◎オーストラリアの北東約4,800kmに位置するキリバス共和国はコロナが拡大し始めた2020年4月に国境を閉鎖した。
2017年2月10日/キリバス共和国(Getty Images/AFP通信)

2年近くコロナウイルスの侵入を防いできた太平洋諸島の楽園のひとつが危機に瀕している。

オーストラリアの北東約4,800kmに位置するキリバス共和国はコロナが拡大し始めた2020年4月に国境を閉鎖した。

キリバス政府は今月、チャーター便の運航を再開し、帰国を待ち望んでいた国民54人の入国を許可した。地元メディアによると、54人の大半が海外でモルモン教の布教活動を行っていた宣教師だという。

当局は54人に搭乗前のワクチン接種と入国後の検疫を命じ、さらにフィジーの空港でも3回PCR検査を行っていたが、オミクロン株の侵入を防ぐことはできなかった。

1月22日の報道によると、乗客54人のうち36人が入国後の検査で陽性を示し、国内の陽性数は1月28日時点で180件を超えたという。政府は22日に非常事態を宣言し、国民に自宅にとどまるよう促し、私的な集まりを含む集会を禁止した。

ニュージーランドのオークランド大学のワクチン専門家であるヘレン・ハリス博士はAP通信のインタビューの中で、「オミクロン株の侵入を防ぐことは難しい」と述べた。「オミクロン株は防げないと割り切り、ワクチン接種を加速させることが重要です...」

Our World in Dataによると、キリバスのワクチン完全接種率は人口の約33%、少なくとも1回接種した人は約59%。

キリバスを含む太平洋諸島の島国の医療システムは極めて脆弱で、オミクロン株の感染拡大はコロナ以外の理由で入院している患者に深刻な影響を与える可能性がある。

NZLに拠点を置く先住民太平洋島嶼部のアピ・タレマイトガ議長は28日、「キリバスには集中治療室が2つしかなく、重症化した患者の多くがフィジーまたはNZLの医療に頼っている」と述べ、懸念を表明した。

タレマイトガ議長は声明の中で、「キリバスでコロナ患者が複数確認されたと聞いた時、”主よ、お助けください”と心の底から思った」と述べた。「さらに感染が広がれば、キリバスの医療システムは限界を迎えるかもしれません...」

米国のユタ州に本拠を置く末日聖徒イエス・キリスト教会はキリバスの宣教師を含む約26,000人の宣教師にワクチン接種を強く勧め、母国以外で奉仕する宣教師には必ず接種するよう求めていた。

教会のスポークスマンはAP通信のインタビューの中で、「キリバスに帰国した宣教師は地元の保健当局と協力し、検疫が終わるまで布教活動から離れます」と述べた。

キリバス以外の島国でも懸念が高まっている。

海底火山の噴火に見舞われたトンガは昨年10月、アフリカでの奉仕を終えた宣教師が帰国した際、検査で陽性と診断された。トンガの陽性は今のところこの1件のみで、アジアの主要国はトンガ政府の陽性を受け、感染予防対策を徹底しながら支援作業にあたっている。

サモアでは先週、オーストラリア発の便で陽性者が15人確認された。

<キリバスの基本情報>
・人口約12万人
・主要メディア媒体はラジオ
・食料を含む物資は輸入に頼っている
・医師は少なく、一部の離島にはひとりもいない

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