◎先進国は今回の合意を「前進」と評価する一方、活動家と多くの開発途上国が「不満」を表明している。
2022年11月11日/エジプトのCOP27会場(Peter Dejong/AP通信)

エジプトで開催されていたCOP27(国連気候変動枠組み条約第27回締約国会議)は20日、地球温暖化の影響を最前線で受けている開発途上国の被害を支援する「損失と被害」基金創設で合意し、閉幕した。

西側の豊かな国々は大きな成果は期待していなかったが、パキスタンとナイジェリアを飲み込んだ今夏の洪水は開発途上国への緊急支援が必要という声を高めた。

ロシアのウクライナ侵攻による地政学的な影響と米中間の緊張の高まりが交渉を行き詰まらせたことは言うまでもない。

先進国は今回の合意を「前進」と評価する一方、活動家と多くの開発途上国が「不満」を表明している。

▽損失と損害基金

世界は大雨、洪水、熱波、海水面の上昇など、驚異的な気候変動の影響を受けている。その中でも、温室効果ガスの排出量が少ない貧しい国々の被害は特に深刻であり、今回、「損失と損害」基金のアイデアが初めて議題に上がった。

先進国は長い間このような基金に抵抗してきた。何十年にもわたって大気中に炭素を排出してきた国々は何千億ドルもの負担を強いられるのではないかと恐れていたのだ。

交渉終盤、EUから予想外の申し出があり、交渉は何とかまとまった。ただし、詳細はまだ詰めきれていないため、さらなる協議が必要だ。貧しい国々は「気候大災害」に対処するための資金を得られると期待している。

▼資金調達のルール

ドナー国(先進国)は貧しい国々に送る資金について、「パリ協定の目標に沿ったものにする必要がある」と要求している。

一部の開発途上国はこれに抵抗し、先進国が気候変動対応と排出量削減を支援するために約束した(しかし今のところ実現していない)資金拠出の妨げになるのではないかと不安を表明した。

交渉者たちはこの問題で合意に達することができず、来年のCOP28(ドバイ)で再び協議することとなった。

▽1.5度を堅持

先進国は7年前のCOP21で地球の気温上昇を産業革命以前の平均気温のプラス2度以下、可能であれば1.5度以下に抑えることに合意した。

専門家によると、気温上昇を1.5度以下に抑えるチャンスは失われつつあるという。温室効果ガスの排出量は減少するどころか、むしろ増加している。

しかし、一定の成果は出ているようだ。パリ協定以前、今世紀末の地球の平均気温は産業革命以前のプラス4.5度と予想されていたが、最近のデータによると、各国政府の対応のおかげで2.6度まで下がったという。

一部の開発途上国と活動家はより野心的な目標を設定すべきと主張していたが、目標値は1.5度以下で維持されることが決まった。

▼化石燃料

昨年の合意文書には石炭の使用を「段階的に削減する」という文言が明記された。活動家はこれを「妥協」「恥辱」などと呼んでいる。

石炭火力に大きく依存するインドはこの文言に不満を表明していたが、今年、「石油とガスも段階的に削減すると合意文書に書こう」とサプライズで呼びかけた。この提案は案の定カットされている。

先進国と発展途上国はこの数カ月、クリーンエネルギーへの移行を促進する協定をいくつか結んでいる。

しかし、今回採択された合意文書の中に「低排出ガスエネルギー(化石燃料である天然ガスも含まれるとする説もある)」が含まれており、活動家を落胆させた。

▽メタンガス

COP26では米国を含む主要国が新たな協定を結び、強力な温室効果ガスであるメタンの大気中への放出量を2030年までに3分の1に削減すると誓約した。

この誓約を支持する国は今年さらに増え、約150カ国となった。中国もメタン削減に取り組むと約束している。

▼活動家投獄事件

COP27では投獄された活動家エルファタ(Alaa Abdel-Fattah)氏の事件にも注目が集まった。一部の指導者は同氏の解放を要求したが、叶わなかった。

エルファタ氏はハンガーストライキでエジプト政府に抗議したものの、体調を崩したと伝えられている。

▼炭素クレジット

大きな進展はなかった。

活動家たちはカーボン・クレジット市場には致命的な欠点があると非難している。主要な巨大汚染企業は他企業に金を払って排出枠を購入し、国際目標は達成していると主張しながら大気中に炭素を放出し続けることができる。

専門家によると、現在のルールは金持ち企業を優遇し、透明性が欠如し、人権保護に関する重要な文言は水増しされ、特に先住民族は排出枠取引のための林業プロジェクトへの理解を政府に迫られ、先祖代々の土地を手放すことになるのではないかと懸念している。

2022年11月19日/エジプトのCOP27会場(Nariman El-Mofty/AP通信)
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