ペンス副大統領vsハリス上院議員

10月7日、来月の大統領選挙を占う副大統領テレビ討論会が開催され、両者はコロナウイルスを巡り激しく衝突した。

民主党副大統領候補のカマラ・ハリス上院議員はドナルド・トランプ大統領を名指しし、パンデミックへの対応を「最大の失敗」と非難した。

これに対し共和党のマイク・ペンス副大統領は、民主党のコロナウイルス対処計画を「現政権の盗作」と嘲笑した。

最新の世論調査によると、トランプ大統領の再選に大きな影響を与える激戦州で、共和党の支持率が下がっているという。

先週の第1回大統領討論会は壮絶な泥レスリングとなり、2人の老人が激しく罵り合う様子は視聴者を困惑させ、SNSは炎上し、狂信的共和党有権者と白人至上主義者”プラウド・ボーイズ”に興奮と感動を提供した。
第1回大統領討論会、史上まれにみるカオスな夜

しかし、今回の副大統領討論会は前回の抗戦的なレスリングと比較すると間違いなく穏やかであり、両者は司会を務めたUSAトゥデーのスーザン・ページ氏の指示に従い議論し、侮辱と名誉棄損は発生しなかった。

途中、ハリス氏の討論中にペンス副大統領が口をはさむと、「副大統領、私が話している!私が話している!私が話している!!」と語気を強めるシーンはあったものの、乱闘には至らなかった。

7日夜に世界中を最も困惑させた瞬間は、ペンス大統領の頭が2分以上ハエ取り紙になった時だった。

2020年10月7日 AP通信/ユタ州、ソルトレイクシティで開催された副大統領討論会、ハリス上院議員とペンス副大統領

争点=コロナウイルス

ハリス上院議員は、コロナウイルスの危険性と致死性に誤解を与えるトランプ大統領のありとあらゆる発言、言動、SNSなどへの投稿を厳しく非難した。

カマラ・ハリス上院議員:
トランプ大統領はパンデミックが始まる前からコロナウイルスの危険性を認識していた。しかし、彼とホワイトハウスはその事実を覆い隠した」

ペンス副大統領は「ホワイトハウスのコロナウイルス戦略を模倣したチームバイデンのキャンペーン」を非難した。さらに、ジョー・バイデン氏の大統領選出馬計画を終わらせた大失態、「英国労働党ニール・クノック氏の演説盗作(1987年)」をほのめかし、ハリス上院議員を挑発した。

ハリス上院議員は司会のページ氏から「選挙前に配布される予定の承認済みワクチンを接種するか」と尋ねられ、「ドナルド・トランプの宣伝する違法薬物だけは絶対に接種しない。ただし、医療専門家やエキスパートたちが承認したものであれば、接種する」と答えた。

この回答にペンス副大統領は語気を強めた。

マイク・ペンス副大統領:
「トランプ政権がワクチン開発と製造に成功すれば、ワクチンに対する国民の信頼を傷つけ続けたという民主党の主張は良心的ではないと思う」

12フィート(3.6m)離れて座る両者を隔てるプレキシガラスは、コロナウイルスで犠牲になった21万人以上のアメリカ国民の死を鮮明に思い起こさせた

トランプ大統領は「特権」で得た世界最高の医療チームと、その完璧な監視とコントロール下で使用された未承認治療薬、「リジェネロン社のモノクローナル抗体」を称賛し、全てのアメリカ国民に無料で提供できるだろうと語った。

同じ頃、ホワイトハウスとペンタゴンでクラスターボムが炸裂し、高官、統合参謀本部議長などの感染が複数確認された

2020年10月7日 AP通信/ユタ州ソルトレイクシティ、ユタ大学周辺に集まった民主党支持者と共和党支持者たち

人種差別

人種差別の問題について、ペンス副大統領はミネソタ州で殺害されたジョージ・フロイド氏に哀悼の意を表したうえで、その後の暴動や略奪は許されないと述べた。

マイク・ペンス副大統領:
「本日会場にいるフローラ・ウェストブルックス氏は、ミネアポリスで発生した Black Lives Matterの騒乱で自宅事務所を破壊された黒人女性である

いかなる理由があろうと、暴動や略奪は許されない。そして、警察はマイノリティに対して暗黙の偏見を持っている、と決めつけるバイデン氏とハリス氏の主張は大きな侮辱である」

ペンス氏は、ハリス上院議員がサンフランシスコで検察官を務めていた時代についても言及した。

マイク・ペンス副大統領:
「ハリス氏が検察官だった頃、サンフランシスコのアフリカ系アメリカ人は、白人やラテン系アメリカ人より軽度の麻薬犯罪で起訴される可能性が高かった」

その他の議題と衝突

・ハリス上院議員は中国に対するトランプ大統領の”しっぺ返し関税”が製造業の不況を引き起こしたと主張。「共和党は貿易戦争に負けた。失ってはいけないものを失った」と述べた。これに対しペンス副大統領は、「中国との貿易戦争に敗れた?ジョー・バイデンは戦おうとすらしなかった。彼は過去数十年の間、中国共産党のチアリーダーだった」と反論した。

・ハリス上院議員は、ニューヨーク・タイムズ紙が投下したトランプ大統領の連邦所得税750ドル問題について言及。「私はタイムズの記者に750,000ドル納めていたのか?、と聞いた。記者は750ドルも納めていたと言った」と述べた。
トランプは納税申告書をリリースしますか?

・ハリス上院議員はトランプ大統領の外交政策も厳しく批判し、「彼は私たちの友人を裏切り、世界中の独裁者を受け入れた」と批判した。これに対しペンス副大統領は、世界を大混乱に陥れたイスラム国の指導者、アブ・バクル・アル・バグダディと、イランのカセム・ソレイマニ将軍殺害計画を政権の成果として強調した。

2020年10月7日 AP通信/ユタ州ソルトレイクシティ、答弁するハリス上院議員

ペンスとハリス「質問をかわす」

ペンス副大統領は、最高裁判所の議席数を増やすかどうか2回圧力をかけられた。しかし、それには答えず、代わりに新しく任命される予定のエイミー・コニー・バレット裁判官(保守派)を紹介した。

また、トランプ大統領に絶対の忠誠を誓う福音主義的カトリック教徒兼元インディアナ州知事は、故郷のインディアナ州で中絶禁止条例を定めるかと質問され、スルー

さらに、トランプ政権は病気のアメリカ国民に対する医療保険をどのように確保するつもりか、と質問され、スルーした。

一方、トランプ大統領(74歳)のコロナウイルス感染を受け、当選すれば史上最年長の新大統領になる78歳のバイデン氏と、大統領の健康問題に注目が集まった。

司会のページ氏は「大統領職を引き継ぐ可能性」について両者に質問したが、どちらも質問には答えなかった。

ペンス副大統領の回答:
「ジョー・バイデンは2009年の豚インフルエンザ対応で致命的なミスを犯した」

ハリス上院議員の回答:
「私は移民の両親から生まれたアフリカ系アメリカ人である・・・」

2020年副大統領討論会ハイライト

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