◎市内で陽性診断を受けた症状のある患者は病院、無症状者は隔離施設に入る必要があり、自宅待機は認められていない。
2022年2月26日/香港のカリタス医療センター、屋外で治療を受けるコロナ患者(Kin Cheung/AP通信)

世界がコロナウイルスとの共存に向けた取り組みを進める中、中国本土の「ゼロコロナ政策」を追及する香港が危機的状況に陥っている。

香港は昨年、長期間にわたってコロナ患者を報告せず、世界で最も安全な地域のひとつと呼ばれた。しかし、オミクロン株の感染拡大を許した結果、死亡率は世界で最も高くなり、ゼロコロナ政策の限界を世界に見せつけることになった。

保健当局のまとめによると、1月1日~3月10日までの死亡者は3,231人に達したという。昨年末以前の死亡者はわずか213人だった。

半自治領の香港を事実上支配している中国共産党は、コロナを封じ込めるために必要なことは何でもしなければならないと香港政府に圧力をかけている。

中国の習近平 国家主席は先月、「香港政府は動員可能なすべての力と資源を投じ、市民の安全と健康、香港社会全体の安定を確保するために必要なすべての措置を取らなければならない」と異例の警告を発した。

林鄭 月娥(りんてい げつが)行政長官は本土から派遣された専門家や医療従事者、仮設隔離施設の建設チームなどを歓迎し、ゼロコロナを追及すると約束している。

香港は2021年初頭からワクチンの展開を開始したが、進行中の第5波が始まった時点の80歳以上の完全接種率は30%にとどまっていた。当局によると、今年に入ってからの死者の大半はワクチン未接種の高齢者だという。

香港政府の医療顧問を務めるフン博士はAP通信の取材に対し、「オミクロン株が流行する以前はほとんど陽性者が出なかったため、多くの高齢者がワクチンを接種しなくても大丈夫と思ってしまった」と述べた。

連日コロナ関連の記者会見を行っていた政府のメッセージも混乱を招き、パニックに陥った一部の市民が食料品の買い占めに走る事態に発展した。

香港は世界でも最も厳しい国境管理を維持しており、米国を含む8カ国からの入国はいまだに禁止されている。

不動産開発で財を成し、香港政府の経済顧問を務めるアラン・ゼマン氏はAP通信の取材に対し、「街はゴーストタウンの様相を呈している」と語った。「香港から喧騒が消えました...」

香港政府の厳しい政策はアジアの金融ハブの流出に拍車をかけているように見える。当局のデータによると、先月1カ月の出国者は70,000人を超えたという。

ゼマン氏は、「銀行員や金融業界関係者の出国が多いように思える」と述べた。「国境封鎖は観光や飲食業界だけでなく、あらゆるビジネスに影響を与えています。金融業界の頭脳の流出は頭痛の種であり、香港の将来にかかわる深刻な問題です...」

またゼマン氏は、「金融ハブ香港の名声を取り戻す必要がある」と述べ、国境開放を検討すべきと提案した。「私は政府に香港の国際性に目を向け、長期的な視点で問題に対処してほしいと思っています」

しかし、香港は今のところゼロコロナを維持する見込みで、中国共産党が方針変更を許すかどうかも分からない。

中国も現在、感染者の急増と戦っており、1日の新規陽性は2年ぶりの高水準に達した。冬季五輪とパラ五輪は厳しい感染予防対策のおかげで何とか開催にこぎつけることができた。

しかし、多くの専門家が中国も最終的にはコロナとの共存に向けた取り組みを進めることになると指摘している。

ゼマン氏は、「残念ながら、どの省や都市も一度は爆発的な感染拡大を経験しなければならないと思う」と述べた。「今、私たちにできることは、できるだけ多くの人にワクチンを接種してもらい、共存に向けた準備を進めることです...」

習近平 国家主席は7月に香港返還25周年を記念する式典に出席するために、香港を訪問する予定である。

一方、林鄭 月娥 行政長官は9日、3月中に予定していた全住民対象の一斉PCR検査を保留すると発表した。同氏は会見の中で、「一斉検査や隔離施設の準備を進めているが、一斉検査の優先順位は低く、いつ実施するかは専門家の意見を踏まえて決めることになる」と説明した。

市内の医療機関の病床使用率は軒並み100%を超え、一部の病院は一般病棟をコロナ専用に変更し、患者を受けている。

市内で陽性診断を受けた症状のある患者は病院、無症状者は隔離施設に入る必要があり、自宅待機は認められていない。

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