◎世界中に流通しているコロナワクチンの大半は裕福な先進国に供給されている。
2021年5月14日/スイス、ジュネーブのWHO本部、テドロス・アダノム事務局長(ロイター通信)

世界保健機関(WHO)のテドロス・アダノム事務局長は主要先進国に対し、幼児や10代の若者へのコロナワクチン接種計画を延期し、低所得国の接種を優先させなければならないと述べた。

世界中に流通しているコロナワクチンの大半は裕福な先進国に供給されている。

テドロス事務局長は5月14日に開催されたオンライン会議の中で、児童へのワクチン接種を開始したい理由は理解できるが、今一度再考を促すと述べた。「低中所得国の最前線で働いている医療従事者の多くがワクチンをまだ接種できていません。彼らが倒れれば、その国の数千万人も倒れます。病院はコロナ患者で溢れ返っています」

アメリカのジョー・バイデン大統領は先日、12歳から15歳へのワクチン接種を加速させる計画を発表した。バイデン大統領は今年の独立記念日(7月4日)までに少なくとも1回ワクチンを接種した成人を70%まで増やしたいと考えている。米食品医薬品局(FDA)と疾病予防管理センター(CDC)の諮問委員会は先日、12歳から15歳へのファイザーワクチンの緊急使用を承認した。

カナダも12歳から15歳へのファイザーワクチン接種を承認しており、感染拡大が続いているアルバータ州では児童への接種が始まった。

スイスの一部地域では16歳以上の接種予約が始まったと伝えられている。

Our World in Dataによると、5月時点で最も多くワクチンを接種している国は中国、2位がアメリカ、3位がインドで、アメリカ大陸、ヨーロッパ、アジアの大多数の国も接種を開始しているという。しかし、約12億人が生活するアフリカ大陸の接種は遅れており、感染再拡大と新たな変異種の発生が懸念されている。

国連やWHOなどが主導するCOVAXイニシアティブは、貧しい92ヵ国の人口の20%にワクチンを先行接種することを目的としている。しかし、ワクチン争奪戦とインドの感染爆発の影響で低所得国へのワクチン供給は滞った。

<ワクチン接種数/少なくとも1回接種した人の割合/5月16日時点
アメリカ:2億6,800万回/46%
中国:3億8,000万回/15%
インド:1億8,000万回/10%
イギリス:5,500万回/53%
ブラジル:5,200万回/17%
ドイツ:3,900万回/36%
トルコ:2,600万回/18%
イスラエル:1,100万回/63%
日本:560万回/3%

世界:14億3,000万回/9%
アジア:7億700万回/5%
北米:3億1,600万回/32%
ヨーロッパ:2億8,400万回/26%
EU:1億9,300万回/31%
南米:9,300万回/14%
アフリカ大陸:2,300万回/1%

2021年5月13日/ワシントンD.C.ホワイトハウスのローズガーデン、ジョー・バイデン大統領とカマラ・ハリス副大統領2(エヴァン・ヴッチ/AP通信)

テドロス事務局長は声明の中で、「今年発生するパンデミックは昨年より深刻な結果を招く可能性が高い」と警告した。「私たちは変異種の拡大とインドの感染状況を懸念しています。人口の多い低所得国のワクチン接種を後回しにすれば、より致命的な変異種が誕生するかもしれません...」

インドの医療従事者の多くはまだワクチンを接種しておらず、職員を失った病院は医療の提供に苦労している。

WHOは先日、インドで最初に確認されたB.1.617変異種を「懸念すべき変異種」に指定した。この変異種は世界で猛威を振るっているイギリスの変異種より感染力が強いことが一部の研究で示されている。

B.1.617変異種は30カ国以上に広がっている。

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