◎世界保健機関(WHO)は、「EU加盟国で生産されたコロナワクチンの輸出に規制を設ける」と発表したEU指導部を厳しく非難した。
◎WHOのテドロス・アダノム事務局長は先日の世界経済フォーラムの中で、「ワクチンナショナリズムは世界の回復を遅らせ、その代償は最貧国の市民と経済が払うことになる」と警告した。
2021年1月30日 AP通信/北アイルランド、南ベルファスト

1月30日、世界保健機関(WHO)は、「EU加盟国で生産されたコロナワクチンの輸出に規制を設ける」と発表したEU指導部を厳しく非難した。

EUはアストラゼネカワクチンの供給遅れに憤慨し、この規制を導入した。ロイター通信によると、アストラゼネカ社は生産上の問題を抱えており、3月末までにEUに供給できるワクチンは3,100万回分にとどまるという。EU当局者は取材に対し、「契約時の予定数量は8,000万回だった」と語った。

WHOのマリアンジェラ・シマオ事務総長補はEUの規制について、「ワクチンの奪い合いに発展しかねない問題であり、とても心配している」と述べた。

テドロス・アダノム事務局長も先日の世界経済フォーラムの中で、「ワクチンナショナリズムは世界の回復を遅らせ、その代償は最貧国の市民と経済が払うことになる」と警告した。

テドロス・アダノム事務局長:
「ワクチンの貯蔵は世界的な不平等をさらに拡大する道徳的失敗であり、コロナウイルスの炎を燃やし続け、世界経済の回復を遅らせるだろう」

EUはアストラゼネカワクチンの供給遅れおよび、「イギリスが優遇されている」ことに異議を唱え、ブロック内で生産されたワクチンの輸出を管理すると発表した。

EU指導部はこれを「透明性メカニズム」と呼び、ワクチンの輸出を行う企業がEUとの契約を尊重しない場合、ワクチンの輸出を拒否できることになった。

欧州委員会は規制について、「市民の保護と安全が最優先事項であり、直面している課題を克服するためには行動するしかない」と述べた。

この規制はアメリカ、イギリス、カナダ、オーストラリアなど約100ヵ国に影響を与えるが、その他の貧しい国は除外される。

これに対し、イギリス政府は29日の声明で、「EUがアイルランドから北アイルランドへの輸出に規制を設けた」と猛反発した。

EUーUK通商協定の一環として、双方はアイルランド島の和平プロセスを保護するために設計された地域向けの特別な取り決めに合意した。これにより、アイルランド(EU)と北アイルランド間だけは商品の自由な行き来を保証されている。

欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長はボリス・ジョンソン英首相との電話会談後、声明で、「規制の対象はワクチンのみ。EUーUK通商協定が制限されることはない」と反論した。

イギリスのマイケル・ゴーヴ内閣府担当大臣は、「EUが加盟国で生産されたコロナワクチンの輸出規則を強化するという間違いに対処し、ワクチンが計画通りに供給されることを期待しています」と述べた。

マイケル・ゴーヴ内閣府担当大臣:
「フォン・デア・ライエン委員長はイギリスの立場を正確に理解していると述べました。協定が尊重され、ワクチンが引き続き供給されることを期待しています」

EPA/ボリビア共和国

イギリスはアストラゼネカ、ファイザー、モデルナ社と契約を結び、ワクチン接種を加速させている。一方、EU加盟国はスタートで大きくつまずき、市民の不満と非難に直面している。

イングランドとスウェーデンに製造工場を持つアストラゼネカ社は、生産能力の制限の問題で当初の予想よりワクチン供給が遅れているとEUに説明し、27か国の首脳は懸念を表明した。

アストラゼネカ社のパスカル・ソリオCEOは声明で、「EUとの契約におけるワクチンの供給数はあくまで目標だった」と主張し、契約に違反したというEUの発言は誤りだと反論した。

しかし、欧州委員会は、EU向けのワクチンがイギリスに転用された可能性があると疑っている。EUはイギリスのサイトに保管されているアストラゼネカワクチンをEUに提供するよう求めている。

EUの規制はスウェーデンで製造されているアストラゼネカワクチンだけでなく、ベルギーで製造されているファイザーワクチンの供給を妨げる可能性もある。

ドイツのイェンス・シュパーン保健相は地元メディアのインタビューの中で、「EUはアストラゼネカワクチンを公平に受け取らなければならない」と述べた。

イェンス・シュパーン保健相:
「ワクチンはどこかを優先するのではなく、公平に配分されるべきだ」

アストラゼネカ社は工場の生産能力の問題で供給が遅れたと言った。私たちは、他の顧客もEUと同じようにワクチン不足に悩まされていることを確認したいと思っている

EUの規制から除外される国と団体(92ヵ国/団体)は次の通り。
・アフリカ大陸
・COVAXファシリティ
・スイス
・バルカン半島西部
・ノルウェー
・地中海諸国など

WHOの広報担当、マーガレット・ハリス氏は30日の声明で、ワクチンは世界中の脆弱なグループと医療従事者に優先的に配布すべきだと語った。

ハリス氏は、「主要経済国は医療従事者や高齢者などの優先グループへの接種が終わり次第、他の国の予防接種を支援してほしい」と述べた。

マーガレット・ハリス氏:
「私たちは全ての国が同じように行動すべきだと考えています。優先グループ以外への接種は待ってください。自分の国だけ接種を急ぐのではなく、同じように行動しなければコロナを止めることはできません」

ハリス氏によると、上位10ヵ国の予防接種数は世界の予防接種総数の95%を占めるという。

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