崖っぷちのイギリス

イギリス政府顧問科学者を務めるジェレミー・ファラー氏は、7月からパブやレストランが再開することに対し懸念を表明。コロナウイルスの第二波発生を食い止めるためには、ホリデーシーズンも懸命に努力しなければならないと警告した。

プリティ・パテル内務長官は、経済活動再開に伴い、第二波のリスクを考慮したうえで国民は良心的に行動しなければならないと述べた。また、レスター市の感染状況悪化と局地的な封鎖の可能性についても、「十分あり得る」とコメントした。

コロナウイルスが冬に大流行するという懸念は世界中に広まっている。各国は経済活動再開を視野に入れつつも、感染予防対策を抜かりなく実施し、来たるべき時に備えなければならない。

ファラー氏はBBCの取材に対し、「ウイルスは冬に猛攻を仕掛けてくる可能性が高い。また、現時点のイギリス国内の感染状況は非常に不安定であり、ケースの増加も予想されている。慎重に対応しなければならない」と述べた。

ボリス・ジョンソン首相は経済活動再開に舵を切り、ロックダウンの大幅な緩和を決定した。7月4日からパブ、レストラン、ホテル、その他多くの商業施設、飲食店などが営業を再開する予定である。

スコットランドでは、夏のかきいれ時を迎えるビアガーデンは7月6日から、ビアホールも7月15日から営業を再開する予定。北アイルランドは7月3日からパブやレストランを再開する。

一方、ウェールズ政府はホスピタリティ産業の段階的な再開を協議しているもよう。ただし、具体的な日付はまだ明らかにしていない。

イギリスの新規感染者はロックダウンおよび感染予防対策が功を奏し、右肩下がりで減少し続けてきた。ジョンズ・ホプキンズ大学のまとめによると、28日時点の累計感染者数は約31万人、43,550人の死亡が確認された。なお、同日24時間当たりの新規感染者は890人、死亡者は36人だった。

先週、ロンドン、マンチェスター、カーディフなどで違法なストリートパーティ(大規模集会)が開催され、各地のビーチは大混雑した。さらにプレミアリーグを30年ぶりに制したリバプールFCファンが数千人規模の乱痴気騒ぎを起こすなど、国内のあちこちで「」なシチュエーションが発生しつつある。

パテル内務長官は経済回復を強力に後押しすると強調。ただし、政府の発表するガイダンスに従い、社会的距離のルールを遵守しなければならない、と付け加えた。

ウェスト・ミッドランズ警察機構の犯罪担当委員を務めるデビッド・ジェイミソン氏はBBCの取材に対し、「コロナウイルスを抑え込む気があるのなら、緩和は段階的かつ慎重に行わねばならない。ホリデーシーズンを迎えると、通りやレストランに人が集まり、ビーチは大混雑するだろう。この時期にいきなりパブを開放するなど狂気の沙汰だ」と述べた。

先週、ジェイミソン氏は警察大臣のキット・モルトハウス氏と会談した際、政府のロックダウン緩和措置に懸念を表明したが、受け入れられなかったという。

内務省は国民が社会的距離と感染予防対策を遵守すると”信じており”、無秩序な行動には責任が伴うと述べている。

感染状況の悪化が懸念されるレスター市のピーター・ソウルズビー市長は記者団に対し、「局地的なロックダウンを実施する予定は当面ない。データを分析したうえでしかるべき対応をとる」と説明した。

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断崖から飛び降りたアメリカ

28日、アメリカの累計感染者数は250万人を超え、128,000人以上の死亡が確認された。

第一波を抑え込む前にいち早くロックダウンを緩和した南部フロリダ州とテキサス州では、24時間当たりの新規感染者数が激増している。

フロリダ州では、26日金曜日に9,000人以上の新規感染者を記録、翌土曜日も9,500人を超えた。大規模クラスターに伴う感染再拡大を受け、州当局はビジネス再開に待ったをかけた。

テキサス州も同様。経済活動にのみ主眼を置いた性急なロックダウン緩和は失敗し、感染拡大を加速させてしまった。ホワイトハウスのコロナウイルス対策チーム最高顧問のアンソニー・ファウチ医師は、「我々は、まだ第一波の真っただ中にいる。まずは現状を打破しなければならない」と述べた。

ファウチ医師は、ロックダウン緩和のタイミングを「早すぎた」と指摘。また、一部の国民が政府のガイダンスに従わず、社会的距離や防護具を正しく着用できていないことも感染再拡大につながったと付け加えた。

コロナウイルス対策チームを統括するマイク・ペンス副大統領は、今週予定されていたフロリダおよびアリゾナの大統領選挙キャンペーンを中止すると発表した。

チームトランプに所蔵する選挙運動員(匿名)はロイター通信の取材に対し、「ペンス大統領は感染拡大を警戒している」と語った。

一方、オクラホマ州タルサで開催された選挙キャンペーンで新たな問題が指摘されている。ワシントン・ポストによると、チームトランプはアリーナのシート席に明示された社会的距離を確保するステッカーの除去を命令。スタンドを超満員にしたい、と考えたようだ。

フロリダ州の累計感染者数は132,000人を超え、これまでに3,300人以上が死亡した。州当局は、経済活動を再開したことで南部および西部地域の人々がビーチや飲食店などに殺到、クラスターの発生につながったと説明した。

フロリダ州のロン・デサンティス州知事は、州内の酒場に対し、屋内でのアルコール提供を停止するよう命じた。

南国のリゾート地、マイアミのフランシス・スアレズ市長はBBCの取材に対し、「医療機関の負担が激増している。現在、マスク非着用者に対しペナルティを科しているが、新たな感染予防ルールを検討中であり、近く施行されるだろう」と述べた。

トランプ大統領のお膝元、南部テキサス州でも1週間当たりの感染者数が過去最高を大幅に更新した。この結果を受けグレッグ・アボット共和党州知事は、バーやレストランへの屋内入場制限(50%以下)を指示した。

アボット共和党州知事はABCニュース系列のKIVA.comに出演し、「もし過去に戻れるとしたら、まずバーの再開を遅らせるだろう。人々は屋内の密閉空間で向かい合い、酒を飲み、大声で話し、社会的距離など気にせず大人数で盛り上がる。コロナウイルスが蔓延するのは当然だ」と述べた。

アメリカ疾病予防管理センター(CDC)は、国内の潜在感染者数を2,000万人以上と推定、無症状者がPCR検査を受けない限り、感染は拡大し続けるだろうと警告した。

CDCのロバート・レッドフィールド博士は、南西部に住む18歳~34歳の陽性率が高いと指摘。積極的にPCR検査を受けて欲しいと要請した。

26日、ホワイトハウスでのコロナウイルス説明会においてマイク・ペンス副大統領は、「トランプ政権は経済活動完全復活の達成に向け、驚くべき進歩を遂げている。失業率改善と株価上昇、小売売上の激増が確かな証拠だ」と述べた。

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