◎金正恩 党総書記はタバコを吸いながら政府高官を叱責した。
2022年5月17日/北朝鮮、首都平壌で開かれた朝鮮労働党の会議、金正恩 党総書記(Korean Central News Agency/Korea News Service/AP通信)

北朝鮮の国営メディアは18日、コロナウイルスと思われる「原因不明の熱病」を発症した患者100万人以上が回復したと主張した。

朝鮮中央通信(KCNA)によると、最新の新規発熱患者は23万2880人で、新たに6人が死亡したという。これで4月下旬以降に死亡した発熱患者は62人、累計患者は170万人を超えた。また、69万1170人が隔離されているという。

KCNAは発熱患者と死者からコロナが検出されたかどうかを明らかにしていない。

外部の専門家はこの熱病をコロナと考えているが、北朝鮮にそれを確認する検査キットはない。

また世界で最も貧しくコロナワクチンも接種しておらず、医薬品、医療機器、医療施設に限りのある北で100万人以上がこれほど早く回復した理由も不明である。

KCNAは17日の報道で、「朝鮮人民軍は金正恩(Kim Jong Un)党総書記の人民に対する大きな愛を含んだ貴重な薬、”命の仙薬”を平壌に届けた」と伝えていたため、この仙薬とキムの愛が100万人以上を治癒させた可能性も否定できない。

しかし、ロイター通信は専門家のコメントを引用し、「北は単に熱が下がった人を検疫から解放しているだけかもしれない」と報じた。

世界保健機関(WHO)のテドロス(Tedros Adhanom Ghebreyesus)事務局長は17日、「北朝鮮に集団感染に関する詳細なデータを提示するよう求めているが、要求に応じようとしない」と明らかにした。

北はWHOなどが主導するコロナワクチン展開プログラムCOVAXの支援を拒否している。国連加盟国の中でワクチンを展開していないのは北朝鮮とエリトリアのみ。

テドロス氏は両国ともワクチン、医薬品、検査、技術サポートなど、WHOの申し出を拒否していると記者団に語った。「WHOは北朝鮮のさらなる感染拡大を深く憂慮しています...」

またテドロス氏は、「北朝鮮には重症化しやすい基礎疾患を持つ人が多いのではないか」と指摘した。

西側の専門家は北の医療体制、進行中の食料危機、コロナワクチン未展開を考えると、オミクロン株の感染拡大は大量死につながる可能性があると指摘している。

緊急事態対応を統括するライアン(Michael Ryan)氏は、「感染を抑制しないと新たな変異株が生まれる可能性があるものの、援助を拒否されれば、WHOは何もできない」と懸念を表明した。

北は韓国の支援を無視しているが、一部の専門家は中国の援助は喜んで受け入れるかもしれないと指摘している。

韓国政府は18日、一部メディアが「中国から北朝鮮に複数の貨物便が向かった」と報じた件について、事実かどうかは確認できなかったと述べた。

一方、KCNAは18日の報道で、労働党は17日に政治局会議を開き、自力で危機を乗り越えられるという考えで一致したという。

またキムは会議の中で、公衆衛生部門のパンデミック対応を非難し、「危機に対処する能力が欠如している」と叱責した。

KCNAによると、キムは公衆衛生部門の脆弱さを「怠慢、気のゆるみ、怠惰」と厳しく非難したとう。

キムはタバコを吸いながら政府高官を叱責し、「建国以来の大動乱」に本気で対応し、公衆衛生対策を徹底するよう国民に強く促し、薬局をフル稼働させ、必要な医薬品を朝鮮人民軍に届けさせるよう命じた。

またキムは生活必需品の供給体制を改善し、必要な努力を倍加するよう高官らに求めた。

KCNAによると、キムは24時間営業に移行した薬局への医薬品供給を加速させるために約3000人の軍医官を動員し、発熱患者を隔離する取り組みの追加要員として公衆衛生当局者、教師、医療を学ぶ学生を配備したという。

韓国の専門家によると、北に先進国レベルの医薬品、医療機器、集中治療室はないため、発熱患者は不衛生な避難所に押し込まれている可能性が高いという。

キムはパンデミック対策を講じつつ、経済目標達成に向けた努力も継続するよう求めている。

KCNAによると、大勢の労働者が農場、鉱山、発電所、建設現場に集まり、仕事を予定通りこなしているという。何を行っているかは明らかにしていない。

数十年にわたるキム家の不作為は国民をひどく疲弊させている。しかし、キムは国民が飢えているにもかかわらず核・ミサイル開発に貴重な予算をつぎ込み、挑発的な行動を繰り返している。

米韓当局者は、北は今月中に7回目の核実験を行う可能性があると指摘している。

KCNAは18日の報道で、キムの高官に対する「叱咤激励」を絶賛した。「党総書記は国家非常事態の下、活火山のように全党を奮い立たせ、国と国民の幸福を必ず守り、全世界に英雄朝鮮の強さと精神をもう一度示すことを確認した!!」

米シンクタンクの戦略国際問題研究所が運営するウェブサイト(Beyond Parallel)が16日に公表した分析結果によると、「豊渓里(プンゲリ)核実験場の衛星画像は同実験場の南部のまだ使われていないトンネルで改修作業が準備されていることを示しており、核実験を行う準備は近く完了すると推定できる」とした。

2022年5月17日/北朝鮮、平壌の民家で行われた公衆衛生の出前教育(Korean Central News Agency/Korea News Service/AP通信)
スポンサーリンク