ニューヨーク市は、フードデリバリーアプリを運営する企業に対し、手数料の上限を適用

13日、ニューヨーク市はアプリを利用しフードデリバリーサービスを行っている企業に対し、アプリの手数料に上限を設けると発表した。

同日、法案は可決、手数料を20%に制限する措置が適用された。なお、同法案はロックダウンにより閉鎖を余儀なくされている市内の全レストラン、飲食店、その他関連企業にも適用される。

コロナウイルスによりフードデリバリーサービス需要が高騰するなか、アプリを管理する企業への利用料、手数料について、国民の多くが不満を募らせていた。

サンフランシスコ、ワシントン、シアトルなどでも、これらのアプリに対して、より厳しい規則が導入されている。

オンライン食品注文サービルの最大手、アメリカ食品市場の最前線に立つ「グラブハブ(Grubhub)」は、ニューヨーク市の物価が販売価格に反映されており、それらを無視できる法律は労働者の働く機会を奪うだろうと警告した。

また同社は、「不当に利益を得ているわけではなく、コストに見合った価格を設定せざるを得ず、それを無視すれば、企業活動自体成り立たない。ある日突然法律で食料や料理の価格を決められたら、この業界は沈没するだろう」と述べた。

法律でデリバリーサービスの手数料に制限を設ける、すなわち「上限」を任意に設定すれば、提供価格の抑制、不平等の解消、および利用者の増加につながるかもしれない。しかし、アプリを運営する企業のコストが、レストランなどから徴収する手数料を上回れば、遅かれ早かれ経営は行き詰まる。個人経営のレストラン、飲食店は商品の配送手段、配達員は仕事を失うだろう。

適正価格

ニューヨーク市議会は、コロナウイルスが大流行する以前から、手数料の制限を議論していた。しかし、同市がパンデミックの震源地となったことで、フードデリバリーサービス需要が急増、議論中だった法案の可決を急ぐことになった。

同市のレストラン、飲食店の多くは、グラブハブ、ドアダッシュ(Doordash)、ウーバーイーツ(UberEats)などのフードデリバリーサービスアプリに依存している。

これらの企業は、アプリを利用するレストランの注文ごとに30%の手数料を徴収している。なお、これはマーケティング、商品の配送、配達員の手配等から導き出された額だという。

ニューヨークとニュージャージーでレストランを経営するジョージ・コンスタンティン氏はBBCの取材に対し、「アプリの運営企業はレストランの実情を無視し、高いマージンを得ている。我々の利益は、ほとんど手数料に食いつぶされている」と述べた。

先月、3つのレストランがニューヨークで手段訴訟を起こした。相手はアプリを運営するクラブハブ他計4社である。彼らは法外な手数料と独占的な支配がレストラン業界を苦しめている、と訴えた。

コロナウイルスの発生以降、アプリを運営する企業はレストランに対する救済措置を実施。一部の手数料請求の放棄、または支払い期限延長などを実施した。しかし、多くのレストランオーナーおよびその支持者たちは、企業の支援と協力が足りないと指摘する。

12日、同法案の投票に先立ち、ビル・デブラシオ市長は手数料制限法案を支持し、「スマートな法律」と述べた。

同日、市議会議員のマーク・グジョナジ氏は、「この法案により、アプリがより利用しやすくなることを望む。レストランのオーナーたちは、運営企業の指示に従わざるを得なかったが、今回の措置で業界の平準化が進むだろう。我々は法案の可決に向けて戦ったことを誇りに思っている」とツイッターに投稿した。

今回の措置により、グラブハブなどのフードデリバリーを行う企業は、ニューヨーク市で活動する場合に限り、20%の手数料徴収を遵守しなければならない。この措置が全国に拡大されれば、レストランや飲食店関係者は大喜びするだろう。

しかし、企業も「手数料とは違う方法」で料金を徴収するかもしれない。理由は、それをしなければ配送にかかるコストを回収できないためだ。赤字状態で配送を続ける”仏様のような企業”などこの世に存在しない。彼らの経営が行き詰まれば、レストランと飲食店も共倒れである。

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