EU国境開放は7月1日予定

EUは7月1日からの国境開放に向け、まもなく会談を開始する予定である。ただし、毎年多くの旅行者や観光客を送り出しているアメリカとの国境開放については、同国の感染状況を鑑み最終判断を下すものと思われる。

一部の欧州諸国は国境開放と観光客受け入れを熱望しているが、その他の国はコロナウイルスの感染拡大に警戒感を示している。

24日、アメリカのマイク・ポンペオ国務長官は欧州との国境問題に関し、「今後数週間で問題は解決する」と期待感を示した。

ジョンズ・ホプキンズ大学の調査によると、24日時点のアメリカの累計感染者数は239万人超、123,000人以上の死亡が確認された。1日当たりの新規感染者数は25,000人~30,000人前後で推移し、欧州諸国に比べはるかに高い水準を維持しているため、国境開放は現実的ではない、という意見が大勢を占めている。

EU加盟27か国は、非EU諸国が満たすべき国境開放条件に同意したうえで、セーフリストを作成する。本部ブリュッセルの報告によると、ブラジル、ロシア、その他感染率の高い国がセーフリストから除外される予定だという。

現在、国境開放条件(感染状況のチェック方法)の評価が行われており、信頼できるデータの抽出方法やチェック方法などを確立したうえで、近日中に指針が決定、それに基づき7月1日からの国境開放に踏み切るものと思われる。

パンデミックの発生に伴い、アメリカとEU間の往来は禁止されてきたが、ポンペオ国務長官は3か月以上に及んだ国境封鎖の開放を確信したうえで、「アメリカと欧州諸国を危険にさらすつもりはない。誰もがウイルスの拡散を恐れている」と述べた。

またポンペオ氏は、「世界規模の旅行を再開するために」対策を講じていると付け加えた(詳細は明らかにされず)。

EUの保健機関、欧州疾病予防管理センター(ECDC)が集約した最新の数字によると、ブラジル、ペルー、チリ、パナマ、サウジアラビアの感染率が特に高いという。

アメリカとロシアの10万人当たりの感染率は低い。しかし、それでも欧州諸国に比べると高い水準を維持しており、感染が落ち着いてきた、と言える状況にはない。

欧州委員会(EC)は国境開放検討を行う中で、「新規感染者数、傾向、PCR検査数、感染者の追跡」などに重点を絞り、EUの平均値と同等もしくは高い国のみをチェックするよう大使に指示している。

その報告によると、加盟国は2つの異なるリストを作成、評価していた。ひとつ目は10万人当たり感染者数が16人以下の国。ふたつ目は10万人当たり感染者数が20人以下の国だという。なお、リストは2週間ごとに更新される。ニューヨーク・タイムズ紙はアメリカの感染状況がここ数日悪化していることから、今後リストに追加される可能性が高い、と述べた。

また、EUへのアクセス経路も検討事項に含まれている。フランス政府は、相手国が同じ条件で入国を認めた場合にのみ国境を開放すべきと主張。スペイン政府は隣国モロッコとの国境を早急に再開したいと考えている。

今月初め、ECは西バルカンの未加盟6か国との国境再開も7月1日を目指すと強調した。この方針に対しクロアチア政府は、感染が拡大しつつあるボスニア、セルビア、コソボ、北マケドニアからの旅行者に対し、14日間の検疫(自己隔離)を要請すると発表した。

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国境開放に向けて

3月14日、トランプ大統領はアメリカとEU間の国境を一方的に封鎖し、各国から非難を浴びた。

EUは加盟各国およびセーフリストに選ばれた国との国境封鎖を7月1日から開放する予定である。これにより、観光客や旅行者の往来が活発になり、街や個人は待望の収益を得ることができるだろう。

しかし、EU指導者たちはコロナウイルス感染拡大のリスクも恐れている。経済を後押ししたい国でさえ、入国者がそれを持ち込めば、自国に甚大な影響を与えると承知している。

加盟7か国の意見は分かれている。

セーフリストだけで国を選ぶと、同盟国との政治的摩擦を引き起こしかねず、また、既存の緊張を悪化させる可能性もある。現在、ブリュッセル、クレムリン、ホワイトハウスの関係は冷え込んでおり、加盟各国は慎重な対応が必要と懸念を表明した。

フランス政府の求める相互関係の扱いも難しい。「私はあなたの入国を許可する。だからあなたも私の入国を許可しなさい」という圧力を加える国が現れれば、ウイルスより外交が重視されてしまうかもしれない。

EUは2つのグループに分かれている。2020年夏の観光シーズンに向け国境開放を望むグループと、コロナウイルスを恐れるグループは、慎重に議論を重ねてきた。

当初は6月15日から国境を開放する予定であったが、いくつかの国が第二波を避けたいと意見提議し、日程の後ろ倒しが決まった。

欧州諸国で最初にロックダウンを解除したデンマークは、他国よりも慎重に国境開放検討を開始した。ウイルスを抑えることには成功したが、入国時の厳しいルールは当面維持するものと思われる。

同国はノルウェー、アイスランド、ドイツからの観光客を許可したが、感染の増加が伝えられるスウェーデンからの入国は許可しなかった。

ギリシャ政府は、6月15日からの観光シーズン開幕を狙い、欧州諸国(一部を除く)との国境を開放した。ただし、スペイン、スウェーデン、オランダなどから訪問する際は、入国時のPCR検査が必須である。

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