◎最近の10万人あたりの新規陽性者数は2,800人を上回り、世界最悪レベルに達した。
2021年8月20日/フランス領ポリネシア、タヒチ島のコロナ患者と医療従事者(Esther Cuneo/AP通信)

フランスの現地メディアによると、フランス領ポリネシアで進行中の爆発的な感染拡大は有人島の医療機関を壊滅させ、遺体安置所はコロナ患者の遺体に押しつぶされたという。

同国の人口は約28万人。118ある島のうち有人島は67で、総面積は約4,200㎢。コロナ患者を収容できる医療機関は主要な島にしかなく、ベッド、医療用酸素、集中治療室(ICU)、遺体安置所の数は限られている。

同国の累計感染者は人口の約7分の1にあたる約40,000人、累計死亡者は480人。最近の10万人あたりの新規陽性者数は2,800人を上回り、世界最悪レベルに達した。

現地メディアによると、地元の保健当局は患者のケアとワクチン接種に医療スタッフを集中させているため、8月末頃からコロナ検査は行っていないという。

同国の累計死亡者480人の大半が過去1カ月の間に死亡した。専門家はワクチンに対する懐疑論、肥満率の高さ、糖尿病患者の多さ、そして今年の夏に一部の観光業を再開したことが爆発的な感染拡大を引き起こしたと指摘している。

フランスの中央政府は数百人の医療従事者をカリブ海地域に派遣したが、ポリネシアに派遣された看護師は10人だけだった。ポリネシアの当局者によると、中央政府は今週、看護師100人の追加派遣を約束したという。

タヒチ島の総合病院で働く救急隊長のトニー・テクアタオア氏は地元メディアの取材に対し、「私たちには助けが必要です」と訴えた。「ベッド、酸素、遺体安置所、職員、全てが不足しています...」

病院当局はコロナ専用病棟を開設し、全島の医療スタッフを徴用している。地方自治体は非常事態を宣言し、医療機器とスタッフの徴用を後押しした。

地方自治体は最初に夜間外出禁止令を出し、次に地域限定ロックダウンを発令し、必要不可欠な店舗以外は全て閉鎖された。一部の地区ではワクチン接種の義務化を決めている。

同国のワクチン接種率はゆっくりと増加しているが、接種を終えた人は9月3日時点で人口の約38%、少なくとも1回接種した人は50%にとどまっている。集中治療室にいる患者の90%以上、死亡者の大半はワクチン未接種者だった。

中央政府のセバスチャン・ルコルヌ海外大臣は声明で、「コロナワクチンの偽情報が島全体に広がり、ワクチン懐疑論を後押しした」と非難し、ソーシャルメディアなどで共有されている偽情報を拒否するよう全てのコミュニティに訴えた。

先住民族の中央政府に対する不信感はポリネシアの環礁で核実験が行われて以来脈々と受け継がれており、多くの島民が中央政府のワクチン強制接種とパスポート制度を非難していた。

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