◎スコット・モリソン首相は演説の中で、「オーストラリアは温室効果ガス正味ゼロへの道を進んでいる」と述べたが、新たな目標とタイムラインは設定しなかった。
2021年4月20日/オーストラリア、首都キャンベラ、スコット・モリソン首相(ゲッティイメージズ)

4月23日、オーストラリアのスコット・モリソン首相は仮想気候サミットの中で、野心的な温室効果ガスの削減目標を提案したジョー・バイデン大統領に抵抗した。

モリソン首相は演説の中で、「オーストラリアは温室効果ガス正味ゼロへの道を進んでいる」と述べたが、新たな目標とタイムラインは設定しなかった。「私たちはできるだけ早く目標を達成します...」

アメリカ、カナダ、韓国、そして日本は新たな削減目標を設定した。

・アメリカ2030年の目標値:2005年比で50~52%減。
・カナダ2030年の目標値:2005年比で40~45%減
日本2030年の目標値:2013年比で46%減
・韓国2030年の目標値:2017年比で24.4%減。さらに石炭火力発電所の建設への資金提供を禁止。

仮想気候サミットの議長を務めたバイデン大統領は、2030年までに自国の温室効果ガスの排出量を2005年に比べて50~52%削減すると約束した。この値は以前の目標値の2倍。

一方、モリソン首相は2030年までに2005年に比べて26~28%削減するという既存の目標を堅持した。これはパリ協定に基づく値だが、モリソン首相は正味ゼロ排出に向け前進していると強調した。「私たちの目標はオーストラリアの産業と連動しています。私たちは産業界と連携して可能な限り早く正味ゼロ排出を達成します。そして、オーストラリアは産業を打ち負かす税金ではなく、産業が創出する仕事と生計を大切にします」

「次の世代は私たちが約束したことではなく、私たちが残したものに感謝するでしょう」

2021年4月22日/ワシントンD.C.ホワイトハウス、仮想気候サミットで演説するジョー・バイデン大統領(エヴァン・ヴッチ/AP通信)

気候政策に関する持続的な批判に直面しているモリソン首相は、「温室効果ガスの排出量を削減するための行動は技術に焦点を当てる」と述べた。

オーストラリア政府によると、同国は世界平均の10倍以上の早さで再生可能エネルギーを導入しており、屋上ソーラーパネルの復旧率は世界で最も高いという。

モリソン首相は、「オーストラリアはクリーンな水素、グリーンスチール、エネルギー貯蔵、炭素回収のコストを持続可能なレベルまで引き下げるという野心的な目標を達成するために、200億豪ドル(約17兆円)を投資する」と述べ、バイデン大統領に配慮した。「オーストラリアが温室効果ガスを削減するために行っている取り組みは、大きな利益を上げると確信しています」

関係当局のデータによると、オーストラリアの平均気温は記録が残っている1910年比で1.4℃上昇したという。結果、降水量の少ない地域の干ばつは悪化し、山火事のリスクが増加した。

バイデン大統領は開会の辞で、「科学者たちは2030年までに決定的な結果を出さなければならないと言っている」と述べた。「気温の上昇を1.5℃以下に保たなければなりません。1.5度を超えた場合、より激しい火災、洪水、干ばつ、熱波、ハリケーンが頻繁に発生し、コミュニティは引き裂かれ、多くの命と仕事を失います。気候変動の兆候は私たちがもたらしたものであり、怠慢は致命的な災害のリスクを高めるでしょう」

中国の習近平 国家主席は新しい目標値を発表しなかったが、石炭火力の稼働を制限するとほのめかした。「中国は石炭火力発電を厳しく管理します。第14次5カ年計画期間中の石炭消費量の増加を厳しく制限し、第15次5カ年計画期間中に段階的な削減を開始します」

インドのナレンドラ・モディ首相は、自国の一人当たりの排出量は世界平均より60%少ないと強調したうえで、「ライフスタイルの変化が気候変動を抑え込む重要な役割を果たすだろう」と述べた。

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