◎朝鮮中央通信は17日、新たに26万9510人の発熱患者を確認し、6人が死亡したと報じた。
2022年5月16日に北朝鮮が公開した写真、朝鮮人民軍の兵士(Korean Central News Agency/Korea News Service/AP通信)

北朝鮮の国営メディアは17日、コロナウイルスとみられる「謎の熱病」の発熱患者が急増したと報告し、朝鮮人民軍が薬を届けるまで健康習慣を守るよう国民に呼びかけた。

朝鮮中央通信(KCNA)によると、新たに26万9510人の発熱患者を確認し、6人が死亡したという。これで4月下旬以降の累計発熱患者は148万人を超え、死者は56人となった。

KCNAは前日に続き、新規発熱患者と死者からコロナウイルスが検出されたかどうかを明らかにしなかった。

韓国を含む西側の専門家は北の医療体制、進行中の食料危機、コロナワクチン未展開を考えると、オミクロン株の感染拡大は大量死につながる可能性があると指摘している。

保健当局は発熱患者を医療機関や避難所に隔離しているとみられる。KCNAは17日時点で66万3910人が隔離されたと報じている。

一部の専門家は、「北の保健当局は金正恩の権威に傷をつけないために、死者数を過少報告している可能性がある」と疑っている。北の経済は米国主導の厳しい制裁、天災、国境封鎖でひどく疲弊しており、コロナの感染拡大は状況を悪化させ、キムの権威を傷つける可能性が高い。

コロナの新規陽性数と死者数にはタイムラグがあるため、死者は今後数週間で急増する恐れがある。

韓国のあるアナリストはSNSに、「当局者は処罰を恐れて患者と死者数を過少報告する。さらに、隔離を恐れる市民は症状を報告しない可能性が高い」と投稿している。

北朝鮮は12日に国内で初めてコロナ患者(オミクロン株BA.2)を確認したと報告した。

キムは発熱患者の急増を「建国以来の大動乱」と呼び、感染を抑えられなかった公衆衛生当局を叱責し、非常事態を宣言した。

しかし、キムは謎の熱病を警戒する一方、経済目標は達成されるべきと主張し、農業、工業、建設業界で働く人々の行動は制限しないと示唆している。

一方、KCNAは朝鮮人民軍の医療部隊が24時間営業を始めた首都平壌の薬局に薬を届け、支援を開始したと報じた。

またKCNAは、「軍部隊は党総書記の人民に対する大きな愛を含んだ貴重な薬、命の仙薬を平壌の薬局に届けた」と報じている。

「命の仙薬」の詳細は明らかにされていない。

KCNAは健康と衛生を促進する公共キャンペーンも展開しており、視聴者にマスクを頻繁に交換し、自宅でも家族と少なくとも1m以上距離を保つよう促すテレビアニメを放送している。

労働新聞は17日、他国のパンデミック対応に関する記事をいくつか掲載した。ファイザーワクチンとコロナ治療薬「ニルマトレルビル錠」についても紹介している。

しかし労働新聞は、「こうした薬はコストが高く、新種のウイルスには効果が低い可能性があり、今後も強力なパンデミック対策が必要」と主張した。

北は謎の熱病が広がったことを認めたが、他国の援助は「キムのプライドを傷つける」可能性が高いため、受け入れないと思われる。

韓国の尹錫悦(Yoon Suk-yeol)大統領はコロナワクチン、医薬品、医療スタッフの派遣を公式に申し出たが、北はこれを無視しているとみられる。

韓国の専門家は、「キムが先週の会議で中国のゼロコロナ対策を称賛したことは、中国の支援を望んでいることを示唆している」と指摘している。

2022年5月16日/北朝鮮、首都平壌、封鎖地域に野菜を運ぶ八百屋の従業員(Jon Chol Jin/AP通信)
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