◎現在、世界で流行しているコロナウイルスの99%以上がデルタ株である。
2021年12月3日/南アフリカ、オレンジ・ファームのコロナワクチン接種センター(Getty Images/AFP通信/PAメディア)

12月3日、世界保健機関(WHO)の主任科学者ソミヤ・スワミナサン博士は声明で、新たなコロナ変異ウイルス「オミクロン株」の感染拡大に備えることが重要であり、慌てる必要はないと述べた。

スワミナサン博士は記者会見の中で、「現在の状況は1年前とは大きく異なっている」と強調した。

WHOと各国の保健機関のまとめによると、オミクロン株の感染報告は約40カ国に増加したものの、3日時点で死亡者は確認されていない。

オミクロン株がワクチンに耐性を持っているか、他の変異株より感染力が強いか、そしてデルタ株を上回るかどうかは不明である。

南アフリカの科学者が公表した初期データによると、オミクロン株は既存のワクチンに耐性を持っている可能性があると示唆されているが、データは不十分であり、はっきりしたことは分かっていない。

スワミナサン博士はロイターネクスト(ロイター通信主催の会議)の中で南アフリカのデータを引用し、「オミクロン株の感染力は非常に高く、他の変異種に置きかわる可能性がある」と述べた。またスワミナサン博士は現在、世界で流行しているコロナウイルスの99%以上がデルタ株だと強調した。

スワミナサン博士は、「世界の状況は1年前とは明らかに異なるため、パニックではなく準備と用心が必要」と述べた。

南アフリカの保健当局によると、3日の新規陽性者数は16,000件を超えたという。11月中旬の1週間の陽性者は1日あたり約200件だった。同国のジョー・ファーラ保健相は3日、ハウテン州を含むすべての州でオミクロン株が報告されていると述べた。

ハウテン州の医療当局によると、州内の新規陽性者の70%以上がオミクロン株に感染していたという。しかし、今のところ死亡者は確認されていない。

スワミナサン博士はオミクロン株が他の変異株に置きかわるかどうかを結論づけることは時期尚早であり、それが南アフリカで誕生したという証拠も今のところ確認されていないと述べた。南アフリカは11月24日にオミクロン株の存在を公表したが、オランダの保健当局は先日、11月19日付けのサンプルからオミクロン株を検出したと明らかにした。

一方、WHOの西太平洋地域事務局長である葛西 健 博士は、感染爆発を引き起こしたデルタ株に対する予防対策を維持すべきであると指摘した。「オミクロン株の感染拡大は世界を騒がせていますが、初期データは世界の感染予防対策を変える必要があるとは示唆していません」

WHO地域緊急局長のババタンデ・オロウォクレ博士も、「現在のデータはマスクの着用や社会的距離のルールを含む基本的な感染予防対策を引き続き維持することが重要と示唆している」と述べた。

オミクロン株は米国を含む主要国で確認されているが、南アフリカ以外の感染者数はデルタ株に比べるとごくわずかである。

スワミナサン博士は会見の中で既存のワクチンの重要性を強調し、ブースターショットはオミクロン株に対しても有効だとデータが示していると述べた。

またスワミナサン博士は、主要国の南アフリカに対する入国制限は不公平であり、「南アフリカの優れた科学がオミクロン株の特定につながった」と述べ、各国に対応をあらためるよう促した。「科学者は称賛ではなく罰せられています...」

WHOのテドロス・アダノム事務局長は先日、入国制限ではなくワクチン接種と医療機関の能力を強化することが重要と各国に呼びかけた。

2021年10月21日/南アフリカ、首都ヨハネスブルグの医療機関(Denis Farrell/AP通信)
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