡大している。

デンマークは2021年の自然エネルギーランキングでトップとなり、太陽光と風力だけで電力の半分以上をまかなった。

Emberは、「パリ協定の1.5℃を達成するためには、2030年まで太陽光と風力発電電を毎年20%ずつ増やし続けなければならず、世界の総電力の20%を太陽光と風力発電で賄う必要がある」と述べている。

2022年3月18日/ドイツ、ニーダーザクセン州エムリヒハイムの風力発電設備(Martin Meissner/AP通信)
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