テクノロジーの巨人たち

世界経済がコロナウイルスに蹂躙され始めてから数カ月。世界各国のGDPは壊滅的な数字を叩き出し、株価は無駄に上下動を繰り返している。

世界経済は100%後退した。しかし、そんな中にあっても、いくつかの企業は驚異的な勢いで成長し続け、とてつもない利益を上げている。

超大国アメリカですら、2020年上期は非常に厳しかった。専門家は、同国の中小企業の3分の1がパンデミックの影響で閉鎖もしくは倒産に追いやられる、と警告している。

しかし、既に述べた通り、コロナウイルス・パンデミック・ロックダウンという巨大な嵐の中を悠々と突き進み、驚異的な利益を叩き出す企業が一握りだけ存在する。

ビデオ会議ソフトウェア会社のZoomなどは、世界が一夜にして仮想化されたことで、莫大な収益と株価の上昇を達成した。彼らは「最も適切なタイミング」で「最も適切な場所にいた」のである。

チャールズシュワブ金融研究センターの取引担当副執行役員を務めるランディ・フレデリック氏はABCの取材に対し、「今、利益を得たければ、自宅で立ち往生している人々を狙えばいい。そして、在宅勤務を希望し自宅で仕事に励む人々は、パソコンの前で”様々なこと”を行ってくれる」と語った。

Zoom Meeting Controls

ビッグテクの進撃

Amazon、Apple、Facebook、Google、マイクロソフト、ネットフリックスなどの「テクノロジーの巨人」たちは、世界がほぼ完全にオンラインで仕事、教育、社交を行うようになったことで、莫大な収益を上げている。

Amazonは、2020年第二四半期の純売上高が昨年同時期から40%増加し、889億ドル(約9.4兆円)に達した。株価は3月に底を打って以来、97%急騰し、企業価値は数十億ドル上昇した。

Appleは、世界で初めて時価総額2兆ドル(約220兆円)を達成した上場企業になった。2020年第二四半期の収益は599億ドル。株価は3月の底値から124%跳ね上がった。

Facebookのアクティブユーザーは、全世界がロックダウンされたことで爆発的に増加した。2020年第二四半期の増加率は記録的な値となり、同社は「人々は自宅に隔離されてしまったが、当社の製品を通じて遠く離れた友人、組織とつながり、素晴らしいエンゲージメントを記録した」とコメントした。

Facebookの第二四半期の収益は予想を大きく上回る187億ドル(約2兆円)。株価は3月の底値から85%急騰した。

Googleの親会社であるAlphabet Inc(アルファベット)の2020年第二四半期の収益は383億ドル(約4兆円)に達した。これは主にクラウドコンピューティングの成長によるものである。同社の株価は3月の底値から50%上昇している。

マイクロソフトの第二四半期の収益は380億ドル、昨年同時期から13%上昇した。サティア・ナデラCEOは「過去5か月で、テクノロジーの強さが世界経済およびビジネス回復のカギになることが証明された」とコメントした。なお、同社の株価は3月の底値から57%上昇している。

ネットフリックスの2020年第二四半期の収益は61.5億ドル(約6,500億円)。ロックダウンの影響で人々が自宅に投獄された結果、ユーザーが急騰したと報告した。

3月中旬以降、ネットフリックスのシェアは63%上昇した。

チャールズシュワブ金融研究センターのランディ・フレデリック氏によると、これらのテクノロジー企業が巨大化する理由は2つあるという。

ランディ・フレデリック氏:
「彼らは過去10年ほどの間で、アメリカから世界に飛び出した。そして、あらゆる人々の生活に溶け込み、必要不可欠なものになった。彼らはこの現代社会の基礎となり、私たちのありとあらゆる欲求に応えてくれる」

「第二の理由は、経済および金利が底を打ったためである。今、自動車、航空会社、小売、その他様々な企業が半死半生状態と言っても過言ではない。しかし、ビッグテクはオンラインビジネスで永続的に収益を上げ続け、その勢いはパンデミックの影響で加速しつつある」

「金利は底を打ち、地面に這いつくばっている。結果、ビッグテクは最低レートで金を永続的に調達できる。莫大な収益を上げ、最低レートで金をいくらでも借りることができれば、どこまでも成長できるだろう」

6月、ファイナンシャル・タイムズは、Amazonが社債市場で最低の借り入れコストを獲得したと報じた。

ビッグテクのインフラの大半はオンラインである。自動車、航空会社、レストラン、パブはロックダウンで人々がいなくなり、崖っぷちに追い詰められた。しかし、ビッグテクは連邦政府の命令を軽く受け流すことができた。

標準的な中小零細企業は、ロックダウンで店舗の閉鎖を余儀なくされ、苦労している。連邦政府は数兆ドル規模の景気刺激策、キャンペーンなどを導入し、活動できずにいる中小零細企業やフリーランスなどに資金を提供した。

しかし、経済が動き出さなければ、小さな企業から資金がショートし、力尽きる。この減少は全世界で同時多発的に発生しており、世界の指導者たちはコロナウイルスを抑えつつ経済活動を再開させたい、と奮闘しているが、現実は厳しい。

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I💛ロックダウン

2020年春、そして夏、特に感染状況の酷いアメリカでは、国民の大多数が自宅に幽閉されていた。

レストラン、パブ、映画館、ジム、その他ありとあらゆる施設が閉鎖され、人々は「自宅で何ができるか」考え、答えを見つけた。

在宅勤務が当たり前になりつつあり、その優位性は誰が見ても確かなものになった。通勤(往復)に1日2時間費やしていた人は、その貴重な時間をプロジェクトに投資できるのである。

eコマース(電子商取引)は、人々が欲する物を配達してもらう際の必需品になった。残念ながら、「店頭で現金を払う」という習慣はコロナウイルスによって淘汰されつつある。

eコマースインフラストラクチャを完璧に整えていたAmazonは、最高のタイミングでこの波に乗った。

ムーディーズ・インベスターズ・サービスのアナリスト兼副社長を務めるベン・ネルソン氏はABCに対し、「コロナウイルスの登場で、eコマースは仮想現実社会を生き残る重要なカギになった。なお、これまで現金払いが当たり前だった企業は、ルールや環境の違いに困惑し、創造性が必要であると痛感したはずだ」と述べた。

塗装会社のシャーウィン・ウィリアムズは、これまでとは異なる環境に目を向け、成功した。ロックダウンの影響で自宅幽閉が当たり前になり、室内や外壁の改修を求める人が増えると考えたのである。

ベン・ネルソン氏:
「3月以降、我々(ムーディーズ)は1,000社以上の企業を格下げした。しかし、シャーウィン・ウィリアムズはコロナの波にうまく乗ったため、アップグレードした」

住宅リフォーム・建設資材・サービスの小売チェーン、ザ・ホーム・デポの株価も、3月の底値から88%上昇した。当社はカーブサイド・ピックアップオプション(オンラインで注文した商品を店舗の駐車場で受け取るサービス)に素早く対応し、幽閉されたアメリカ人の自宅改修欲求に応えた

eコマースプラットフォームのShopifyは、多くの企業のオンラインブランド構築を助け、爆発的に成長した。同社の株価は3月から180%も急騰している。

在宅フィットネスとトレーニング器具などを販売する新興企業のペロトンは、コネクテッドフィットネス(在宅リアルタイムスタジオフィットネス)の加入者が昨年同時期から94%増加。株価は3月から200%以上急騰した。

ビデオ共有ソフトウェアの代表格、Zoomの2020年第二四半期の売上高は3億2,820万ドル(約357億円)を記録、昨年同時期の169%増だった。株価は3月の底値から170%上昇している。

ロックダウンの影響でオンラインゲームの需要が急増し、「コールオブデューティ」や「ワールドオブウォークラフト」で知られるアクティビジョン・ブリザードの株価は60%上昇した。

最後に、COVID-19ワクチン試験・製作および治療の急増を受け、ノヴァヴァックス、モデルナ、リジェネロン社などの製薬会社は数十億ドル規模の企業に成長した。

ペロトン2020

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