◎世界で進行中の物資はコロナ禍からの回復を目指す国の経済に深刻な影響を与えている。
中国:石炭と紙
中国では過去数十年で最悪と呼ばれる物資の不足が内需と企業に深刻な影響を与えている。
主要メディアは石炭、紙、食品、繊維、おもちゃ、アイフォンのチップなど、あらゆる物資が不足していると警告した。
物資不足の問題は20を超える省で進行中の電力危機に起因している。
中国は電力供給の50%以上を石炭火力に依存しており、石炭の不足と取引価格の上昇は電力会社の経営を圧迫した。電力会社はコストを電気料金で賄うことができず、発電量を減らしている。
また、共産党指導部は厳しい気候変動対策目標を各省に課しており、目標値を達成できていない省は電力会社に化石燃料の消費を控えるよう圧力をかけた。
中国経済はコロナ禍から立ち直りつつあるが、電力会社は需要の増大に対応できず、活動を本格化させたい企業は計画停電の影響で生産活動を制限せざるを得なくなった。
米国:おもちゃとトイレットペーパー
ホワイトハウスは先週、「国民は今年、クリスマスプレゼントの入手に苦労するかもしれない」と警告した。
米国民は現在、トイレットペーパー、ペットボトル飲料、衣類、ペットフードなどの不足に直面している。
これらの物資不足は、西海岸の貿易拠点であるカリフォルニア州ロサンゼルスとロングビーチで進行中のタンカー渋滞に起因している。
先月のある日、73隻の巨大タンカーがロサンゼルス港の沖合で待機を余儀なくされた。結果、ホワイトハウスは港の運用を24時間体制に拡大した。
小売業者は消費者の需要に対応するために物資の補充を急いだが、港の輸送システムはタンカーの処理に対応できなかった。
タンカーに積み込まれたペットボトル飲料やクリスマスプレゼントは港の前で待機を余儀なくされ、小売業者を困惑させた。
国民の支出増は経済回復を後押しするが、物資の輸送に必要なタンカー、鉄道、トラック業界の不調はホワイトハウスの頭を悩ませている。
インド:車と半導体
インド最大の自動車メーカーであるマルチ・スズキ・インディアの生産台数は今年、半導体チップの世界的な不足を受け急落した。
日本や韓国などの主要な半導体メーカーはコロナウイルスの影響で操業停止に追い込まれ、その後の需要回復に対応できず、世界的な半導体不足を引き起こした。
スマートフォンやコンピューターなどに使用されている半導体の需要は、5Gの導入などの影響でパンデミック前から高まっていた。さらに、コロナ禍の影響で在宅勤務が急増したことを受け、スマートフォンやコンピューターの需要は激増し、半導体メーカーを困惑させた。
インドの物資不足は電力危機の影響でさらに悪化すると予想されている。
インドは中国と同じく、電力供給の多くを石炭火力に依存している。電力会社は石炭不足と価格上昇の影響でコロナ感染収束後の需要の増加に対応できなかった。
インドの専門家は、石炭不足はセメント、鋼材、建設など、あらゆる業界に波及すると警告した。「電力会社は石炭価格の上昇を電気料金で補填します。影響は業界だけでなく、国内の低所得者層数億人の生活にも深刻な影響を与えるでしょう」
ブラジル:水とコーヒー
過去90年で最悪の干ばつに直面しているブラジルのコーヒー農家は、水不足の影響をモロに受けた。
さらに、コーヒーの生産者は輸送コストの増加とコンテナ不足に悩まされ、世界のコーヒー供給に深刻な影響を与えている。
ブラジルは世界最大のコーヒー生産国および輸出国であり、コストの上昇は世界のカフェに波及すると見込まれている。
さらに、隣国パラグアイとの国境にまたがるイタイプ水力発電ダムの貯水率は危険なレベルまで低下し、電力会社と政府の首を締めあげた。
水力発電はブラジルの総発電量の約3分の2を占めるため、イタイプダムの渇水は深刻な電力不足を引き起こす可能性がある。ジャイール・ボルソナロ大統領は先月、国内のダムの貯水量は限界に達していると警告し、国民に照明を消し、冷たいシャワーを浴び、健康な者はエレベーターの使用を控えるよう求めた。
ナイジェリア:調理用ガス
ナイジェリアでは調理に使用される液化天然ガス(LNG)が不足している。
ナイジェリアはアフリカ最大のLNG埋蔵量を誇るが、それでも混乱に対処することはできなかった。
地元メディアによると、ナイジェリアのLNG取引価格は今年4月から7月の間に約60%上昇し、中小零細企業、飲食店、人口の大多数を占める中低所得者層を打ち負かした。
結果、主婦はガス契約の更新を諦め、薪や木炭の需要が急増した。
LNGの価格は石炭と同じく、世界中で急騰している。
レバノン:電気と水と医薬品
中東レバノンでは電気、水、医薬品、燃料、その他様々な物資が大量に不足している。
過去150年で世界最悪と呼ばれるレバノンの経済危機は人口の約75%を貧困に追いやり、爆発的なインフレは銀行の預金を紙屑に変え、大規模な抗議デモを引き起こした。
レバノンの経済はパンデミック前から問題を抱えていたが、コロナの感染拡大と昨年8月のベイルート港の爆発事故で事態は劇的に悪化した。
レバノンの国営電力会社は経済危機と燃料不足の影響で1日20~22時間の計画停電を実施している。結果、国民は発電機やロウソクに頼らざるを得なくなった。
レバノンの国連人道コーディネーターは8月、レバノンの何百万人もの人々が医療と水へのアクセスを遮断されていると警告した。政府は資金不足の影響で物資を購入できず、厳しい計画停電は水道事業者を含むインフラを担う企業の活動に深刻な影響を与えている。