コロナワクチンは2020年末までに開発される?

アメリカ食品医薬品局(FDA)のスティーブン・ハーン長官は、ドナルド・トランプ大統領が「今年中にコロナウイルスワクチンを準備する」と述べたことに対し、懐疑的な姿勢を示した。

ホワイトハウスコロナウイルス対策チームの委員を務めるハーン長官は、トランプ大統領が独立記念日の演説時に「ワクチン問題は年内に解決する」「年末までにワクチンを準備できる」と述べたことについて尋ねられた。

トランプ大統領はラシュモア山の麓で演説を行った際、「命を救う治療法、ワクチンは間もなく私たちの手元に届けられるだろう。研究開発に尽力した科学者、研究者たちに感謝する。アメリカの科学力は世界でも群を抜いており、これからも輝き続ける。恐らく年末までに素晴らしい答えが提示されるだろう」と述べた。

ハーン長官は記者団に対し、「ワクチンがいつ利用可能になるかは予測できない。それを開発すべく世界中の科学者たちが奮闘しているものの、年内に開発できるか否かは誰にも分からない」と答えた。

南部および西部でパンデミックが再発したにも関わず、トランプ大統領は独立記念日を祝うトランプ花火パーティを強行し、また、根拠のない発言を繰り返したことで批判を浴びている。

ジョンズ・ホプキンズ大学のまとめによると、7月5日時点のアメリカの累計感染者数は約293万人、132,000人以上の死亡が確認された。なお、最新の24時間当たり新規感染者数は43,003人だった。

6月、世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長は、コロナウイルスに効果を発揮するワクチンについて、「作れない可能性もあり得る」と警告した。

またテドロス事務局長は、「仮にワクチンを作れることが分かれば、1年以内に接種試験を開始できる可能性もある。また、研究予算や人員等の諸条件次第で、試験期間を短縮できるかもしれない。しかし、これらは世界中の優秀な科学者たちが導き出した仮定だということを忘れてはいけない」と述べた。

また別の専門家は、「少なくとも2021年半ばまでワクチンが開発されることはない。世界中の英知を集結させても無理だろう。その代わり、臨床試験を割愛するなどの無茶がまかり通れば分からない。しかし、私は大して効果のないレムデシビルのような薬を飲みたいとは思わない」とトランプ大統領の意見を真っ向から否定している。

7月5日、ハーン長官はABCニュースのインタビューに応じ、「コロナウイルスワクチンは前例のないスピードで研究開発が進んでいる。私たちは全国民にそれを提供する使命があり、また、提供前にワクチンの安全性と有効性を完璧かつ完全に把握しなければならない。利用の可否は、データと科学に基づいて決定する」と答えた。

残念ながら、ワクチンの開発状況および完成までのタイムラインは示されなかった。

7月4日、トランプ大統領はコロナウイルスを「99%無害」と述べている。この件についてCNNから質問されたハーン長官は、「コメントすることはない」と述べた。

トランプ大統領はHAPPY♡ANNIVERSARY演説の中で、「アメリカのPCR検査総数は間もなく4,000万件を超える。検査総数に対する死者数の割合(13.2万人/4,000万人)を見れば、コロナがほぼ無害だったことは明らかだ。我々は圧倒的勝利を収めるだろう」と力強く語っていた。

ハーン長官は独立記念日の演説について、「私は誰が正しいのか、そして誰が間違っているのかを知るつもりも調べるつもりもない。我々の使命は、国民を安全な方向に導くことだ」と述べた。

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トランプワクチンとインドワクチン

ワクチン開発期間はウイルスの種類によって異なる。ハーン長官や他の研究者たちが言う通り、コロナウイルスのワクチンがいつ開発されるかは誰にも分からない。

現在、世界中の優秀な科学者や研究者たちは、パンデミックに打ち勝つ”シルバーバレット”の開発に全力を注いでおり、約120のワクチン開発プログラムが進行している。オックスフォード大学とインペリアル・カレッジ・ロンドンが共同で行っている研究は、人体投与を継続中だ。

アメリカの保健当局は、2020年末もしくは2021年初頭までにコロナワクチンが開発されるだろう、という楽観的なタイムラインを信じている。しかし、ホワイトハウスコロナウイルス対策チームの最高顧問を務めるアンソニー・ファウチ医師は、「2020年初冬までに、ワクチンの安全性と有効性をチェックする臨床試験が行えるかもしれない。ただし、あくまで上手くいけばの話であり、絶対という保証はない」と述べた。

またファウチ医師は記者団に対し、「安全で効果的なワクチンを開発するためには、どんなに急いでも1年半~2年、それ以上かかると思った方がよい。2021年初冬から翌年の春頃までに安全性と有効性を確認できれば素晴らしいことだ」と付け加えた。

7月、インド医学評議会(ICMR)は、インド独立記念日(8月15日)までにコロナウイルスワクチンを開発し、販売を開始すると述べた。

これに対しインド科学アカデミーは、「実現不可能な世迷い事」を公的機関が発すべきでないと警告。「厳密な科学的プロセスと基準を無視し、性急な解決策を求めてはならない。安全性と有効性を保証できないドラッグを販売するなどあってはならないことだ」と述べた。

既に述べた通り、現在、全世界の英知が集結し、ありとあらゆる可能性を考慮しながらワクチン開発を進めている。しかし、世界最高の科学者や研究者をもってしても、コロナウイルスに打ち勝つワクチンが開発されるまでに1年半~2年以上かかると予想しているのだ。

ICMRが拡散した「コロナワクチン発売日」は、バルラム・バルガヴァ事務局長が国内の研究所(計12カ所)へ充てた書簡の流出により、ソーシャルメディアで共有された。

バルガヴァ事務局長の書簡には、「ワクチン承認の全プロセスを短縮し、独立記念日の8月15日から一般発売したい。急いで人体実験を終了させよ」と明記されていた。

インド科学アカデミーのパーサー・マジョムダー教授はBBCの取材に対し、「ICMRが発表した臨床試験期間1カ月は常軌を逸しており、生物医学研究と製薬業界の名を汚すことになるだろう」と警告した。

これに対しICMRは、8月15日を目指し研究を進めると明言。しかし、安全性や有効性の確認を妥協するつもりはなく、科学者としてすべきことを全うする、と述べた。

インドの研究者たちは、期間短縮ドラッグの発売に懐疑的な見方を示している。しかし、誤った情報を発信することで、国民に根拠のない安心感を与えてしまい、感染がさらに拡大する恐れもあると警告した。

ある研究者はBBCの取材に対し、「人体に害を及ぼさず、かつ効果のないワクチンを皆が摂取し一斉に外出すれば、大変な事態を間抜くだろう。さらに、人体実験を違法に短縮し、健康被害をおよぼす危険なワクチンを皆が服用すれば、目も当てられない」と述べた。

インド国内の累計感染者数は約70万人、これまでに19,693人の死亡が確認されている。モディ政権は2か月以上に及んだ厳格なロックダウンを6月1日から段階的に緩和中。結果、パンデミックは息を吹き返し、24時間当たりの新規感染者数は、現在右肩上がりで記録を更新し続けている。

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