ガソリンを投下する大統領

民主党大統領候補のジョー・バイデン氏は、トランプ大統領が人種差別への抗議運動にガソリンを注ぎ、内乱に発展させた主張した

8月31日、バイデン氏は2週間前の民主党全国大会以来となる全国向けのスピーチを行い、警察の暴力が発端となった抗議運動に対するトランプ大統領の姿勢を厳しく非難した。

バイデン氏は、トランプ大統領の「大統領とは思えない発言」をいくつか引用。トランプ大統領が市民の不安をあおり、ウィスコンシン州ケノーシャで発生した暴力を意図的にエスカレートさせていると主張した。

ケノーシャでは、警察官が無抵抗の「ジェイコブ・ブレイク氏」の背中に7発もの銃弾を撃ち込んだ日以降、暴力事件が多発し、死者も出ている。

バイデン氏は、抗議者たちの気持ちを無視するトランプ大統領について、以下のように述べた。

ジョー・バイデン氏:
「トランプ大統領は道徳的リーダーシップを失った。彼は暴力を止められない。なぜなら、何年もの間、それを支持してきたからだ」

「彼は”法と秩序”という言葉を何度も口にする。しかし、彼は自分を支持する一部の武装した破壊者たちに”活動をやめろ”とは呼びかけない。法と秩序を主張しておきながら、自分の身内の犯罪は擁護するなど、論外である」

さらに、トランプ大統領だけでなく、ホワイトハウスも全米に波及した暴力を解決するつもりがない、と批判したうえで、「私は人種差別が引き起こした抗議活動を明確にしたい。人々はなぜ平和的に抗議するのか?いかなる理由があろうと、暴力、略奪、銃撃は許されない」

「無法地帯になったエリアがあれば、原因を突き止め、対処しなければならない。騒ぎに乗じて、事件をうやむやにするようなことがあってはいけない。犯罪を犯した者は起訴されるべきである」

ジョー・バイデン氏:
「暴力は変化をもたらさない。破壊をもたらすだけである。暴力はあらゆる点で間違っている。団結ではなく分裂を促し、ビジネスを破壊し、コミュニティに奉仕する人々を苦しめるだけだ。事態を再現なく悪化させる非人道的な行為であり、決して許してはならない」

「人種差別に強く抗議したキング牧師やジョン・ルイス氏は、暴力を1mmたりとも提唱しなかった。暴力の連鎖を終わらせねばならない。暴力という火にガソリンを注ぐ大統領などいらない

怒りの演説

バイデン氏の演説は、先週行われた共和党全国大会でのマイク・ペンス副大統領の発言「ジョー・バイデンのアメリカに安全はない」に対抗したものである。

バイデン氏は記者、カメラマン、シークレットサービスなどの前ではなく、単独で会議室のモニターカメラに向けて語り掛けた。

「ドナルド・トランプが再選することで、アメリカの暴力が減少すると信じている人はいない。この国には正義が、そして安全が必要である」とバイデン氏は言った。

皮肉なことに、先週の共和党全国大会以降、人種差別への抗議運動は過熱し、暴力と銃撃に発展。トランプ大統領とペンス副大統領の「ジョー・バイデン不安全説」は、まるでブーメランのように自分の顔面に跳ね返ってきた

バイデン氏は、トランプ大統領の「暴力ガソリン投下政策」を非難した。

ジョー・バイデン氏:
「彼はアメリカ国民を守るべき立場の人間だが、混乱と暴力を推奨している。今、最も明確なことはひとつ。ドナルド・トランプはこの国の平和を守れなかった、ということだ。彼はアメリカを恐怖のどん底に叩き落そうとしている」

私たちはドナルド・トランプの暴力にさらされている。アメリカ合衆国大統領の破壊行為を見た人々は、困惑している。彼はアメリカの安全と平和とビジネスを再興させたと何度も主張した。しかし、少なくとも今、この国の安全と平和、法と秩序は、ドナルド・トランプのせいで破壊されようとしている」

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コロナ危機

バイデン氏は、累計感染者数600万人を突破したコロナウイルスのパンデミック、警察関連の暴力行為とそれがもたらす経済的影響を、「トランプ大統領の在任期間中に発生した悪夢」と位置付けた。

さらにバイデン氏は、トランプ大統領がコロナウイルス危機とそれに続く経済活動への大打撃に対し、誤った対応で事態を悪化させたと非難。現在、アメリカ国民は彼の不作為により、恐怖の中で生活していると語った。

「トランプ大統領は経済活動の停滞が一番の恐怖と主張し、感染状況を考慮することなく投げやりな対応を繰り返していた。今、アメリカ国民は、家族、友人、知人がコロナウイルスに感染し、命を落とすのではないかと心配している」とバイデン氏は言った。

またバイデン氏はトランプ大統領に対し、「権力を握るためならどんなことでもする」「過去4年間の下劣な行為は、アメリカにとって毒以外の何ものでもなかった」と断罪した。

ジョー・バイデン氏:
「11月3日に向けたキャンペーンは、アメリカの未来を懸けた戦いになる。今、達成しなければいけないことは明確である。ドナルド・トランプは自分が絶望的な状況にあると理解した時、権力を固持すべく、卑怯な手を使うだろう」

「この4年間、ドナルド・トランプは私たちにとって有害な存在だった。彼は話し合いを拒否、破壊する。助け合いという概念を持たず、毒をまき散らす。民主主義を否定し、中毒死させる」

「彼は自分のイメージでアメリカを作り直す、と主張してきた。これは利己的で怒りに満ちており、暗く、そして分裂的である。アメリカには自由、優しさ、寛大、自信があった。私は再びそれらを取り戻す」

バイデン氏は戦場状態のペンシルベニア州の現状について、トランプ大統領の告発ツイートを却下した。

「私はフラッキング(シェールオイルおよびシェールガスの掘削方法、アメリカの経済のエンジン)を禁止していない。もう一度言う。私はフラッキングを禁止していない。ドナルド・トランプは息を吐くように嘘をつく男だ」とバイデン氏は言った。

トランプ大統領降臨

トランプ大統領は9月1日にウィスコンシン州ケノーシャへの旅行を予定しており、同地に行く予定のないバイデン氏を嘲笑した。

ケイリー・マケナニーホワイトハウス報道官は、「トランプ大統領はウィスコンシン州ケノーシャを訪問する。今週末はハリケーンローラの被害を受けたルイジアナ州やテキサス州にも足を運んだ」とお抱えのフォックスニュースに語った。

ケイリー・マケナニーホワイトハウス報道官:
「トランプ大統領はアメリカを再開し、傷ついた国民の元に足を運び、寄り添い、そして敬意を払う

「民主党および大統領候補は、2016年のキャンペーンと同じく、ウィスコンシン州を無視している。彼らは現地で発生した抗議運動、人種差別、傷ついた人々に興味がないようだ」

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