第二波と再ロックダウン

スペインの第二波が加速している。

2月、コロナウイルスはイタリアを飲み込んだ後、近隣諸国に襲いかかった。

スペインの感染者数と死者数は記録的な勢いで増加した。しかし、厳格なロックダウンによりパンデミックをある程度抑え込むことに成功し、少しずつではあるが経済活動を再開させていた。

9月、スペインの集中治療室(ICU)は再び忙しくなり、処置を必要とする患者で溢れている。

医療従事者、科学者、そしてEUの指導者たちが予期した通り、第二波は予想よりも早くヨーロッパに到来した。

首都マドリードでは、3月の大混乱に近いレベルのパンデミックが発生、医師と看護師は休む間もなく働き、ひどく消耗している。そして、当局の対応は一足も二足も遅かった

マドリード州フエンラブラダ郊外の公立病院で働くカルロス・ベラヨス医師はABCの取材に対し、「3月と同じ規模の感染状況になっているが、最初の混乱に比べると動きは明らかに鈍い。ただし、院内のベッドがコロナウイルス患者に占用されていることは間違いない」と語った。

現在、スペイン国内では1,273人のコロナウイルス患者がICUで何らかの治療を受けており、そのうち359人が首都マドリードの病院患者である。

ジョンズ・ホプキンズ大学のまとめによると、同国の累計感染者数は61万人超、これまでに30,000人以上の死亡が確認されている。なお、24時間あたり新規陽性件数は右肩上がりで上昇、9月11日には過去最高の12,183件を記録した。

ベラヨス医師は病院の管理者に対し、「一部のICU病棟が9月後半にパンクする可能性があることを伝えた」と述べた。

スペインの医療従事者は第一波のストレスから少しずつ回復している最中だった。医療専門家によると、病院の管理者は3月の拡大シフト体制に戻ることを避けたいと考え、半年前より動きが鈍いと警告した。

カルロス・ベラヨス医師:
「我々は3月に医療システムの崩壊を経験した。コロナウイルスはわずか数週間でICUを破壊し、医師や看護師は眠れない日々を過ごした」

「今、病院にはまだ余力がある。しかし、パンデミックは再び制御不能なレベルに達する可能性が高い。我々は心配し、警戒を怠らず、来たるべき時に備えねばならない」

スペインの医療従事者は第一波の最前線で戦い、感染者の治療・処置方法など、多くの教訓を得た。しかし、人口660万人のマドリード地域の手術室は応急ICUに切り替わり、その他の疾患に対処する外科手術は延期され、各病院のマンパワーは限界に達しつつある

先週、当局は記者団に対し、まだ患者を受け入れる余裕があると述べた。しかし、ベラヨス医師などの最前線で働く医療従事者たちは、「のんびりしている余裕などない」と警告している。

9月16日、当局は記者団に対し、以下のように述べた。

スペイン当局:
「来週、部分的なロックダウンを含むより厳しい措置に移行する可能性がある

「部分的なロックダウンは、感染が急速に広がっている都市部に限定されるだろう」

人口20万人弱のマドリード州フエンラブラダも対象に含まれる可能性が高い。なお、マドリード南部の労働者階級地区の感染率は、8月から着実に高まっている。

労働者階級地区の居住者たちは、小さなアパートや集合住宅で生活している。また、バスなどの公共交通機関は特に混雑しやすく、密な状況に陥りやすい。

現在のホットスポットのひとつ、マドリード州ビリャ・デ・バリェカス地区(人口:約65,000人)で生活するアンゲラ・カントス氏はABCの取材に対し、以下のように述べた。

アンゲラ・カントス氏:
「この地区がロックダウンされれば、マドリードの機能はマヒするだろう」

「この地区の住人たちは、他の都市部や町で料理や掃除を行っている。ロックダウンされれば、数万人が移動を制限され、通勤できなくなる。誰が彼らの代わりに料理や掃除をするのか?」

第二波は来る

マドリード地区の副保険局長を務めるアントニオ・サパテロ博士は記者団に対し、以下のように述べた。

アントニオ・サパテロ博士:
「マドリードは秋のインフルエンザ時季までにコロナウイルスの感染状況を平準化させたいと考えている」

「大規模な集会、バーやパブの営業が解禁され、社会的距離の確保やマスク着用を忘れている人が多い

「PCR検査で陽性判定を受けた約90人が、自己隔離要請を無視していた。今後は、警察が強制的に自己隔離を遵守させる。陽性と診断された無症状患者は、外出を控えねばならない」

当局はPCR検査の体制を拡充しており、それが新規感染者数の増加につながっていると主張している。なお、保健センターによると、新規感染者の半数以上は無症状だという。

【スペイン国内の病院の状況】

・国内のベッドの8.5%がコロナウイルス患者に充てられている
・首都マドリードでは、約20%がコロナウイルス関連の患者に充てられている
・地方都市のICU、コロナウイルス患者が38%
・地方都市の収容率、一部の病院では90%超えている

首都マドリードでは、エキシビジョンセンターに再び仮設病院のベッド1,500床が設置され、サパテロ博士が責任者に任命された。

マドリードの地方当局は5,000万ユーロ(約62億円)を投じて、10月末までに1,000床を超える大規模なコロナウイルス専用病院を感染させる予定である。

医療従事者たちは、病院での業務やPCR検査だけでなく、患者のプライマリ・ケアに多くの時間を費やしている。

市の保健センターで働くオラヤ・ムニョス氏はABCの取材に対し、以下のように述べた。

オラヤ・ムニョス氏:
「コロナウイルス患者が爆発的に増加した結果、患者のケアにマンパワーが追い付かなくなった

ムニョス氏は、炎天下の中坂道を歩き、2人の高齢患者の自宅で体調等をチェックした。

その後、保健センターに戻り、40名以上の予約患者と面談を行う。一人当たりの面談時間が6分を超えるとその日の予約に対応できなくなるため、常に時計をチェックしなければならない。

ムニョス氏は、「忙しくて目が回る。私の同僚は皆同じ状況にある。仕事を振り分けるなどあり得ないし、これ以上仕事を与えられたら対処できない」と語った。

集中治療専門家協会の広報担当を務めるマルティン・デルガド博士は、「プライマリ・ケアの崩壊は無症状患者のサポートや他の疾患へのサービス低下につながる可能性が高い」と述べた。

マルティン・デルガド博士:
「当局はコロナ禍のプライマリ・ケアの在り方、進め方を提示しなければならない」

「医療従事者は指針を必要としている。3月と4月の過負荷は、世界も同じ状況だから、という理由で例外的に認められた。しかし、恒常業務(プライマリ・ケア)の負担が増加し続ける今、医療従事者のストレスが慢性化していることを忘れてはいけない

「最前線で戦う医療従事者は疲れ果てている。今、3月と同規模のパンデミックが発生すれば、彼らは倒れてしまう」

【コロナウイルスの感染状況/9月16日時点】

累計感染者累計死者新規感染者
(直近)
世界2,970万人93.7万人233,014人
アメリカ670万人19.9万人34,364人
インド502万人82,066人90,123人
ブラジル439万人13.3万人36,653人
ロシア108万人18,917人5,670人
ペルー73.8万人30,927人4,160人
メキシコ67.6万人71,678人4,771人
スペイン61.4万人30,243人12,183人
イギリス37.8万人41,684人3,103人
日本76,448人1,461人490人

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